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三百四十話 ジゼリィ=アゼリィ本店増築 12 魅せるステージの高級お肉と強い癖っ毛様


「こちらが師匠のアイデアを元に作り上げた調理ステージになります」


 ジゼリィ=アゼリィ本店増築計画。


 ついにメインとなる場所のお披露目。作ったのはよく回転寿司とかであるスタイルで、調理場がお客さんのいる食堂部分まで一部せり出している。


 お客さんの目の前で調理し、出来たてを提供する。見えない奥にある調理場から完成した料理が出て来るより、目の前で作り上げられていくのを見るのはライブ感があっていいと思うんだ。さらにその料理人の手際の良さも見てもらいパフォーマンスとする。


 全てを見せるわけではなく、今まで通り奥の調理場での作業もあるが、一部メニューはお客さんの目の前で最後の仕上げをし、魅せることにしようと考えている。細かいメニューは今後調整する。


 火を使う調理の部分には耐火ガラスで囲い、安全も確保しつつ迫力を伝える。


 使う食材、出来上がる料理の味、料理人の腕、それらに自信が無ければ成り立たないスタイルだが、自慢じゃないが、そこには絶対の自信があるんだ。



「お客さんの動線を邪魔しないようにしつつ、料理人の動きを直に感じられるような位置を確保しました。師匠の言う、魅せる料理、とてもいいですわね。ぜひうちのホテルでも採用していきたいと思いますわ」


 アンリーナが出来上がった調理ステージを説明してくれる。ほぼ中央にあるステージは、食堂のどこにいても見える位置。飲み物一杯を注文し席に座り、料理人の作業をただ見ているだけでも楽しめると思う。



「ああ、緊張するなぁ……。よしじゃあ始めるよ。あ、また寝癖が……」


 イケメンボイス兄さんがそのせり出した調理ステージに登壇。包丁片手に挑もうとするが、後頭部のぴょんとはねた寝癖がどうやっても直らないそうだ。


 兄さん天パの癖っ毛っぽいしなぁ。


 増築のメイン目的だった食堂部分の面積は、今までの二倍くらいの広さになっている。おかげで席を増やしつつ、こうやって調理ステージを作ることが出来た。


 席数が増えたぶん、ウエイトレスの仕事が増えるので、アルバイトさんを現在募集中だ。腕に自信のある料理人もぜひとも欲しいので、我こそはという人は奮って応募して欲しい。



「兄さん、今日は従業員向けプレなんで気にしないで下さい」


 なんだか緊張気味のイケメンボイス兄さんに声をかける。


「あ、ああ。大丈夫、いつも通りやるよ。でもその……後ろの髪が……」


 俺の声に兄さんがいつもの落ち着いた笑顔を向けてくるが、どうにも人前で料理をするので、見た目が気になるらしい。


 従業員全員が食堂の席につき、さらにアンリーナ含む工事関係者にも座ってもらう。プレオープン的なやつで、全員に食事を振る舞う予定。



「それでは本日はステーキをどうぞ。野菜はスティック状にカットしてあるので、甘辛いソースか柑橘ソースにからめてお楽しみ下さい」


 イケボ兄さん率いるジゼリィ=アゼリィご自慢の料理人がズラリと並び、それぞれの担当調理開始。


 右のほうではリズミカルに野菜がカッティングされていき、左のほうでは手際よくソースを作っていく。


「はい、メインのお肉行きますよ。今回アンリーナさんがいいお肉を差し入れしてくれたので、存分にお楽しみ下さい」


 ステージ中央のイケボ兄さんがニッコリ笑い、素晴らしい霜降り肉を取り出した。まじか! あれどう見ても高級なやつじゃねーか。



「アンリーナ、すまんな。いつの間に差し入れなんて……」


 俺が向かいに座っていたアンリーナにお礼を言う。


「いえいえ、いいんですよ師匠。プレで私もいただくわけですし、どうせなら良いものをと、勝手に仕入れて来ましたわ」


 アンリーナが静かに首を振り、俺を制する。しかし、あれどう見ても霜降りの高級ステーキ肉だぞ。アンリーナクラスが仕入れるやつだろ……いったいいくらするんだろうか……考えないようにしよう。



 イケボ兄さんが分厚いお肉を熱い鉄板に乗せると、一気にお店中にお肉といい油の香りが充満していく。うっは、この香りだけでご飯三杯いけるぞ。


 俺がヨダレを垂らしながら焼きあがっていくお肉を見ていると、まわりの従業員や工事関係者さんも俺と同じような顔になっている。


 うん、これだな。このライブ感。


「なるほどね~これが社長が計算していたやつか~。確かにこうやって見える場所で派手な調理されると~それを見ているだけで食欲がぐいぐい刺激されちゃうね~」


 右隣りに座っていた水着魔女ラビコも、周囲の様子を見て納得といった感じで頷く。


「ふふ、たしかにこれは身を乗り出して見てしまいますね。なにかイベントの見世物を見ているような気分になってしまいます」


 左隣りのロゼリィも喉を鳴らし肉が焼きあがる様子を見ている。



 問題はここまで派手に見せられて、いざ食べてみたら普通か美味しくなかったでは気分が上がったぶん、お店のイメージがマイナスに振ってしまうが、そこは大丈夫。うちの出す料理は普通なんてありえない。


 イケメンボイス兄さんの出す料理は美味しいか、超絶美味しいの二択のみ。


「お待たせしました。それでは出来上がった物からドンドン出していきますので、熱々をお楽しみ下さい」


 兄さんが華麗な手さばきでお皿に盛り、高級霜降りステーキセットが完成。正社員五人娘含むウエイトレスがお皿を運び出す。セレサに指示し、まずは頑張ってくれた工事関係者さんに味わってもらう。


「いただきます!」

「うわぁ……肉が柔らかい! こんなお肉がこの世にあるのか!」

「このお店すごいな、今度個人的に来てみるよ。わはは」


 みんな美味しそうに出来たてのお肉を頬張っている。うん、その姿を見ているだけでもヨダレが……。


 お肉第二陣はオーナーであるローエンさん、ジゼリィさん含むお店スタッフのところへ。


「ああ、美味しい……これはいいお肉だ。さっきまで見ていたお肉だと思うと余計に美味しく思えるよ」


「そうだね、これは過程を見た力も合わさって本当に美味しく感じるね。いや元から間違いなく美味しいんだけどさ」


 ローエンさん、ジゼリィさんがニッコニコでお肉を食べる。うん、これなら大丈夫そうだぞ。スタッフさんも初めて食べる高級肉に我を忘れてがっついている。



「お待たせいたしました隊長。正直、運んでいるだけでお腹がなっちゃいますね、あはは」


 セレサが苦笑いしながら最後の組である俺達のところにお肉を持ってきてくれた。


「ありがとう、セレサ。ウエイトレスのみんなも座ってくれ、みんなで食べよう。アンリーナ、差し入れありがとうな!」


 ウエイトレスのみんなにも座ってもらい、アンリーナに頭を下げ、美味しそうなお肉をいただく。


「う……うまい……。なんだこのお肉は……舌でほぐせるレベルの柔らかさだぞ」


 俺がナイフとフォークで切り分け一口でいただく。口に入れただけで美味い。分かるだろうか、この感覚。噛むのがもったいないぐらいのお肉だぞ、これ。


「うっま~うっわ~すっごいね~これ。私も初めて食べるクラスかな~。アンリーナ~奮発したろ~これ~あっはは~」


 右隣に座っている水着魔女、ラビコが食べた瞬間ゲラゲラ笑う。おお、世界を旅し、ペルセフォスでは現国王と同等の権力を持つラビコを持ってしてもワンランク上、と判断するのか。このお肉。


「お、お、お、美味しい……なんでしょうこれ! こんなお肉、初めて食べました!」


 左のロゼリィも驚きの声を上げる。うん、それぐらい美味いんだ。これ、いくらするんだろう……数も相当のものだし。



「よかったですわ。ここまで喜んでいただけただけで、このアンリーナは満足でございます。お肉は確かに私がご提供いたしましたが、それは材料を持ち込んだだけのこと。本当にすごいのはあちらにいます、料理人ボーニング=ハーブシェフでございます。皆様、よろしければシェフに惜しみない賛辞をよろしくお願いいたします」


 アンリーナが立ち上がりイケボ兄さんに向かって拍手をすると、呼応するように工事関係者、うちのスタッフ達も拍手をする。俺も神の料理人に拍手を贈る。



「あ、あはは……参ったなぁ。僕こういうの慣れていないんだよね……いや、どうも、どうもです」


 賛辞を向けられたイケボ兄さんはどうしていいか分からず、慌てた感じで頭を下げる。


 そして下げた頭の後頭部にはピョンと跳ねた、決して水や整髪料なんかには負けないぞ、という強い意志をヒシヒシと感じる寝癖が見えた。




 後日談だが、やはりかなり天パ癖っ毛の寝癖を気にしていたらしく、イケボ兄さんはそれ以降頭にタオルを巻いて作業するようになりましたとさ。






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