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7 異世界転生したら俺の家が出来たんだが

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三百三十話 ジゼリィ=アゼリィ本店増築 2 覇者達の揺れる想いと異世界安全マップ様

 

 ついに本店であるジゼリィ=アゼリィの増築工事が始まった。


 作業の音が嫌でお客さんは減るかと思っていたけど、工事が始まったが何だ? と興味を持ってお店に来てくれる人がかなりいて、お店は結構な盛況ぶり。


 この増築工事が逆に注目を浴びて、いい宣伝になっているってことか。



「がはは、なんだオレンジのあんちゃん、ついにこの宿に腰を据えるのか。こりゃーロゼリィちゃんと結婚だな!」


「ってこたー、英雄様はずっとここにいるってことか。じゃあこの街は将来性ありそうだなぁ、俺もソルートンに家でも作っちまうか! ははは」


 いつものモヒカンヘアーに肩にトゲのついた鎧、鍛え上げられたムキムキの筋肉さん達こと、世紀末覇者軍団が俺の肩をバンバン叩きながら笑う。


 いてーって。お前等見た目通り、結構腕力あるのな……。




「ったくアイツ等、好き勝手言いやがって……」


 覇者達がいつものお店の奥の方に座り、工事期間限定お得セットを注文した。


 限定セットは本当にお得で、焼き立てパンに野菜スープに鶏肉の甘辛炒めにサラダ、さらに食後に紅茶と小さなアップルパイが付くぞ。これで五G、俺感覚だと五百円だ。工事期間中の開店から午後三時までのメニューなので、紳士諸君もお早めにご来店を。



「まぁまぁ社長~。彼等の気持ちも理解してあげないと~」


 俺もいつもの席に座り紅茶ポットを注文していると、水着にロングコートスタイルの魔女、ラビコがニヤニヤ笑いながら右隣りに座る。アイツ等の気持ちってなんだよ。恋する世紀末かよ。



「今のご時世、どうしてもモンスターだったり~蒸気モンスターの被害があるからさ~民衆の心理として強い人がいるところに行きたいのさ~」


 ラビコが俺の頬をツンツンつつきながら笑う。


 そうか、ここ異世界だったな……。ここに来て日が短い俺ですら、結構被害にあっているしなぁ。ましてやずっとここに住んでいる皆は、もっとそういう目にあっているってことか……。


「ソルートンはあの女ったらし勇者の出身地で、かなりの大きさの港街。大きな冒険者センターなんかもあって、そこそこの知名度があるから絶えず人が集まるのさ~。当然冒険者も多く集まるし~そうすると、常に戦力が集まる街~って考えられるのさ~」


 なるほど……ここに住む人にとって、この街を守ってくれる戦力が常にあるってのは安心材料になるのか。俺がいれば、ラビコが一緒にいるだろうから安心ってことか?



「いつも何かに怯えながら暮らすのは、精神が持たないしね~。少しでも安心、安全な場所に住みたいってのは、当然の考えかな~」


「そうか……人が集まればお金も多く集まるから仕事もある、と。さらに守ってくれる冒険者も多くいる、か。そりゃー住むなら安全な場所がいいもんな」


 人が集まるところには、さらに人が集まる。ということは逆に人が少ないところは、さらに住む人が減り、経済も安全も崩壊する、か。


 そういやケルシィに行った時、ラビコが若者の多くがペルセフォスに流れている、って言っていたな。確かにケルシィはちょっと暗い雰囲気で、シュレドが住んでいた北側の地域なんて駅前なのに人も建物もまばらだったしな。


 シュレドがペルセフォス王都に住めると分かったときのあの喜びよう。あれがこの世界に住む、戦う力のない民衆の心理なんだろう。すごくよく分かる。俺も戦う力ないし。


 まぁ俺には最強の愛犬ベスがいるけど。



「この戦力が多くあるペルセフォスだって、魔晶列車の駅がないさらに内陸の地方は、モンスターや蒸気モンスターの被害が結構あるのさ~。ペルセフォスの騎士が各地に派遣されてはいるけど、さすがに全域は守れないのが現状だね~」


 ラビコは元勇者パーティーで、世界を回ったらしいしな。世界中の状況をその目で見たのだろう。



「各国が抱えている問題でもあるけど~地方の人口が減り、王都に人が集まるんだよね~。そりゃー国で一番戦力揃っている場所だしね~住みたくもなるさ~あっはは~」


 なんだか難しい話になってきたな。覇者達の揺れる恋心、じゃなかったのか。……そうじゃなくてよかったと、すごい安心するけど。



「内陸の方か。いまのところ行く用事はないが、俺が目指しているこの世界の全てを見るを達成するには、いつかは行かなきゃならない、か」


 俺はこのペルセフォスという国ですら全てを把握していない。魔晶列車の駅がない、さらなる内陸には行ったことがないしな。でも俺は見たいんだ、この異世界の全てを。


 だってワクワクするだろ。全く知らない世界で、魔法とかあるんだぜ? どうせなら全部見たいんだ。



「あっはは~やっぱ面白いな~社長は~。普通の人はこの街が~とか~広くてもこの国が~って発想になるはずなのに~いきなりこの世界が~だもんな~。自分の行動する狭い範囲を守ることが精一杯の人が多いのに~自分の周囲を理解した上で、さらにその目線は広い広い世界へと向く、か~」


 俺がペルセフォスの内陸ってどういうところがあるか聞こうと思ったら、ラビコがトロンとした顔で体を絡めてきた。な、なんだ……おいヤメロ、結構混雑した店内なんだぞ。



「私さ~マジで社長が好きなんだよね~。その柔軟な発想にびっくりするぐらいの行動力、あと会話のセンスも好きだな~。変に誰かに媚びたりしないし、しっかり自分の信念持って行動しているって感じ~。間違っていたって分かったらすぐに認めて謝って、改善しようとするところとか~男は多く見てきたけど、こんなに素直で面白い男は初めて見たよ~あっはは~」


 ぅんご……火照ったラビコがすんげー絡んでくるんだが……お酒でも入ってんのかよ……お胸様が腕に当たっているから、抵抗はしないけど。



 あ、でも向こうから燃え盛る黒いオーラが近付いて……。






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