三十二話 るるるるるぶ異世界様
翌日、俺は颯爽とオレンジのマントを羽織る。
「あ~あ……面白かったのになぁ~」
「黙れ。あんなもん履いて歩けるか」
聞くと、ルナリアウェポンとやらはこのマントだけで、他の物はネタで作られた装備だそうな。
「で、ラビコ。このマントはなんなんだ?」
「あ~それはアランアルカルンっていう、とおっても貴重なやつだよ~」
さっぱり分からん。
「とりあえずマントだけ借りておくか、サンキューなラビコ」
「いえいえ~借金追加おめでと~ございま~す」
ラビコに軽く手を振って宿屋を出る。
「おーいたいた。おーいリーガル」
「…………当たり前のように見つけないで頂きたい。すでに姿隠し中なんですが」
ふぅん? 俺には普通に見えるが。
「帰るのか」
馬から下りたリーガルが俺に近づく。
「はい、用事も済みましたしね。なんとも自分の未熟を思い知らされた任務となりました……」
なぜかリーガルが落ち込んでいる。
「またここのご飯食べに来いよ。新メニューどんどん増えていくから」
「ああ、そうですね。昨日のシチューは美味しかった……洋ナシタルト……でしたっけ、あれもよかったなぁ。王都では食べることの出来ない味です。近くに寄ったら必ず来ます。それでは!」
そう言い、リーガルは白馬に跨り国に帰って行った。
王都ペルセフォスか。そういや俺、この街から出たことないな。異世界に来たからには、色んなところに行ってみたいぜ。
エルフとかいるんだろ? 出会ってみてーなー。
「ロゼリィは他の国とか街とか行ったことあるのか?」
「え? ありますけど、お店が忙しくてあまりチャンスがないですねー」
受付に座っていたロゼリィに聞いてみた。まぁそうか、宿屋の仕事あるしな。
「そういや食堂に世界地図あったな」
アイスレモンティーをカウンターで注文、世界地図の貼ってある壁の前に立ちじっくり眺める。
「さすがに見たこと無い地形ばっかだ。この街は……あった、結構端っこなんだな」
「あれ社長、旅行~? 旅行なの~? じゃあこのラビコ様が~護衛を格安で引き受けてあげましょう~あっはは~」
ラビコがニヤニヤ近づいてくる。護衛?
「あ……もしかして田舎者の社長は旅行初めて~? 街の外は怖~いモンスターがたんまりいるから~冒険者を護衛に雇わないと~大変なことに~」
あ、そうだった。ここ異世界だった……気軽に行けるもんじゃないのか。
しかし一度は行ってみたいぞ。
ちと旅行計画を立ててみよう。
予算は……無いから、超危険な旅にはなりそうだが……。




