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6 異世界転生したらカフェを作ることになったんだが

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三百十三話 それは愛の成せる業様


「話の腰を折ってしまい、失礼いたしました。なるほど、今度はソルートンのジゼリィ=アゼリィ本店の強化ですか。ふむふむ……」



 王都のカフェ三階に集まってもらい、商売人アンリーナにソルートンのジゼリィ=アゼリィ本店の増築計画を相談してみた。


 挨拶がてら曲解されて結婚だの私達の新居だのと、変な方向に展開してびびったが、今は俺の言葉が聞こえているようだ。


 ああ、本当に言葉が通じる異世界でよかった。



「あれれ~? もっと面白い方向に突き進もうよ~。さっきまではいい流れだったのに~」


 アンリーナとロゼリィが自ら暴走を抑え、まともな話に進んだことにラビコが超不満そう。頼むから話を進めさせてくれ。



「ふふ、今度はソルートンの増築ですか。なんだかすごいことになってきています。ジゼリィ=アゼリィにあなたという人が加わっただけで、ここまで変わるものなのですね。これが人の繋がりの力。これが、あなたの力」


 ロゼリィが左の席で優しく微笑んでくる。うーわ、すっげぇ美人……。


 ま、まぁ、俺一人では何も出来なかったしな。みんなの協力の力がでかいってことだ。




「ふむふむ……いいですわね……。ソルートンのジゼリィ=アゼリィでの我がローズ=ハイドランジェ商品の売上は、中心街にある専門店舗より高い収益を上げています。やはり人の目に触れる機会が多いのが売上に直結しているようです」


 アンリーナが顎に手を当て思案している。確かにすっげぇ売れているからな、宿に置いてあるローズ=ハイドランジェ商品。

 温泉施設に備え付けのシャンプーとボディソープを置いているのだが、お風呂上がりにさっき使ったやつが欲しいと買っていくお客さんがかなり多いんだ。


 実際使って、良さを知って、納得して買っていく。実に素晴らしい購入の流れじゃないか。



「お金は俺がレースで得たものを充てる。オーナーであるローエンさんも、ジゼリィ=アゼリィから投資してくれると言ってくれている。でも俺には大掛かりな増築のノウハウがない」


 俺は椅子から立ち上がり、アンリーナに向けて頭を下げる。


「やるからにはいい物を作りたいんだ。アンリーナ、忙しいのは分かっている、分かっているが、それでも……君に頼りたい。お願いだアンリーナ、俺の為に時間を作ってくれないか。……君の時間を俺にくれ、アンリーナ!」


「フ、フゥオオオオ……! フヌアオオオオ!!」


 俺は精一杯の眼力を込め、不思議な奇声を上げるアンリーナを見つめる。右側でラビコが「あ~あ、始まった~」と盛大に溜息をついているが、実際アンリーナに頼るしかねーんだよ。


 このカフェの完成度を見ろ。一切手抜きのない百年クラスで持ちそうな出来の良さ。業者任せにせず、アンリーナ直々に指揮を執ったからこそ出来たクオリティ。これがソルートンにも欲しいんだ。だが俺にはそういう知識がない。


「頼む、アンリーナ! 俺の足りない部分を埋めてくれ!」


「フオオオオオオ! ヌフ……それはあれですか師匠、男女の体の構造も含むあれで、心の隙間を埋めることが出来るのは私だけとかそういうことですわよね!? キマシタワー! そうなのです師匠! お互いの足りないものを補い合うのが夫婦というものなのですわ! 二人は手を取り合い、お互いを求める……これぞ、愛!」


 アンリーナが天井に向かって吼え始めた。

 

「あ~あ……社長さ~言ってておかしいとか思わない~? それって求婚のセリフにも当てはまるんだけど~?」


 溜息ついて、やれやれ顔のラビコ。なんだよ、何がおかしいんだよ。


 アンリーナは忙しい身だ。時間を作るのはとても大変だと思う。休みだってあまり取れていないのに、宿増築の為、俺の為に時間を空けてもらうんだ。俺に時間をくれ、で表現は合っているだろう。


 そして俺には増築の知識がない、だから足りないその知識を補ってくれ。ようするに俺の足りない部分を埋めてくれ、がベストチョイスだろう。



 左隣りのロゼリィもなんともいえない顔をしているが、その困り顔もまた美しい。


 ロゼリィ、これは君の為でもある。そうだろう、君はいつかあの宿を継ぐことになるんだ。その為の投資は早いほうがいい。



「承知いたしましたわ、師匠! このアンリーナ=ハイドランジェ、愛する夫の為ならば、溜まっている仕事の十や三十、あっという間に片付けてソルートンに駆けつけましょう! 全ては愛……そう、愛の成せる業……! こうしてはいられません、少しでも師匠の愛に応えるためにすぐさま行動に移さねば……!」


 夫? 俺まだ未婚だぞ、十六歳だし。


「私は行かねばなりません。ここでお別れは寂しいですが、すぐにソルートンでお会い出来ます。準備が出来次第取り掛かりますので、先にソルートンに帰っていてください。それでは皆様、アンリーナ=ハイドランジェはこれにて失礼いたします!」


 アンリーナが胸ポケットからスケジュール帳を出し、ガリガリと何やら書き込み、ダッシュでお店を出ていってしまった。


 あれ、詳しい話なんにもしていないんだが。


 

「あ~あ~……社長って本気でああいうこと言うからな~。言葉の選択、間違っているんだけど~それを真っ直ぐ、心に来る感じで言ってくるからタチが悪いな~」



 ラビコさんよ、俺、何か悪いこと言ったか? 実に誠実にお願いしたつもりなんだが。


「ま~、アンリーナとしても、ソルートンでのローズ=ハイドランジェ商品売上アップのテコ入れが欲しかった~ってとこかね~。宿増築に合わせて~売り場面積増やしたいんじゃないかな~」


 なるほど、それは全然構わないぞ。そうか、アンリーナ側ともタイミングが合致したってことか。



 よし、王都でのカフェは成功した。お次はソルートンの本店強化といきますか。






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