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6 異世界転生したらカフェを作ることになったんだが

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三百一話 ジゼリィ=アゼリィ王都進出計画 17 厨房とシュレドの料理様


「それではシュレドさん、こちらがお店の施設資料、厨房の設備マニュアル、従業員のシフト表、食材の注文表、業務報告書、他にも……」



 出来上がったお店は三階建の豪華なものだった。


 とりあえずアンリーナに口頭でお店の説明を受け、スタッフさんから自己紹介をしてもらう。みんな礼儀正しく、ハキハキと喋る人ばかりで驚いたぞ。


 アンリーナが知り合いのツテで集めた人員なんだとさ。そりゃーレベル高いわけだ。


 俺、ここのアルバイトに応募しても絶対受からないだろうな……。



 調理スタッフと接客スタッフに別れ、軽いミーティング開始。昼ご飯を調理スタッフで作ってもらって、全員で食べるプレオープン的なことをやろうかと。



 調理側にアンリーナが付き、シュレドに細かい資料渡して説明しているが、シュレドは目を丸くして分厚い資料片手に棒立ち。

 まぁ……シュレドは料理専門だからなぁ。アンリーナがナルアージュさんを採用したのはこういうことか。



 接客側にはナルアージュさんが付き、軽い発声練習後、広い店内のお掃除開始。こちらはスムーズ。



「なんか予想以上に規模が大きくてびびったぜ」


 お昼まで邪魔にならないように、俺達ソルートン組はカウンター前のテーブルに陣取り雑談。しっかし座り心地のいい椅子だな。


「そうだね~、予算がかなり集まったみたいだし~。私もお金出したけど~まさかあの変態姫も出資していたとはね~ちょ~っと驚いたよ~あっはは~」


 右に座ったラビコがアプティに作ってもらった紅茶片手にお店を見渡す。本当に豪華だぞ、ここ。


 窓から外が見えるが、通りかかる人が結構興味津々でお店を見ている。外から見ても豪華なのが分かるぐらいだしな。人の注目もかなり集めているようだ。


「騎士の間でもずーっと話題でしたよ。なんせお城の目の前に出来ますから、注目度がすごいです。みんな出来たら絶対来るって言っていました。私はみんなより先にお店に入れて、すっごく嬉しいです! こうやって先生とのんびりお茶を飲む休日……最高ですねー」


 ロゼリィを押しのけ、俺の左側に陣取ったハイラがお城での話題をしてくれた。なるほど、貴重な情報だ。騎士の人達が来てくれれば、それだけでかなりの人数になるからな。


 押しのけられたロゼリィはハイラの左に渋々座り、ナンバリング入りの限定シャンプーとボディソープを大事そうに抱えている。



 足元の愛犬ベスの頭を撫でていると、接客スタッフさんが掃除しつつラビコとハイラをチラチラ見ているのに気がついた。ナルアージュさんもそういう反応だったし、やはり王都では名と顔の知れたこの二人の人気はすごいんだな。


 やはりやるか、あの作戦を。



 軽く店内を見て回り、その豪華さと広さに圧倒されていたらもうお昼近くになっていた。


 チラと三階の王族専用のスペースを見たが、さすがの金のかかりよう。ペルセフォス王国の国旗に、飾りで騎士の甲冑に剣、槍、杖が壁にかけられていて、さらにお高そうな絵画、そして窓際にピンクと水色のクマさんが多量に並べられていた。


「なんで急にファンシーなんだ」


 さすがのサーズ姫様も女性だしな。かわいいぬいぐるみが好きなんだろうか。




 アンリーナにお昼ご飯が出来ましたと呼ばれ、一階のカウンター裏の厨房に。


「うわっ……すげぇ!」


 入ってすぐに目に入ってきたのは、壁際にずらりと並んだ巨大な金属の物体。これが業務用の高級魔晶冷蔵庫か。とんでもない大きさだぞ、これ。いくらするんだろう……。


「だ、旦那……ここすげぇっすわ! これだけ設備がよくて使える食材も豊富、しかも調理スタッフが全員優秀ときたもんだ! 俺より包丁さばき上手いやつがゴロゴロいやがるんすわ、王都っておっそろしいぜ!」


 俺に気付いたシュレドが興奮した顔で走ってきて厨房の説明をしてくれた。火は全部魔晶石コンロが用意され、鍋もこれ俺一人入れるじゃん、みたいな寸胴鍋が当たり前に並んでいる。

 

 ホールも豪華だったが、厨房も投入された資金が半端ないぞ、これ。


 調理スタッフさんは全てアンリーナが料理経験者を集めてくれ、中にはどこぞのレストランで料理長を努めたベテランさんもいるとか。


「いいかシュレド。油断したら簡単に足元すくわれんぞ。彼等はシュレドの最強の味方でもあり、最大のライバルにもなるスタッフ達だ。彼等から見られ己を律し、彼等を見て貪欲に学べ。お前はまだ強い武器と心強い仲間を手に入れただけにすぎない。ここがスタート地点、ここからお前の料理の冒険が始まるってところだ」


 俺はシュレドの筋肉で盛られた肩を掴み、大げさに言う。彼はこういう言い方が心にくるっぽいし。


「たしかにシュレドの料理の腕はすごい。俺もそれを認めたからこそ、この王都でのお店を任せるんだ。だがなシュレド、今までのは準備にすぎない。ソルートンで兄さんから学び、レベル0からやっとレベル1になったんだと思え。シュレドは料理人レベル1、分かるな、お前はここからレベル99を目指すんだ。迷っている暇なんて無いし、下を見ている暇もない。ひたすら上を見上げ、王都の頂きを目指せ! その時こそお前は世界最強の料理人になっている!」


「うおおおおお! そうか、俺はまだレベル1なのか! じゃあこれからいくらでも伸びるんじゃねーか! 俺はやるぜ、いつか旦那にお前はレベル99だと言ってもらうんだぜ!」


 俺の言葉にシュレドが応え、やる気を出してくれた。うん、シュレドはゲーム感覚で言葉をかけると響くっぽい。



「な、なんかすごいんですねオーナー代理。アンリーナ様もすごいですけど、やはりあの若さで王都にお店を出せるには理由があるんですね」


「私の愛する師匠はああいう方です。ここぞ、というときの頭の回転の速さと発想の豊かさは、素晴らしく商売人に向いていますわ。実に私に相応しいお方です」


 なんかこそこそナルアージュさんとアンリーナが話しているが、お昼出来ているっぽいし、みんなで食べようぜ。


 


 一階の席に座り、接客スタッフさんが丁寧に料理を運んできてくれた。まずはお水。


「おお、これこれ。やっぱ見た目と香りがいいよな」


 たかがお水、されどお水。お客さんに最初に出される大事なメニューである。ここを疎かにしちゃいかんと、花の国フルフローラで知ったアレをこのカフェでもすることにしたんだ。


 スイートスターという綺麗なお花。これをお水とともにコップに入れてある。


 水に浮かんだ状態になっているので最初は香りを楽しみ、これを少し沈めると水に花の香りとほんのり甘い風味が加わる。

 

 ローズアリアのグリン農園さんから仕入れた物。今度またお礼を言いにいきたいなぁ。


「うわ、かわいいっ」

「香りがすごーい。これだけでカフェな気分になります」

「見た目のかわいさとインパクト。そしてこのいい香り、高級な感じがします」


 料理を終えたスタッフさんと、運び終えた接客スタッフさんも座り、感想を言ってくれた。花の国フルフローラでは普通だが、ペルセフォス王都の人には新鮮で珍しく思ってくれるっぽいな。


 うむ、かなりの好感触。


 メニューは野菜と鶏肉のスープに、白身魚の切り身を蒸して豆を荒くすりつぶしたソースをかけた物。


「さすが、スープが得意なシュレドだ。鶏のダシがしっかり出ているし、たくさん入った野菜に、この食感がある根菜が入っていて食べごたえがある。魚もこの豆のソースがいいな。アクセント程度に辛味もあって、タンパクながらも、思わず口に運んでしまう」


 うむ、よくソルートンで食べている味だ。うまいぞ。これが王都で食べられるようになるのか、ついに。



「うわああ、なんですかこれ……すごい……これがいつも先生達が食べていた物なんですか! どうりで以前、大型商業施設でご飯食べても微妙な感想だったのは、これと比べていたからなんですか。なるほど、とっても美味しいです!」


 ハイラが鼻息荒く、出された料理をモリモリ食べている。落ち着け、料理は逃げないぞ。



 初めてシュレドの料理を食べる王都スタッフのみんなの反応は、驚きと笑顔。


「行けそうだな、シュレド」


 俺は料理人シュレドに歩み寄り、固く握手をする。


「うはは! みんなの反応見て自信がついたぜ! 俺はやりますよ、絶対旦那の期待に応えてみせますぜ!」


 料理を出した段階ではちょっと不安そうにしていたシュレドだったが、みんなが笑顔で料理を食べ、美味しいと言ってくれたことで、いつも勝ち気な顔に戻った。



 シュレドは大丈夫。あとはメニューを詰めていって、この厨房とスタッフに慣れてくれれば行けそうだ。



 さて、これからは俺が動く番か。いっちょ派手なプロモーションでも考えますかね。






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