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三話 メロン様

 

 月が綺麗だ。



 夜、借りた部屋の窓から見える月を眺める。


「ここがどこかは知らんが、月はあるんだな」


 ホームシックとかではないが、似たような環境があると少し安心する。


「ベスッ」


「あ、すまんベス。起こしちゃったか。なんでもないよ、明日もがんばろうな」


「ベスッ」


 俺の独り言に反応したベスが犬用簡易ベッドから出てきて、俺の足に顔を摺り寄せてきた。そのベスの頭を撫でながら、今自分が知らない異世界に来ているのに慌てずこんなに冷静でいられるのはベスが側にいるからなのかのなぁ、と思う。ありがとな、ベス。



 翌朝、宿屋を出ようとしたら受付のお姉さんがパンを数個包んだ綺麗な布袋をくれた。


「あれ、これ貰っていいんですか? お金そんなに持ってないですよ……俺等」


「は、はい! 気にしないでください! 私個人のサービスです! で、出来たらまた泊まってください!」


 こりゃあ、ありがたい。


 どんな世界でも人と人との繋がりってのは大事だなぁ。


「はは、そのつもりです。俺、ここの土地勘無いし日銭稼いだらまたここに戻ってこようかと思ってました」


 嬉しそうな顔で手を振って見送ってくれた受付のお姉さん。なんだろう、常客取り込もうとしてるのかな。


 

 午前中の賑わう商店街を歩く。



 お店に売っている物見ると、やはりここは異世界なんだな、と思う。見たこと無い物ばっかだぜ。


 あと、普通に武器とか売ってんのな。まぁ、ここではモンスターから身を守る為に必要な物だしな。


「犬用の装備ってどこ行きゃ売ってんだ……」


 一通り歩いてみたが、人間用の武器はそこらで売っているが犬用のは無い。つうか本当に白銀犬士ってどういう職なの。


 とりあえず今晩の宿代に五十Gは必要と。となると使えるお金は百G。


「うーん」


 こういうとき不便だぜ、ネット検索とか出来ないからなぁ。



「おや、あれは宿屋のお姉さんじゃ」


 先ほど笑顔で見送ってくれた宿屋の受付のお姉さんが、大きな荷物を持ってフラフラ歩いている。


「……あれは絶対転びそう……」


「……あ!」


 ほれ見たことか。お姉さんは何かにつまずいたらしく、小さく声を漏らしてよろめいた。


「おっと……! うごっ……重っ!」


 倒れかけたお姉さんを左手で支え、右手で荷物を持とうとしたらアホみたいに重い。


「な……! 何入ってんですか、これ!」


「いやっ! ……あ……あなたは……」


 俺は支え目的で彼女の肩に手を回したのだが、いきなり背後から触られたもんだから痴漢かと思ったらしく手を振り払おうとしてきたが、俺だと気付いたようで拒否の姿勢はなくなった。


「あ、ありがとうございます! まさかあなただとは……! 嬉しい……やっぱり優しいお方なんですね」


 転びそうな人を支えただけで優しい人なのか……? 普通だろ。


「ど、どうしてもうちの宿は酒場も兼ねているので怖くて乱暴なお客さんが多いので……」


 なるほど、そういう極端な人と比べたら俺は優しい人になるわな。



「いえ、それでこれやたら重いんですが……」


「あ、メロンを仕入れに来ていまして……安かったのでついたくさん買ってしまって……」


 ああ、そういや甘い匂いするわ。うーんメロンか、俺の好物だ。


「今日、うちに泊まってくれたらこのおいしいメロンが付きますよ? ふふ」


 やべぇ、今すぐ宿に戻ります。


「やった、俺メロン好きなんです。今日もお世話になります」


「ふふ、助けてくれたお礼に少し多めに出してあげますね」




 宿で夕食。


 まぁいい感じに熟れたメロンが一個まんま皿に乗って出てきた。うめぇ。


 お姉さんも俺の隣の席で笑顔でメロンを食べている。


「……」


 酒場で飲んでいる、いかつい男達がチラチラこちらを見ているな。


「なるほど」


 男達はお姉さんの側に俺とベスがいるのを見て近づけずにいるご様子。お姉さん美人だし酒場のマドンナ的な感じなんだろうな。


 毎日のように屈強な男達にからまれて大変だったんだろう。


 俺の横で安心したようないい笑顔でメロンを頬張るお姉さんを見てると、そんな気がする。


 さーて今日、日銭稼いでないから残金百G。



 明日はがっちり稼ぐぜ。









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