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二百八十七話 ジゼリィ=アゼリィ王都進出計画 3 酔っぱらいのラビコ巻様


「ドーーン!!」



 多分幸せな夢を見ていた。


「童貞ドーン!」


 そう、童貞が笑い合える優しい世界、そんな夢を見てい……。



 深夜、俺は突如自身の体に響いた衝撃と柔らかさで目が覚めた。な、なんだ? ……誰だ俺の幸せな夢に童貞とかいう現実を吹き込んできた奴は。


 目を開けずに心で感じてみるが、どう予想してもラビコ。なんだよ、童貞ドーンとかいう雑なワードは。



「姉さん、旦那起きちゃいますよ、ひっく」


「ん~? まっさか~社長はね~こういうときは寝たふりでやり過ごす男だから大丈夫さ~あっはは~」


 バレテーラ。まぁ、構わず寝たふりを続けるが。つか、寝てるのにいきなり全体重乗っけられてまたがれたら誰でも目が覚めるだろ。そして俺の身にこうしてトラブルが降りかかるときは、大抵ラビコがらみである、と。


「仲いいんすねー本当に。いやぁ羨ましいっす。俺もそろそろ彼女欲しいんで、王都で頑張らないと。あ、旦那にモテる秘訣聞いておきたいっすわー」


 シュレドも結構酔っている雰囲気。今何時なんだ……寝かせてくれ。足元に違和感があるが、多分アプティが俺の足を枕にして寝ている様子。

 少しお酒に付き合ったらすぐ寝たのか、アプティは。



「あっはは~無駄無駄~うちの社長は天然さ~。な~んにも考えてないって、この童貞は~。シュレドは料理出来るし見た目いいし、彼女ぐらいすぐ出来るよ~うっひひ……」


 なんにも考えていないってひどくないか。俺だって色々考えているって。例えばほら、その、あれだ、こう……今は思いつかないけど。


「いっすねー、自然体でモテるとかさすが旦那だぜ」


 そう、そうなんだよ、自然体なんだよ。いいこと言ったぞ、シュレド。


「そうそう~うちの社長って誰に対してもそうなんだよね~、でもそれってなかなか出来ることじゃないよね~。でもさ~そのせいで社長の回りに女が四方から寄ってきて大変でさ~、ラビコさん毎日ハラハラさ~あっはは~……」


 俺にまたがっているラビコの体の力が抜けてきた。あれ、このパターン、俺に全体重乗っけて寝るんじゃ。


「ははは~……腕力とか、魔力で決着がつけられない戦いって……大変なんだね~あっはは、恋愛ってむっずかしい~……負けたく、ないなぁ~……」



「……あれ、姉さーん。ほんと、旦那の側にいるときのラビコ姉さんって子供みたいに甘えちゃうんすねー。ほいっ布団っす」


 ラビコが喋りながら力尽き、俺にまたがったまま寝てしまったようだ。女性に言っていい言葉かしらんが、普通に重い。

 シュレドがラビコに布団を掛け、ぱぱっと片付けをし、背中につけていた黒いマントをお腹に掛け、床に転がった。




「……寝れねぇ」


 チラと時計を見たら深夜二時過ぎ。真っ暗な列車内で全員がスヤスヤと寝息を立てる中、俺だけ物理的に重荷を背負い、寝れずにいた。


 寝袋越しだから別に柔らかいものを堪能出来るでもなく、ただただ重い。


 ベス、愛犬ベスよ。頼むからスヤスヤ寝ていないで、ご主人様の安眠を妨げるラビコをシールドアタックでどかせてくれ。


「…………」


 お、何か体が軽くなったぞ。ナイスだベス……ってアプティか。


 見ると、アプティが無言で起き上がり、シュレドに掛けられた布団でラビコを巻物のようにくるみ持ち上げた。力あるなーアプティって。


「…………」


 そのままラビコ巻をベッドに乗せ、アプティが音もなく俺の前に横たわる。うっほ、アプティの豊かなお胸様の谷間が目の前に……! こりゃすげぇ。ちょっと首伸ばしたら鼻先がつきそうだぞ。

 くそっ、伸びろ、伸びろよ俺の鼻。今からウソをいっぱい言うんで、伸びろ、鼻。実は俺、童貞じゃないんです。童貞じゃない童貞じゃない、よし伸びたぞ、俺の鼻が伸びてアプティの胸の谷間に……。




「ハッ……」


 朝だ。


 フォレステイ発、王都ペルセフォス行き特急列車のロイヤルな部屋に、眩しい朝日が差し込んできた。


 なんというひどい目覚めか。どこからが夢でどこからが現実だったのか。鼻は伸びていない。ラビコは巻物になっている。



「……」


 ぼーっと目の前で寝ているアプティの胸の谷間を眺め、巻物になっているラビコを見る。異世界に来て、帰りたいと思ったことは無いが、この状況は少し望郷の念にかられるな。


 醤油にちょろっと付けて、頬張ると軽くワサビが効いていて、ツンと鼻に抜けるんだ。



「巻き寿司食いてぇな」







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