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二百八十二話 アプティチェイサーズ様


「あ、いたのです。隊長、いましたのです」



 建物に身を隠しながら俺達はアプティを追っている。


 時刻はもうすぐ夕飯になる十八時過ぎ。港街ソルートンは仕事を終え、それぞれの家へと帰る人達で街道は混雑している。


 ちなみに宿ジゼリィ=アゼリィではこの時間に合わせ、持ち帰りが出来るおかずセットをカウンターで販売しているぞ。ボリューム満点のお得なセットとなっているので、皆様もぜひお立ち寄り下さい。


 これが結構売れているのだ。まぁ、一人暮らしの人も多いだろうしな。



「前回もここで見たのです」


 ロゼリィとラビコを引き連れて宿を出ようとしたら、十八時上がりの、もう正社員オリーブが一緒についてきた。


 以前、バイト上がりにシャンプーとボディソープを抱えたアプティを見たそうだ。


 アプティはスタスタと迷わず歩き、たまに道の脇に置いてある花壇で足を止め眺めている。



「いや~やっぱりアプティはバニー姿なもんだから、男達の視線がすごいね~。これはやっぱり男なのかな~あっはは~」


 ラビコが俺の後ろでニヤニヤと笑う。うーん、確かにアプティは露出多い服だし、美人でスタイルもいいからなぁ。男ならどうしても目が行ってしまうと思う。俺なんかいつも見てるぞ。もちろんさ。


「まさか、アプティはそういう子じゃないと思いますけど」


 ロゼリィはアプティを信じているようだ。まぁ、俺もだが。



 しかし今回は珍しいメンバーだな。ラビコにロゼリィにオリーブという面子。


 ロゼリィは宿の制服を着替え、露出の少ない白い長めのスカートにぶかぶかの水色のパーカーというスタイル。


 ラビコはいつもの水着にロングコートスタイル。


 オリーブは紺のミニスカートに胸の大きさがモロに分かる短めのピンクの半袖シャツ。そこに肩掛けポーチをつけているので、見事な例のパイスラッシュが出来上がっている。これは……すごいぞ、オリーブ。


 ちょっとアプティから視線を外し、あまり見ないオリーブの私服姿をぼーっと眺めていたら、オリーブがモジモジし始めた。


「は、恥ずかしいです……隊長……」


「こら~見るのはそっちじゃなくてアプティだろ~。何を目に焼き付けるようにじっくり見ているのさ~。そんなに見たいなら私に言えよな~」


 ラビコがムスっとした顔で怒ってきた。なんだよ、言ったら見せてくれんのかよ。いや、本当に見せられても困るけど。こういうのはこっそり見るからいいんだろうが。バッチリ見つかったけど。



「ふふ、うちの大事な従業員さんに手を出したら、例えあなたでも許しませんよ? ふふ」

 

 おっと、調子に乗りすぎたか。ロゼリィから鬼のオーラが吹き上がってしまったぞ。俺はすぐにアプティへと視線を戻す。



 そのまましばらくアプティを追っていると、とあるお店の前でピタっと止まり、中を伺っている。


「なんだ、あれは何のお店なんだ」


「あれは食材屋さんなのです。私も以前入ったことがあるのです。夜遅くまで開いているので重宝しているのです」


 オリーブが小さい声で教えてくれた。


 食材屋さんか。アプティが用あるとしたら……紅茶だろうか。


 すっとアプティが中に入り、紅茶コーナーの前で足を止める。お店の窓から見えるが、無表情でじーっと見てサンプルの茶葉の香りをチェックしガッカリした感じでお店を出る。


 どうにもアプティの好みではなかったようだ。まぁ、アプティはかなり紅茶にはうるさいからな。実際に紅茶の本場である花の国フルフローラに行って、本物の紅茶を飲んできたから余計に鑑定は厳しそうだぞ。



「あそこのお店が目的じゃなかったのか」


「みたいだね~。まぁ、持っているシャンプーをどうにかするのが目的っぽいしね~」


 俺の問いにラビコがニヤニヤしながら答えてくれる。なんか楽しそうだな、ラビコ。確かに誰かの後を見つからないように追うって、ちょっと興奮する。理由は分からないが。


 その後も何軒かの食材屋さんを巡り、紅茶を鑑定してはガッカリを繰り返している。



 お店を巡っている間にも多くの男達の視線を向けられ、場合によっては近寄ってきて話しかけられたりしていたが、アプティはその男達の方向を見ることもなくド無視で歩いて行く。


 強いな、アプティ……。


「おやおや~社長がそわそわしているよ~? あれ、しつこい男が頑張っているようだね~」


 知らないうちに、俺は隠れている建物から身を乗り出して見ていた。そしてさっき話しかけていた男達がアプティを追いかけ、肩をつかんできた。あ、あいつら……許さんぞ!


「まぁまぁ、何かあってもアプティなら大丈夫さ~。いざとなったら私が行くからさ~」


 飛び出そうとした俺をラビコがニヤニヤ笑いながら止める。し、しかしアプティが……。



 四人の男達が欲丸出しで絡んでくるが、アプティは男達を見ようともせず、つまらなそうに息を吐き目が紅く光る。


 次の瞬間、アプティに絡んできていた男達のズボンが真っ二つに割れ、下半身があらわになる。パンツも真っ二つ。


 男達がかわいい悲鳴を上げ、女の子のようにその場に座り込んだ。


「あ、アプティ……」

「あっはは、今何をしたのか見えなかったな~、すっご~」

「きゃっ! いやっ!」

「おお……なんと武闘派のなのですね……」


 俺が目を丸くし、ラビコはニヤニヤ。ロゼリィは顔を手で覆い俺に抱きつき、オリーブはアプティに感心している。


 もしかしてアプティがいつも俺のズボンを寝ている間におろしてくるが、あれは彼女なりに手加減しているのかもしれん。だって見ろよ、四人の男のズボンが一瞬でパンツごと真っ二つだぜ……。やろうと思えばアプティは俺にもあれが出来るわけだ。


 もう今後、ズボンをおろされるのを抵抗しないでおこう。俺の大事なオレンジジャージを守るためには下半身の露出ぐらい我慢……出来るか。俺は最後まで抵抗するぞ。


 俺のフルカスタムハイグレードビッグエレファントは、なんとしてでも死守することをここに誓う。



 ざわめく周囲に気にも止めず、アプティはそのまま無表情で歩いていく。



 時間は十九時直前、アプティが慌てて走り出し、封筒のマークの看板が掲げられている建物に入っていった。


「なんだ、あそこ」


「あれは郵便屋さんですね。お手紙を届けてくれるところですよ。確か十九時に閉まるはずです」


 ロゼリィが優しく微笑み教えてくれた。なるほど、こっちにも郵便はあるのか。そういやジゼリィ=アゼリィにもよく手紙が届いているな。


 閉店間際に慌てて郵便屋さんに入り、しばらくしてアプティが手ぶらで出てきた。あれ、シャンプーとボディソープがないぞ。



「なるほど~郵便屋さんでどこかにシャンプーとかを発送したんだね~。その相手が男なのかな~?」


 ラビコが面白そうにニヤニヤ笑うが、男にシャンプーを送るか? うーん、分からんな。俺が唸っていると、突然背後から声が聞こえた。



「……お待たせいたしました、マスター……」


「!? うぉっ!」


 びっくりして振り返ると、アプティが無表情で後ろに立っていた。ロゼリィとオリーブも驚いている。ラビコはニヤニヤ。


「あっはは~どうも最初っから気付いていたみたいだよ~私達が遅れないように歩調合わせていたし~」


 ち、ラビコがニヤニヤしていたのはそれかよ。


「ご、ごめんなさいアプティ」

「アプティさん、カッコ良かったのです」


 ロゼリィが慌ててアプティに謝り、オリーブが羨望の眼差しで見ている。



 さりげなくどこに送ったんだ? とアプティに聞いたが、知り合い……としか返ってこなかった。まぁ、アプティにも知り合いぐらいいるわな。……ってそれは蒸気モンスターの知り合いってこと? 聞いてもこれ以上は何も答えてくれないし、まぁ、いいか。



 その後、オリーブを家の近くまで送り、時刻は十九時半。


 もうお腹がかなり減っている。


「さ、帰るぞ。イケメンボイス兄さんとシュレドという、神の兄弟の合作料理を食べられるのも今のうちだしな」


 俺がジゼリィ=アゼリィに向けて進路を取ると、ラビコとロゼリィが抱きついてくる。


「お~! 帰ろう帰ろう~お腹ペッコペコだよ~あっはは~」


「はい! 二人きりではなかったですが、今回のデートは結構楽しかったです。さ、お家に帰りましょう」




「……助けようとしてくれて嬉しかったです。やはり私のマスターはあなたです」



 後ろでアプティがボソっと呟いたが、小さすぎて聞こえなかった。


「え? なんだってアプティ。ホラ腹減ったろ、帰るぞ……ってアップルパイ三枚食ってそんなにすいていないか」


「……いえ、とってもお腹がすいています」


 アプティが無表情に俺の尻をつかんできた。だ、だからそれ何なの……。



「あっはは、社長はモテるな~。ま、理由は分かるけど~あっはは~」


「ですね。たまにそのモテっぷりが妻として心配にもなりますが、今は許します」


 左右のラビコとロゼリィが顔を合わせなにやら笑っている。なんだよ、意味分からんぞ。アプティがなんて言っていたか聞こえていたんなら、教えてくれよ。



「アプティ~さっきのズボン真っ二つさ~たまに社長にもやってよ~。社長ってば言っても全然見せてくれないからさ~」


 ラビコが魔女の微笑み。ちょ……やめろよ、このジャージは持ち物で唯一の日本産という貴重品なんだぞ!


「わ、私も呼んで下さい! み、見たいです」


 ロゼリィが顔真っ赤にして叫ぶ。か、勘弁してくれ……。



「……ではリクエストがありましたので……」

 

 アプティが突如構えだし、俺のビッグマグナムに照準を合わせだした。や、やめろ!



「くそっ! 俺は先に帰る! あばよレディー達!」


 俺はラビコとロゼリィを振り切り、ジゼリィ=アゼリィに向けて全速力で走り出す。


「あっはは~追え~アプティ~! 真っ二つだ~!」

 

 後ろでラビコが恐ろしいこと言ってんぞ。アプティの目が紅い。ふざけんなよ、オレンジジャージはなんとしてでも死守するとさっき誓ったんだ!


 アプティが残像が見える速度で背後に迫る。くそ、今度は俺が追われる立場かよ!



 その後、俺はなんとかジャージを死守し、ジゼリィ=アゼリィに到着。



 後日、俺は本妻三人と愛人五人の関係に疲れ、ついには男に手を出し、路上で男四人のズボンをおろしたところを本妻三人に見つかり追われ、街中を逃げ回っていた。と噂になっていた。



 どんどん酷くなっているぞ、俺の噂。もはやファンタジーだぞ。






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