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二十八話 公園の王子様 1


「ベスー散歩行くぞー」


「ベスッ! ベスッ!」


 俺の誘いに鼻息荒く、興奮しながら愛犬ベスが足元に絡みついてくる。




 こないだエロ本を買いに入ったスポットの近くに大きな公園があったのを思い出し、そこにベスを連れて行くことにした。


「ベスの散歩に行って来まーす」

「はーい、気をつけて下さいね」



 一応、ロゼリィに声をかけていく。こないだえらい目に合ったからな……。





 のんびりと商店街や景色のいい所を寄り道しながら、やっと公園に辿りついた。



 時刻はちょうどお昼。


 以前のお弁当計画以降、普通に店内販売しているイケメンボイス兄さんご自慢の本日の限定お弁当を広げる。


「ベスッ! ベスッ!」


「大丈夫だって、ベスのもちゃんと持って来てるからな」


 作ってもらったベス用のご飯も広げる。




「うわー……イケボ兄さん、また料理スキル上げたなぁ」


 入っていたのは鶏肉の唐揚げのたっぷりタルタルソース。ソースは抹茶がかかっていて香りよく、食べるとさわやかに抹茶感が鼻に抜けて行き良い感じ。見た目も綺麗だし。ん、少し赤いと思ったら微妙に唐辛子入れてアクセントにしてるのか。


「パスタもうめぇ」


 一緒に入っているミートソースがこれまたうめぇ。デザートは梨か、たまらんなこれ。ベスも犬用弁当を一瞬でたいらげた。




 食後、ベスが元気に走り回るのをベンチに座ってぼーっと眺めていた。




「毎日食堂の雑用のアルバイトしているからなんとかなっているが……冒険者として稼ぐのは俺にはきついのかなぁ……ん?」


 さっきまで元気に走り回っていたベスが足を止め、一点を見つめている。


 その方向を見てみると、白い馬に跨った王子様みたいな奴がいた。童話の世界から来たのか、お前。



「あれ、僕が見えるのかい? ふふっ」



 俺の視線に気付いた王子の歯がキラッと光る。きも。


 白い馬に馬用防具、本人は白い綺麗な鎧に悔しいかなイケメンフェイス。


 そんな目立つ奴、誰でも見るだろ。ほら見ろ周りの反応を……ってあれ、公園には結構な人がいるが、誰も白馬の王子を見ていない。


 やばそうな奴だから視界に入れないようにしているのか?


「僕はアーリーガル。王都ペルセフォスからとある任務でやって来たんだ。こんにちは、オレンジ君」


 王子は馬に乗ったまま腰の綺麗な装飾の剣を抜き、俺に近づいて来た。


 それを見てベスが吠え出す。俺は逃げ腰で足ガックガク。


「へぇ、君の犬は勇敢だね。僕等に怯えることなく向かってくるとは。それほどご主人を信頼しているんだね」


 王子は俺の目の前まで来て、長く美しい剣を俺の頬に当てる。


 何考えてるか分からない不気味な笑みを浮かべたまま、じーっと俺を観察している。



 なんなのこの状況……俺結構ピンチなんじゃ……?






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