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二百六十九話 紅茶巡り紀行 7 アプティの擬音審査会と雑誌のラビコ様


「どうだアプティ、まずはいつもジゼリィ=アゼリィで飲んでいるデイズアイだ」


「……はい、いつものほわほわの美味しい紅茶です」



 ラベンダルから馬車に揺られること二十分。


 俺達はアンリーナのホテルと契約している農園に到着した。時刻は午後五時過ぎ。まだ明るいがそろそろ夕闇が迫っているか。


 今はガウゴーシュ農園、というところに来ている。


 真面目そうなおじさんと優しそうな奥さんと、超元気な娘さんのササリアさんが夕方にも関わらず笑顔で迎えてくれた。



「美味しいのはあったりまえさっ! 私達が丹精込めて作っている自信作だからね! はいっ、お次は上品な見た目のタルタルレジェさ!」


 ガウゴーシュ夫妻とアンリーナが笑顔で商売の話をしているのでぼーっとしていたら、娘さんのササリアさんが気を利かせて紅茶セットを持ってきてくれた。


 俺達は外に置いてある休憩用に使うらしいテーブルにつく。



 ササリア=ガウゴーシュさん。とっても元気な十六歳の女性。俺と同い年か。


 肩まである髪はかなりのくせっ毛らしく、ぴょんぴょん跳ねている。麦わら帽子をかぶり、つなぎを着た、笑顔がすごい似合う太陽みたいな元気っ子。


 カップをいっぱい持ってきてくれ、うちの自慢の紅茶を飲み比べて欲しいと言われ、ありがたくいただいている。



「……ふぅっと、すーって美味しいです」


「そ、そうか」


 とりあえず紅茶の選定はアプティに任せようと、飲み比べて感想を聞いているのだが……。


 タルタルレジェ。色が黄色い紅茶。黄金のような見た目で、軽く甘いのが特徴だそうだ。



「んははっ! この子面白いなぁ。はい次! ベルデサウアさっ」


 ササリアさんが、無表情でするする飲んではボソボソと感想を言うアプティが気に入ったらしく、とても楽しそうに紅茶をいれてくれる。


「……すんっ……ぬぬっと美味しいです」


 ベルデサウア。緑色の紅茶。見た目で俺は緑茶かと思ったが、れっきとした紅茶だそう。あとから少し酸味がくる紅茶。



「いいねっ、よく分かってるねぇ! はい次はミンダリノワールさっ」


 アプティが飲んでは感想を言ってくれていて美味しいのは分かるが、前半の擬音のやつが意味分からん。でもササリアさんには通じているらしく、アプティをベタ褒め。


 なんなんだ……ほわほわ、ふぅっとすー、すんっぬぬっと美味しいってのは……。

 

 俺の紅茶修行が足りないのか。



「……ほっ、すすわーと美味しいです」


「そう! ミンダリノワールってほっ、すわわーなんだよねっ! んははっ」


 ササリアさんがアプティにぺったりくっつく。


 ほっ、すわわー……か。


 ミンダリノワールは、アーモンドのような香ばしさと甘い香りが口の中に広がる感じだけど……。ほっ、すわわー……? やっぱり俺の紅茶修行が足りないんだな。



 とりあえずいただいた銘柄はどれも美味しい。全部仕入れてみようか。


「ラビコ、とりあえず全部仕入れようと思うんだがどうかな」


「ん~いいんじゃないかな~アプティの味覚は信じていいと思うよ~」


 ラビコも全部飲み比べ、どれも美味しいと思ったようだ。ロゼリィも同じく頷いている。うん、反対意見はなさそうか。


 愛犬ベスは側に柵で囲まれた場所があったので、そこに放させてもらった。ガウゴーシュ農園で飼っている犬がそこに数匹いて、彼等と元気にベスが戯れている。



「ラビコ……さん? ってもしかしてあの大魔法使いラビィコールさんですか!?」


 俺がラビコに感想を聞いていたらササリアさんがピクっと反応し、目を丸くしてきた。


「そういやラビコって略称だったな。そうですよ、その水着を纏いキャベツで戦う大魔法使いのラビィコールさんです」


「あ~社長ってばそうやって適当に扱うのはラビコさん傷つくな~。そうさ~本人さ~」


 別に適当には言っていないぞ。俺なりに実に簡潔に分かりやすく説明したつもりだが。


「うわっすごい……! なんか持っている雑誌の写真と似ているなぁと思っていたら本物なんですか! 子供の頃からルナリアの勇者さんの活躍にずっと憧れていましたっ。でも私才能無くて冒険者にはなれなかったんですよ、んははっ」


 ササリアさんが頭をかき笑う。そして思い出したようにさっと自宅に戻り、大事にしているというラビコが載っている雑誌を持ってきてくれた。


 何年か前の雑誌で世界の魔法使い、という特集。そこにラビコがかなり扱いが大きく載っているが、なんかムスっとした顔で写っているな。この背景は……ペルセフォスのお城だろうか。


「うっわ~懐かしい~あっはは~つまんなそうな顔しているね~。これさ~あの変態姫に無理矢理、国の広報用だって撮られたんだよね~。だから私の写真って基本このムっとしたやつしかないのさ~あっはは~」


 ああ、そういうことか。なんか昔のラビコってムスっとしていたそうだしな。


「そ、そうだったんですか。なんか写真がこれで、容赦なく蒸気モンスターを消し去る魔女みたいに書かれているから、もっと恐ろしい人かと思っていました。でもすっごくいい笑顔の人で安心しましたっ」


 ササリアさんがほっとしたように溜息をついた。まぁ、この写真じゃあなぁ。油断したら取って食われそうな恐い顔してるもんな。



 その後、サインが欲しいと言われラビコが笑顔で応じていた。綺麗な木の板にサインをしてもらい、そこに話の終わったアンリーナが戻ってきて、アンリーナのサインも一緒の板にしてもらいササリアさんがすっごく喜んでいた。


 世界的に有名な大魔法使いのラビコと世界的企業の娘さんのアンリーナ。この二人のサインが同時に書いてある物はかなり貴重なんじゃないか。



「師匠、ありがたくも王都のカフェのほうとも契約を結んでくれましたわ。やりましたね」


「おお、すまないアンリーナ。ありがとうございますガウゴーシュさん」


 すでにアンリーナが交渉してくれたらしく、二つ返事でガウゴーシュ夫妻の了承を得られたようだ。


 仕入れる銘柄はデイズアイ、タルタルレジェ、ベルデサウア、ミンダリノワールの四種。どれも美味しかったし、アプティの審査も通った銘柄だ。俺も自信を持ってカフェで出せるぞ。



 とても順調にカフェ計画が進んでいると思う。


 あとは建物の完成とシェフになるシュレドの成長に期待しよう。






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