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二百六十六話 紅茶巡り紀行 4 グリン農園様


「お久しぶりですグリンさん。アンリーナ=ハイドランジェです。いつもホテルローズ=ハイドランジェに上質な紅茶のご提供ありがとうございます。グリンさんの紅茶のおかげでホテルの評判も上々となっております」



 馬車に揺られること三十分。


 高原に向かう道だったのでそこそこ揺れたが、酔いやすいロゼリィは外に広がる美しい風景のおかげか、酔うこともなく無事に農園に到着した。


 高原というだけあって、ローズアリアの街より気温は涼しい。空気も実においしいぞ。



 大きな木の看板に『グリン農園』と書いてある。


 基本紅茶の生産を行っているようだが、花も同時に取り扱っているらしく、大きな花畑も見える。もう入り口に立っているだけでも花のいい香り。



「おーおーアンリーナちゃん。よくこんな田舎まで来たなぁ、わはは。相変わらずかわいいねぇ、そろそろ彼氏は出来たかい? わはは」


 入り口近くの花を手入れしていた白髪のおじいさんにアンリーナが丁寧に話しかけると、おじいさんはゲラゲラ笑いこちらに歩いてきた。


 優しそうな笑顔だなぁ、グリンさん。


「ありがとうございます。ふふ、グリンさんもいつもの太陽のような笑顔で安心しますわ」



 アンリーナと農園のオーナーグリンさんが軽く談笑していると、奥から女性が出てきて外に置いてある木で出来たテーブルに座るように手招きしている。グリンさんの奥さんだそうだ。



「お待たせアンリーナちゃんと……お友達かい? ホラ美味しい紅茶飲んで疲れを取りな」


 グリンさんの奥さんが俺達全員分の紅茶を用意してくれた。うわぁ、ありがたいなぁ。


「ありがとうございます。どうしても逢いたくて来てしまいました。ああちょうどいいです、これはグリンさんの農園の紅茶を使わせていただいている当ホテルの宿泊券になります。よろしければお使い下さい」


 アンリーナが頭を下げ、カバンから豪華な装飾の封筒を取り出し奥さんに渡した。すげぇ、アンリーナのホテルの宿泊券だって……。


「あらーいいのかい? いつも悪いねぇ、私達の結婚記念日にアンリーナちゃんのホテルに泊まるのが毎年恒例になっていてねぇ。ホテルに見合うようないい服買わなきゃね、あんた」


「んなこと言ってもお前、俺達はビシっとした服なんて似合わねぇって。どう見ても田舎モンだからなぁ、わっはは!」


 二人がそうだった、と楽しそうに笑う。なんか仲良さそうなご夫婦だなぁ……いいなぁ、こういうの。



「……マスター、とてもおいしいです」


 アプティが出された紅茶をずるずると飲み干し、俺におかわりを所望してきた。だから味わって飲めって。


「あら、こちらのかわいい子、いい飲みっぷりね。ホラ、どんどんお飲み」


 アプティのカップが空になっていることに気がついた奥さんが、ポットから紅茶を注いでくれた。無礼ですいません……。


 頂いたのは柑橘系の味がほんのりするアランルージュというもの。すでにごくごく飲んでいるし、アプティ審査は通過で。俺も美味しいと感じるし。



「ご紹介が遅れました。こちらの方々は私が心から信頼する友人達になります。この度、彼等とともにペルセフォス王都にカフェを開店する運びとなり、唐突で失礼かと存じますが、またグリンさんのお力をお借りできればとお願いに上がりました」


 アンリーナが立ち上がり、深々と頭を下げる。やべぇ、と慌てて俺も頭を下げる。


「あれかい? 彼氏かい? わはは! めでたいねぇアンリーナちゃんについに彼氏が出来たのか。いいとも、アンリーナちゃんが信頼するような男なんだろ? それならこっちから頭を下げて商品の仕入れをお願いしないとならないよ、わはは!」



 よく分からないが、トントン拍子に話が進み、あっという間に契約が完了した。


「うん、了解、はいサインね。ペルセフォスかぁ、随分都会にお店出すんだねぇ。アンリーナちゃんの彼氏君もお金持ちなのかい? すごいなぁ、わはは」


「あ、いえ……それが王都のレースで……」


 俺が軽くお金を持っている説明をすると、グリンさんがすごい乗ってきた。紅茶の生産が忙しくないときは、毎年ペルセフォスのウェントスリッターを見に行っていたそうだ。今年は忙しくて行けなかったんだと。


 行くと予想をしてチケットを買うけど、一度も当たったことがないとか。今年はハイラが優勝したと言うと、あの娘がレースに出たのかい、と驚いていた。


 まぁ……以前のハイラならマジで? と驚かれるんだろうけど、今のハイラは違うぞ。あのサーズ姫様にも勝る特技の直線加速は世界で通じると、俺が自信を持って言える。



「あのグリンさん、そのお花はスイートスターですか? 出来たらそのお花も仕入れリストに加えたいのですが」


 先程グリンさんが手入れしていた黄色い花。あれってビスブーケのカフェで出てきたパスタと水に入っていたやつだよな。


 あれはペルセフォスでも人気出そう。見た目の華やかさとインパクトは新規のお店にはぜひ欲しいところなんだ。


「ん? ああ、これはスイートスターだよ。この花、年中ぼんぼん生えてきて処分するほどあるからありがたいよ、わはは。ああ、これ他にも赤に青、紫、白、ピンクとかあるけど……どれがいい?」


「黄色以外にもあるんですか。じゃあ全色下さい。採れた花ミックスして送っていただきたいです」


 いいぞ、黄色以外にもあるのか。それなら料理の色に合わせて花の色を変えられる。カラフルな見た目は絶対人の心をつかめるはずだ。



「お~たしかにペルセフォスでは食べ物に花が入っているとか見たことないから~このカラフルなスイートスター作戦はかなりいいんじゃないかな~。あっはは~さっすが社長、考え方が一つの街、地域、国にとらわれない広い考え方だな~」


 元勇者パーティーの一員として世界を見てきたラビコにも好感触。


 アンリーナとグリンさんのおかげで素晴らしい物が仕入れられそうだ。


 よし、来た意味があった。美味しい紅茶のショコラメロウとアランルージュに、見た目の豪華さを加えられるスイートスターというお花を手に入れられた。



 ローズアリアでの任務完了、お次はラベンダルか。


 そっちでも美味しい紅茶があるといいなぁ。






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