二百五十二話 花の国フルフローラへ 3 ホテルの値段とカフェ計画報告様
「花の国フルフローラへはホテルで一泊後の明日朝の出発となります」
アンリーナからとりあえずの航程の説明。今日はペルセフォスの南にあるリゾート地、カエルラスター島を満喫。明日、花の国へ向かうそうだ。
「ラビコ、カエルラスター島にあるアンリーナのホテルってどうなんだ。その、値段とか」
どう予想しても高級ホテルっぽいんだが、オレンジジャージ君である俺なんかが行ってもいいんかね。
「う~ん、アンリーナがどのランクのコースを用意しているか分からないけど~……確かあそこ一泊お一人様五百G以上したような~」
ご、ごひゃく……。俺感覚だと最低五万円か。やっぱりかなりの高級ホテルっぽいぞ。
「師匠、ペルセフォス王都のカフェの報告です。ソルートンにあるジゼリィ=アゼリィをベースにデザインを起こした建物となる予定です。そしてカフェジゼリィ=アゼリィ店内にローズ=ハイドランジェのコーナーを作っていただき、言い方は悪いですがカフェの集客力をアテにした売上を期待しようかと」
ラビコとカエルラスター島のホテルの値段を討論していたら、アンリーナが何やら紙に絵を描き見せてきた。
そうか、二店舗を並べてではなく、ジゼリィ=アゼリィの一店舗を大きく建てるのか。
「一階は広く客席を取り一般の方を、吹き抜けの二階は壁に沿って席を置きご予約の方を優先に。そして二階の奥に三部屋ほどの簡易個室を作り、王族の方などの専用席にと考えています」
おお、俺が言った見た目はソルートンのジゼリィ=アゼリィと似たようにして欲しい、が通ったんだ。なるほど、王族専用の席を作るのか。王族っても来たとしてサーズ姫様ぐらいじゃないかね。
「厨房から直で上がれる階段を作り、三階は従業員用の休憩所、そして予備倉庫の予定です。一階にも従業員休憩所はあるのですが、寝泊まりも出来る設備を三階に何部屋か作ります」
料理の仕込みって夜中からやったり、準備があるからなぁ。お店に寝泊まり出来る部屋があるのはいい環境かもしれない。
「な、なんか結構すごい建物になりそうだな。ああ、お金なら王都の俺の銀行口座から出してくれ」
王都の俺の口座には、ハイラが頑張って優勝したウェントスリッターのレースで得た配当金が五百万G入っている。日本感覚だと五億円だ。
ジゼリィ=アゼリィからもお金は出るが、とりあえず俺が払う。
「了解しましたわ。サーズ姫様に言って手続きをしますわね。あと、ローズ=ハイドランジェからも出資いたしますので、かなり豪華な物が出来上がる予定です」
アンリーナが自信満々に微笑む。うむ、かなりの手応えがあるようだな。
「王都のお城の目の前という素晴らしい立地条件、そしてカフェジゼリィ=アゼリィの集客力、これは相当の売上が期待出来ますので、うちからはかなりの額を出資させていただきますわ」
商売人の勘ってやつだろうか。
「ヌフフ……いいですか師匠、これは私から師匠への惜しみない愛でもあるのです……ヌフフ」
アンリーナが嫌な笑顔になった。あ、愛……ですか。
「ヌフ……まぁそれは冗談としまして、あの場所なら数年で投資額を回収出来ると踏みました。私のお父様も場所を聞いてかなり驚かれて、旗艦店として出資してもいいとおっしゃりましたわ」
本当に冗談だったのでしょうか。
それにしてもアンリーナのお父さんが驚くほどの場所なのか、あそこは。まぁ、王族所有の土地らしいしな。普通はお店なんか出せない場所なんだろう。
「な、なんか話がどんどんと大きくなっていくような……」
左隣りに座って話を聞いていたロゼリィが軽く震えだした。正直俺もブルっている。アンリーナがいなければここまで上手く話は進まなかっただろうな。
「完成は来月を予定しています。さぁ師匠、動き出しますわよカフェジゼリィ=アゼリィが」
アンリーナが自信のこもった視線を俺に送ってくる。俺もこれは成功を予感しているし、アンリーナの話を聞いてさらに期待が高まった。
よし、今回の花の国フルフローラで紅茶の仕入れも気合い入れて行かないとな。




