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5 異世界転生したら花の国があったんだが

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二百四十四話 試着室ロマンス様


「あ、こらベス! 足にまとわりつくなって!」



 港街ソルートンの商店街にある女性物の服屋さんが多く集まるスポット。俺は足元に絡みつく愛犬ベスの攻撃を避け、大荷物を持ちフラフラと歩いていた。


「次はあっちに行きますね。ふふ」


 ロゼリィが楽しそうに笑う。


 とりあえず買い物に付き合ってくれたら許してくれると言うので、今俺は荷物持ちをやっている。南にある花の国フルフローラに行くのなら、服を買いたいんだとさ。

 


「これなんかどうでしょう……ちょ、ちょっと大胆ですか?」


 水着やかなり露出多めの服が多く並ぶお店。


 試着室から恥ずかしそうに出てきたロゼリィの姿に俺は喉を鳴らす。ロゼリィの美しい身体のラインを殺すことなく、かつ胸とお尻を強調するデザイン。そしてその服は布の面積が少ない。これもはや裸じゃねーか。


「すげぇ……すげぇよロゼリィ。思い出されるラビコの研究所でのメモリー! ……あ」


 しまった、つい興奮してロゼリィの裸を思い出してしまった。しかも口に出してしまうという失態。


「ご、ごめ……!」


「い、いえ……いい加減こういう格好にも慣れていかないといけないと思いまして、その……」


 ロゼリィが怒ることなく、モジモジと身体をくねらせる。うん、その動き余計にエロい。


「今まであなたを見ていたら、やはりラビコとアプティに視線が行くことが多いのです……。その、肌の露出を多くすれば、あなたにもっと見てもらえるのかと思いまして……今回南の暑い国に行くとのことなので、慣らすにはちょうどいい機会かと……」


 恥ずかしそうに身体を隠しながらボソボソとロゼリィが言葉を漏らす。俺が今までどこを見ていたか観察していたんかい。

 そりゃー俺だって男だもの。露出の多い女性に目が行くさ。でもなんと言うか、露出多めにしたロゼリィが他の男にジロジロ見られるのはイラっとするな。


 ラビコとアプティは最初からあの格好だったからしょうがない、と思えるが、ロゼリィはなぁ……。


「その、そういう格好は俺の側にいるときだけにしてくれ。ロゼリィの身体を他の男に見られるのは、想像だけでなんか怒りが湧いてくる」


 ああ、これって一方的な独占欲なのかね。まずいこと言ったかなと思ったら、ロゼリィが嬉しそうに俺に身を寄せてきた。うへ、いい香り……そしてやわらけぇ。


「ふふ、もちろんです。私がこの身体をお見せしたいのはあなただけです。私のことを心配してくれているのですね、ふふ……とても嬉しいです。やっぱりあなたはお優しい人です……」


 トロンした表情で頬を赤らめ、ロゼリィが唇を寄せてくる。ちょ……ほぼ裸みたいな格好で迫られたら俺、アカン……。



「はいそこまでさ~服屋の試着室でラブロマンスは観客が多すぎるからやめようね~あっはは~」


 ロゼリィの唇がもう数センチ、というところでラビコが笑いながら杖を差し込んできた。俺は杖とキッス。

 慌てて周囲を見てみると、俺達がいる試着室は多くのお客さんで囲まれていた。なんてこった、つい二人の世界に入ってしまって、周りが見えていなかったようだ。

 ベスが俺の足を甘噛みしている……すまんすまん二人じゃなかったな。


「……マスター、私もこの格好は止めたほうがいいですか?」


 気づくと真後ろにアプティもいる。


「あ、いや、その……うーんと、俺の側ならその格好でもいいんだ。つーかお前等、ついてきていたのかよ」


「あっはは~あったりまえじゃな~い。二人きりのデートとかこの大魔法使いラビコ様が許さないよ~ね~アプティ」


 ニヤニヤと笑うラビコ。コクコクと頷くアプティ。


「しっかしロゼリィ~どうせ裸同然で迫るなら服屋の試着室じゃなくてホテルにしときなって~あっはは~」


「う、い、いいじゃないですか! うう、せっかくの二人きりのデートだったのに……」


 あれ、これってデートだったの? 許してもらう為の荷物持ちじゃなかったっけ。



 その後、四人でお店を巡り、ちょっとした喫茶店でデザートを食べて宿に戻ることに。




 次の日以降、俺は試着室ナンパ男と街の噂になりましたとさ。

 どこぞの怪人か何かなのか、俺は。







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