二百三十七話 王都の駅でお弁当計画と想像の獣(紳士)様
朝五時半に王都を出発し、魔晶列車は終点のフォレステイへ向かう。
各駅停車ではなく特急なので、かかる日数は半分の一日で着くのがありがたい。列車最後尾にあるロイヤルな部屋を取っているので、道中も快適の一言。六千ゴールドは結構な出費だがね。
列車内の個室にいるのは俺、ロゼリィ、ラビコ、アプティに愛犬ベス。なんか最近はアンリーナにサーズ姫様にハイラがいたので、このメンバーになるのは久しぶりな感じ。
王都に行った目的はカフェジゼリィ=アゼリィの開店場所の選定。
予定では王都に詳しいラビコと商人アンリーナの意見を参考に王都内を歩き回るつもりだったが、急遽魔法の国セレスティアに行くことになり、その見返りとしてサーズ姫様が王族所有の土地を無償で貸し出してくれた。
ここがさすがにいい場所で、お城の目の前、図書館の真向かいという好立地。お断りする理由もなく、サーズ姫様のご厚意に甘えることになった。
細かい書類作成やカフェ建設に関しては世界的に有名な魔晶石、化粧品メーカーの一人娘アンリーナが請け負ってくれ、知識のない俺は大変助かった。サーズ姫様も協力をしてくれ、審査や業者の選定はあっという間に終わり、来週には足場が組まれるそうだ。
アンリーナが優秀すぎて参るぜ。
何日かはアンリーナが王都に滞在し、設計の指示や内装の細かい打ち合わせをしていくそうだ。それが終わればソルートンに帰ってくるみたい。
昨日、図書館騒動後に街中のお店で、オシャレなお財布をソルートンのみんなのお土産に購入しているので喜んでくれるといいなぁ。
過去の経験から列車に乗る時は何か買っていったほうがいいと学び、一応パンを買ってある。つうか、駅でそこそこ食べられるお弁当売っていればなぁ。
「ああ、そうか。王都の駅でジゼリィ=アゼリィのお弁当売れば、相当売れそうな気がするぞ」
お昼、車内のロイヤルな個室でパンをモソモソ食べているところにふと思いついた。
「確か魔法の国セレスティアに行く途中の場所にお米の産地があったよな。あそこからお米仕入れてご飯スタイルのお弁当を駅で販売出来ないだろうか」
「おお~いいね~駅でジゼリィ=アゼリィの味が買えるなら私達も嬉しいね~。ペルセフォスの西にあったカルフイリだね~王都にもそこ産のお米が売っているから、仕入れるのは簡単じゃないかな~」
ふむ、さすがに王都で買えるのか。それなら結構スムーズにいけそうだな。まずはカフェ開店、余裕出来たら駅でお弁当販売計画をサーズ姫様に申請してみよう。
「な、なんか話がどんどん進んで行くので、ついていくのがやっとです……これじゃだめです、うん! 若旦那を支える妻としてもっと頑張らないと!」
ロゼリィが鼻息荒く握りこぶしを作るが、俺にはまだ妻はいないぞ。
「あっはは~ローエンがお酒飲みたくて始めた酒場がついにペルセフォスに進出、王都の玄関口の駅でもお弁当販売か~なんかでっかくなってきたぞ~。もしかしたらいつかアンリーナのローズ=ハイドランジェ並に有名なお店になったりして~あっはは~」
ラビコが笑うが、さすがにローズ=ハイドランジェ並は結構な努力が必要だぞ。なんせ向こうは創業八百年らしいしな。こちらは一歩づつマイペースに進むのみ、だ。
「……マスター、お疲れの際は私がマッサージをいたします……」
アプティが後ろから肩を揉んでくれた。おお、いいな……絶妙な力加減だぞ。指圧の感じがたまらん。あと胸が背中に当たってさらに素晴らしい。
「うっわ、だらしない顔~社長ってさ~アプティに甘すぎないかな~。こういうのは公平にしないと指輪組が黙っていないぞ~っと」
そう言ってラビコが右腕に絡んでくる。うーん、ラビコはパッド無しの水着だから余計に感触がダイレクト。
「あ、ず、ずるいです! 私も……あ、この感じ久しぶりのような気がします」
慌てたロゼリィも左腕に絡んで来るが、確かにこの三人の構図は久しぶりだな。
ああ、みんな怒らないで聞いて欲しい。俺は王都にあるラビコの研究所の温泉で、ついにロゼリィの豊かで美しい胸を生で見れた。
これはアンリーナの功績が大きいが、ナイスアクシデントだった。そしてラビコの物も俺は見たことがある。分かるだろうか、俺の左右の腕に当たる女性の胸が容易にリアルに想像出来るのだ。まぁリアルに想像すると、とある事情でしばらくしゃがんだまま動けなくなるのが難点だが。
ふと気付いたが、アプティのは見たことがないな。バニー姿から露出されている部分はよく見ているが、中身を見たことはない。
いや、別にどうしても見たいとかじゃないぞ。なにせ俺は紳士だからな。
紳士的にチラリとチョロっとスマートに見えないか今度頑張ってみよう。




