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二十三話 ロールケーキと噂の男様


「はぁ……おいしい……私今まで人生損していました……」



 宿屋の看板娘、ロゼリィが深い溜息をつく。




「ここって本来酒場で、空いてる部屋貸し出すようになって、それが好評で宿屋も始めたんでしたっけ」


「はい、お父さんがお酒大好きな人で、世界中のお酒をかき集めて開いたのが最初みたいです。そこから宿屋を追加、宿泊プランにご飯付きを追加で食堂追加……という感じです」


 ロゼリィが本日のセットデザート、アップルアイスティーにマロンケーキを大事そうにゆっくり食べている。


「酒場で出る食べ物で育ったのなら、デザートは縁遠いよなぁ」


「あなたのは何です? まだメニューに無いやつみたいですが……?」


 俺がいま試食しているのは、俺提案のロールケーキ。


 スポンジ生地に生クリームを乗せ、綺麗に巻いて出来上がり。色のかわいい小皿を別に用意し、食べる直前に中に入ったオレンジソースをかけて食べるというもの。



「うめぇ」


「あ……ああ、そ、それ美味しそう……! わ、私も食べたいです!」


 ふふ、見た目の綺麗さはこういう効果があるから大事なのだ。イケメンボイス兄さんも見た目の重要性を分かってくれ、今まさに修行中。


「どうぞ、食いかけですが……」


「か、か、か、か、かかか……間接なんですね!? 分かりました! 心の準備は出来ています!」


 ロゼリィがやけに興奮している。まぁ綺麗で美味しそうなデザートを前にしたら、女性は興奮を抑えられないのだろう。


「はぁ、はぁ……ぅええいっ!」


 ロゼリィが周りの人が思わず振り返るほどの奇声を上げ、意を決したように試作ロールケーキを口に運んだ。


「はぉ……オレンジソースの程よい酸味と甘み……フワフワのスポンジケーキに溶けるような生クリーム……そしてあなたの愛が……!」



「ちょっとうるさいっての発情女~。そういうのは夜に部屋で一人で存分にやれっての~」


 後ろからラビコが現れ、杖でロゼリィの頭を軽く叩いた。


「ふんぶっ……! いった……なにするんですか! このエロキャベツ!」


 ロゼリィがプンスカ怒っている。うーん、この二人……水と油だな。


「エロキャベツとか~ちょっとひどいと思うな~」


 ラビコは寝るときは水着。そしてもう面倒になったらしく、水着にロングコートを軽く羽織った姿で部屋から出てくる。うん、エロい。



「あっはは~でも、この格好だと社長がチラチラ熱い視線を送ってくれるから~効果は大きいかな~」


 気付かれている……! が、最近はもう堂々と見るようにしている。


 いいじゃないかこういう役得ぐらい、異世界に来たんだから許してくれ。


「………………!」


 ロゼリィが自分の肌がほぼ見えない服装と、水着ロングコートのラビコ、俺、へと視線を移す。


「み、み……! 私も水着買って来ます! 紐みたいなすっごいのでいいんですよね!」



 ロゼリィが顔を真っ赤にして叫び、走り出した。


「ま、待て! ロゼリィ……! こんな安い挑発に乗るな!」




 俺が必死に追いかけ、ベスの協力も得てなんとかロゼリィを確保。


 くそ……ラビコが来てからトラブル増えてないか……。俺は平和に異世界生活を楽しみたいだけなのに……。



 後日、俺は泣きながら宿屋から飛び出して行った女性を必死に追いかけ謝る浮気男……と噂になっていた。












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