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4 異世界転生したら魔法の国があったんだが

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二百二十五話 雪の夜空に咲くマリアテアトロ 1 恋人達のイベントとラビコの一番弟子様

「一年に一度開かれるイベントでして、セレスティアが国を挙げて開催する豪華なものですわ。最高にロマンティックな夜を過ごせるので、恋人達に大人気なんです。これを見た後の男女の既婚率の高さは脅威的……そう、まるで私と師匠の為のイベントと言っていいかと……」



 ほう、国を挙げて開催とはすごいな。かなり力の入ったイベントなのか。基本、アンリーナの話は後半聞き流しても大丈夫だな。


 二人と別れた後、俺達はすぐ近くの喫茶店に入り、明後日開かれるというイベントのことをアンリーナに聞いてみた。紅茶と一緒に頼んだクッキーがモソモソのスカスカ……ちょっと残念。



「これはもう早く子供の名前も考えておかないと……」


「そ、それはどういうものなのですか!? 一緒に見た男女がすぐに結婚で子供がのお話を詳しく……!」


 ロゼリィがガタンと立ち上がりアンリーナに迫る。なんか都合のいい言葉だけ抽出して並べてないか。


「……うふふ、乗ってきましたねロゼリィさん。いいでしょうライバルとはいえ、情報はイーブンで行きますか」


 ニヤリと笑ったアンリーナが鼻息荒く立ち上がり、得意の演説が始まった。他にお客さんはいないが、あまり度が過ぎたら注意しよう。



「それはセレスティア王国が毎年開く、とてもロマンティックなイベントなのです。これ見たさに世界中から多くのカップルが訪れ、ほのかな恋を愛へと昇華させていくのです」


「恋から愛に……! それはなんて素晴らしいイベント……!」


 アンリーナの言葉を食い入るように聞くロゼリィ。メモ帳があったら細かく書き込んでいる勢いだな。俺とアプティは黙って聞くのみ。ベスでも撫でていよう。


「でしょう? それは雪が舞う夜。空に放たれた光の花が赤、青、ピンク等の彩りを放ち輝く……時には優しく可憐に、時には激しく雄々しい。まるで輝く愛のウェーブが次々と押し寄せ、二人の背中をぐいっと後押しするのです!」


「すごい……! すごいですアンリーナさん! そして二人の愛の花が咲くわけですね!」


 盛り上がる恋する乙女達。しかしアンリーナはさすがに商売人だよな、乗せるのがうまいわ。


 空に放たれた光の花、か。それって花火のことだろうか。



「えーとアンリーナ、簡単に言うと何が行われるんだ?」


 さすがに抽象的過ぎて分からんので横から聞いてみた。


「はい、簡単に言うと、セレスティアの魔法使い達がその持てる魔力を空に打ち上げ、見た目の美しさ、豪華さ、彩りを競い合うイベントです。夜空に打ち上がり、花のように開く魔法は本当に美しいです……マリアテアトロというイベントで、優勝者はその栄えあるマリアテアトロを一年間名乗れ、周りから尊敬されるらしいですわ」


 ふむ、聞けば聞くほど打ち上げ花火だな。それを魔法でやるのがイベントってわけか。異世界でも花火が見れるとか嬉しいなぁ。明後日が楽しみだ。


 しかしペルセフォスのウェントスリッターとほぼ同じ仕組みだな。ハイラが呼ばれているのが少し分かった気がする。





 一時間ほど経ったのでさっきの鍋が食べられるお店に戻ることに。


「ラビコー、どうよ。そろそろお城に戻ろうぜ」


「あ! お帰りなさいませお兄様! 戻るのでしたら今すぐ馬車をお呼びいたします!」


 ラビコの横にべったりくっついて座っていたノギギがバッと立ち上がり、外に走って行った。

 お兄様? 今俺のことを指して言ったのか?


「どういうこった。ラビコ、何があったんだよ」


「え~? 何って左手の指輪のことを聞かれたから正直に答えただけさ~」


 左手の指輪……絶対何か誤解するように伝えたと思われる。




 ノギギが呼んでくれた馬車に乗り、お城へ戻ることに。


「聞きましたところ、ラビコお姉さまとご結婚されているとか。ということは憧れのお姉様の旦那様なのでお兄様がちょうどいいかと思いまして。だ、だめでしたか……?」


 馬車の中で聞いてみたら案の定。


 だからそれは感謝の指輪であって、結婚指輪とは違うんだって。なんでかみんな左手薬指に装着させているけどな。


「い、いや……いいよ。好きに呼んでくれても構わないが、それは感謝を込めた指輪であってな……。ちなみにここにいるみんなに贈っている」


 そう俺が言うと、待ってましたと言わんばかりに女性陣がズバっと各自の指輪をかざしてくる。この四銃士登場の光景も見慣れたな。


「うわっ……見かけによらずお兄様って夜はすごいんでしょうね……。ううん、銀の妖狐を撃退したという英雄なのですから当然とも言えます。私はお姉様とお兄様の乱れた生活を応援しますよ! 邪魔する輩は雪山に埋めて、丁寧に幾重にも凍らせてあげますよ!」


 別に乱れた生活は送っていないぞ。俺はとても紳士で健全な男だからな。健全の語源になった男と言ってもいいぐらいだ。あと後半のセリフは怖い。



「ノギギは明後日のイベントには出ないのか?」


 確かこの国一番の魔法使いなんだよな。


「はい、参加者ではなく模範演技者として最後に私も出る予定です。ククッ……雑魚共との格の違いをたっぷり見せつけてやろうかと……ラビコお姉様の一番弟子の力をドカンとその目に焼き付けて、お姉様の偉大さを世界にアピールするのです……ククッ!」


 ……ノギギがすごい悪い顔になっているぞ。まだこの人よく分かんねーな……ラビコに心酔していて、結構ドス黒い物を持っていることは分かったが。




「ラビコ、いつの間に弟子なんか作ったんだよ……」


「え~今だけど~まぁいいんじゃない~? これでセレスティアにコネが出来たわけだし~社長の今後の為を思ってラビコちゃん頑張ったわけだけど~。はい、褒めて褒めて~」


 ラビコが悪びれなく頭を向けてくる。うーん、本当に俺の為なのか? まぁ、確かに魔晶石を使った通信技術を相談できる人の知り合いは欲しかったが。


「……分かった、偉いぞラビコ」


「んふ~これこれ~染みる~」


 軽くラビコの頭を撫でると他の四銃士のメンバーが決起し、頭を向けてくる。はぁ、結局こうなるのか。



 俺は神に与えられた二本の手を駆使して、四銃士の頭を撫でて回った。







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