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4 異世界転生したら魔法の国があったんだが

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二百二十一話 いざ魔法の国セレスティアへ 7 ゴーレムと部屋割り内紛様

 

 王都セレスティア駅から外に出ると冬の景色。



 街はかなりの積雪で大変なことになっているのだが、馬車や魔晶車が通る大きな道路にはあまり雪がない。


 ラビコに聞くと、魔晶石を利用した熱で雪を溶かすシステムを主要な道路に導入しているとか。あれか、ロードヒーティングか。


 ふと見ると、剣を持っているセレスティアの騎士の制服を来た人達が除雪をしている。さすがに力仕事が出来そうな屈強な体型の人。寒い中お疲れ様です。


 


 用意されていた豪華な馬車に乗り込み、セレスティアのお城ヘと向かう。


 街中はなんというか、ペルセフォスが四角いデザインが多かったのに対し、こちらは丸っこいデザインが多い。冬に積もる雪が建物に重くのしかかるので、なるべく雪が建物に積もりにくいデザインを採用しているんだと。



「さすがに杖とか持った人が多いな」


 馬車から外を見ていると、騎士というより魔法使いという格好の人が多くいる。当然のように長い杖を持っていて、ペルセフォスとは全然住人の雰囲気が違うな。


「なんか魔法の国って感じですね、ふふ。ついに私、海外二国目です。あなたといるとどんどん見識が広くなっていくようです」


 ロゼリィが俺の左に座りウキウキとしている。宿屋の娘さんだからなぁロゼリィ。なかなかどこかに出かけるとういうのは、仕事上と蒸気モンスターがいるという防犯上出来なかっただろうしな。


 というかこんなに自由に俺が連れ回していいのかね。



 馬車の一台目にサンディールン様とペルセフォス組。二台目に俺達ソルートン組という分乗具合。


 愛犬ベスが元気に雪の中走り回る気満々のところを、無理矢理カゴに詰め込んだのでちょっと不満そうにベスベス言っている。


「セレスティアにも支店があるので、私は何度か来たことがあります。でも仕事で来るのと、師匠と愛を深める旅行で来るのとでは全然景色の見え方が違いますわ……全てが輝いて見えます……」


 アンリーナが両手を頬に当てニヤニヤしているが、出発前にこれも仕事の一環とか言っていなかったか。




 馬車が駅前の商店街をしばらく進んだ後右に曲がると、大きな川が見えてきた。かなりの大きさで、川幅は二百メートルを超えていそう。そこに大きく立派な橋が架かっていて、そこを通ってお城に向かうようだ。


 先を見ると確かにお城っぽい巨大な建物があり、どうもこの大きな川に囲まれた場所にお城があるようだ。天然のお堀ってやつだろうか。


 

 川に架かる大きな橋の手前にはズラリと警備の騎士が並び、敬礼をしている。この先はお城の敷地になる為、一般人はこれ以上入れないそうだ。


 そのズラリと並ぶ人の中に何か変な物が見えた。それは簡単に言うと巨大な石のゴーレム。子供が描けるレベルの簡単な構造で出来ている石のゴーレムが、その警備の人達の後ろに何体も並んでいる。

 

 大きさはまちまちで、中には高さ五メートルは超える巨大な物もある。



「あれはなんだろう……」


 俺が不思議な顔でそのゴーレムの集団を見ていると、ラビコが気付いて解説をしてくれた。


「あれがこの魔法の国の特徴だね~。この国の魔法使いは、必ずあのゴーレムを使役しているんだよ~」


 使役、ようするに魔法でゴーレムを作り出し操っているってことだろうか。


「ゴーレムを使役かぁ、でもラビコはああいうのやらないよな」


 ラビコも同じ魔法使いなのだが、ゴーレムを呼び出しているのを見たことがない。


「あれはこの国独自の戦闘スタイルだね~。魔法使いってどうしても守りが弱いんだよ~詠唱の隙も大きいし。それを補うために、かつていたという伝説の魔法使いの戦闘スタイルを模したのがあれさ~。ゴーレムを呼び出し、自分の盾とするってことさ~」


 なるほど確かに魔法使いって防御力弱いよな、ゲームとかでも。それを補う戦闘スタイルか、納得。


「伝説ではその魔法使いは数百メートルを超える地龍を呼び出し、その頭に乗って戦っていたんだとさ~あっはは~」


 す、数百メートルの地龍……それはレベルが桁違いだな。


「私は飛べるからね~ああいうのはいらないかな~」


 ああ、そういやキャベツ状態のラビコは空を飛べるもんな。自在に飛び、敵の攻撃を避けつつ魔法を撃つ。ラビコが強い理由ってそれもあるんだろうな。





 馬車がお城に到着。


 ズラリと並ぶ杖を持ったセレスティアの騎士達。


「あれ、駅とか街中からお城に近づくとより魔法使いさんが多くなったぞ」


 騎士というか魔法使いしかいなくなった感じ。川を越えるまでは剣や槍のような武器を持った戦士みたいな騎士がいたのに、お城に来ると魔法使いオンリー。


「そうさ~この国は魔法の国なのさ~。魔法を使えることがステータスであり、魔法が使えるから偉くなれるのさ~」


 ラビコが答えてくれたが、そうかここ魔法の国だもんな。ペルセフォスだって、ハイラのように飛車輪に乗れる者が優遇されているしな。このセレスティアでは魔法を使える者が優遇されているってことか。


「逆に言うと、どんなに武器を扱える戦士として優秀でも尊敬はされないってことだね~。魔法があまり使えない者はお城には配備されず、遠くの外回り警備に回されるのさ~厳しいよね~あっはは~」


 そういえば駅で除雪作業をしていた騎士は剣を持っていたな。お城から離れた場所での警備ということは、あの人達はあまり魔法が使えないのか。俺が何か言う立場にはないし、お国の事情なんだろうが待遇の差を感じるな……。




 とりあえずお城の客室に案内してもらうことに。


 お城の中もなんとなく魔法のアイテムが多くある雰囲気。照明は全て魔晶石を利用したライト。石造りのお城の天井や柱にはちょっとした通風口があって、そこから温風が出ている。


 暖房か、これ。さすがに雪が当たり前に積もる地域だな、寒さ対策がバッチリされている。



「お部屋はこちらをお使い下さいねー。何かありましたら、すぐに警備の者にお伝え下さい」


 サンディールン様が笑顔で部屋を案内してくれた。こういうのはお付きの人の仕事じゃないのか。ラビコに聞くと、サーズ姫様がいるから、らしい。

 サンディールン様は本当にサーズ姫様のことが好きらしく、かなり手厚く色々やってくれるそうだ。


「あはぁ、じゃあサっちんー落ち着いたら私と遊びましょうねー」


 サンディールン様がニッコニコで手を振りながら、向こうに歩いていった。


「ああ、すまないなサンディールン。滞在中は楽しませてもらうよ」



 サーズ姫様が挨拶をすると、くるっとこちらを向き真面目な顔になる。ど、どうしたんだ。


「皆、ここまでお疲れだった。だがここで大きな問題が生じたようだ」


 荷物を持った俺達に視線を送り、サーズ姫様が案内された部屋の前の廊下で厳しい顔になる。


「どうしたんだい~変態~」


「これは私では対処しきれないような大きな問題だ……ああ、どうしたものか」


 ラビコが不思議そうな顔で聞くが、サーズ姫様が珍しく慌てている。サーズ姫様が対処出来ない問題ってなんだよ……怖いぞ。



「ここにいるのは七人。だが充てがわれた部屋はなんと三人部屋が三つなんだ……」


 三人部屋が三つ。えーとサーズ姫様はさすがに一人で利用として、残り二部屋を俺達で割り振る形か。


「ふ~ん。じゃあお姫様が一人、残りが庶民で割り振るかね~」


 ラビコも同じ考えか。というか当たり前だろうな。いや待てよ、てことは一部屋は俺と女性二人になるのか。サーズ姫様を差し置いて俺が一人部屋で、残りを女性三人、三人というわけにはいかないしなぁ……。


「!」

「!」

「!」


 ロゼリィとアンリーナとハイラが何かに気がついたようだ。三人が俺にダッシュで近づき身を寄せてくる。


「わ、私はあなたと一緒がいいです」


「ここはローズ=ハイドランジェの代表者である私と、宿代表の師匠が一緒になるのが当然かと」


「先生のお世話は私のお仕事です! 私がお着替えからお風呂、おトイレまでお世話しますぅ!」


 三人が同時に喋って聞き取れなかったが、ハイラが変なこと言ってなかったか。



「はは、皆落ち着け。決めつけは良くないぞ。私は王女という立場ではあるが、ここでは忘れてもらいたい。彼とは話したいことが山ほどあるんだ。話で足りないときは、この体を使って夜を……」


「変態性癖女はクマ抱えて一人で寝てろって、あっはは~」


 サーズ姫様とラビコが睨み合い開戦寸前。



 うーん、旅先の部屋割りで内紛が起きそうだ。大部屋が一番平和だな、俺達は。アプティはどこの部屋だろうが、朝起きたら俺の横にいるんだろうが。







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