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4 異世界転生したら魔法の国があったんだが

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二百二十話 いざ魔法の国セレスティアへ 6 到着と魔法の国のお姫様

 夕食も終え、外はすでに闇の世界。



 ペルセフォス最西端の駅、アルグルトを超え国境に迫る。ペルセフォスとセレスティアの国境は、南北に長く連なる山脈がその役目を果たしている。山を避けるように作られたレールをなぞり、魔晶列車は西へと進む。


「うむ、国境を超えたな。これより列車はセレスティアを進むことになる」


 サーズ姫様が窓の外に広がる夜景を見ながら教えてくれた。夜だが外は雪が積もっているので、街灯や月明かりに照らされそこそこ明るい。そこに広がる大海原、なかなか幻想的な風景だぞ。



「魔法の国かぁ」


 俺がちょっとわくわくしていると、ラビコがニヤニヤと笑いながら近づいてきた。


「もしかしてま~だ諦めていないのかい~? 社長に魔法は無理だって~あっはは~」


 ちぃ、異世界に来たからには魔法を使ってみたい。少年のような瞳と心で願ったっていいだろう。あー俺もラビコみたく自由に空飛んでみたいなぁ。



「そうか、君は魔法が使えないんだったな。しかしこの犬がいれば君は魔法が使えなくても問題ないように思えるが?」

 

 サーズ姫様が俺の愛犬ベスの頭を撫でる。まぁ、そうなんだが……それはそれ。俺はドカーンと派手に分かる魔法とか使ってみたいんです。


「出来たら俺自身の力で使えたらなーと……」


「ふむ、才能とはいつどこで目覚めるか分からないからな。諦めずに願い、行動を続けることが大事だと思うぞ。人によっては転んだ次の瞬間魔法が使えるようになったりとかな、面白いものさ」


 それは面白い開花だな。いつか俺にもそういう面白イベント……じゃなくて才能開花イベントが来ることを願おう。





 翌朝、ついにセレスティアに到着。


 事前にこの列車で行くと伝えていたようで、駅は出迎えの騎士達で溢れていた。鎧の色は朱色。セレスティアのカラーらしく、朱色の軍団がセレスティアとペルセフォスの国旗を持ち、駅のホームにずらりと並んでいる。


「うっは、さすがにすごい出迎えだな」


「そりゃそうさ~隣国の王族を迎えるわけだからね~ましてやセレスティアとペルセフォスは友好国だから待遇は手厚いよ~。おや~現国王、サンディールン=セレスティア様まで来ているよ~」


 おいマジか、ラビコ。


 俺、オレンジジャージなんだけどいいのか。自分の格好が不安になるが、すでに俺はサーズ姫様の前を平気でこの格好のままウロウロしていることに気がついた。


 まぁ、とりあえず上下に防寒着を着るからジャージは隠れるか。ラビコ、アプティの薄着組もしっかり寒さ対策で分厚いコートを着込んでいる。


 

 降りると地面には赤い絨毯が敷かれ、赤い甲冑の騎士達が綺麗に左右に整列している。


 少し離れた位置にいる音楽隊が軽快な音楽を鳴らし、周囲の人から歓声と拍手が起きると、先頭を歩いていたサーズ姫様が笑顔で手を上げ、歓声に応える。


「サっちーん、あはぁーいつ見ても凛々しいなー」


 どこかの僧侶のような背の高い帽子をかぶった女性が、サーズ姫様に駆け寄り抱きつく。長い髪が綺麗な美しい女性。とても優しい笑顔の人だなぁ。あの人がサンディールン様だろうか。


「おお、サンディールン。久しぶりだ、元気そうだな」


 サーズ姫様も笑顔で答える。なんだか仲が良さそうだ。



「あれれ、サっちんー? そちらのお方はもしかして、あの大魔法使いラビィコールさん?」


 サンディールン様がラビコに気付き、不思議そうに見てくる。さすがにラビコは有名なんだな。


「そうだ。今回は我が国が誇る魔法使い、ラビィコールにも同行してもらった。後ろにいるのが今年のウェントスリッターであるハイライン=ベクトール。そしてラビィコールの連れの者で、私の大事な友人達も今回お世話になる。すまないが我々と同行することを許してもらいたい」


 俺達完全に場違い君だな……。なんか申し訳ないぞ。ハイラが慌てて頭を下げ、ラビコは余裕たっぷりに微笑み挨拶をする。


「あはぁ、すごいすごいー私もラビィコールさんと仲良くなりたいー。こういう公式の場にはあまり出てこられないと噂のレアな方です。やっぱりサっちんは人望あるなー」


 出現度の低いレアキャラ扱いされてるぞ、ラビコ。確かにペルセフォスのレースにも最初行く気なかったらしいしな。



「いや、私の力ではなく彼の力かな。紹介しよう、ソルートンであの銀の妖狐を撃退した英雄様だ」


 サーズ姫様が俺を指し、とんでもない紹介を始めた。え、俺この場で紹介されるランクじゃないでしょう。うわ、一気に俺に視線が集中しだしたぞ……に、逃げてぇ。


 周囲の騎士達の誰だこいつ、から変わり、どよめきと尊敬の眼差しが俺に向けられ始める。


「え……!? 確かにその報告は聞きましたけど、銀の妖狐相手に犠牲者ゼロで撃退したっていう、あれなのサっちん?」


 サンディールン様が驚きを隠せない表情で俺を見てくる。俺の紹介なんて街の人です、でいいのに……。


「ああ、私も言っていて冗談に聞こえるが、本当の話だ。かのルナリアの勇者が総力戦に出るも触れることすら出来なかった銀の妖狐。それを拳で殴り黙らせ、話し合いで追い返した英雄だよ。私もその場にいたからな、目の前でその光景を見ていた」


 つってもあの時の銀の妖狐って戦う気なかったからな。そこに上手くつけ込んだだけ、なんだがね。


「殴って黙らせて話し合い……!? 彼等に話し合いが通用するの? サっちんそれってすごいことじゃ……。人間と蒸気モンスターとの長い戦いの歴史が変わるような出来事が起きたってこと……」


 周りの騎士達がどよめきが大きくなる。あれってそんな大きな出来事だったのかよ。ハイラがエッヘンというドヤ顔をしているのはなぜか。



「私の不勉強で存知あげなく失礼しました。セレスティア王国女王、サンディールン=セレスティアと申します。ぜひともそのお力を我が国にもご教授願いたいです」


 さっきまでトロンといった表情だったのが、キリッとした顔で俺に頭を下げてくるサンディールン様。ど、どうしたらいいんだこれ。



「すいませんね~サンディールン様。うちの社長は今、あまりの美しさに見惚れて頭が動いていないみたいで~。あとこの寒さのなかでは上手く口も回らないみたいですね~。とりあえず場所を変えての話にしてはどうかと~」


 俺が震えながら挙動不審にガクガクしていると、ラビコが助け舟を出してくれた。た、助かるラビコ。


「あら、お褒めいただき光栄です。ふふ、確かにこの寒さで長話は震えてしまいますね。お出迎えはお出迎え。それ以上のことは失礼に当たりますね。それでは改めまして、皆様セレスティア王国へようこそ! この度のご訪問が良き思い出になるよう願っています。明後日には国を上げたイベントが開かれますので、ぜひ楽しんでいってくださいね」


 サンディールン様がキリっとした顔で言う。あの甘えた感じはサーズ姫様にしかしないらしい。



 とりあえず俺達は魔法の国セレスティアに到着した。イベントってのがどういうものかは知らないが、すっごい楽しみだぞ。







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