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二話 お一人様……?


 異世界とやらに来たのはいいが、まさかの職業街の人宣告。



 そして付いて来た愛犬ベスは白銀犬士とかいう上位職。


「……つかさ、こういうときたそがれてる俺に話かけてくる人物って可愛い女の子がパターンじゃねーの?」


 いや犬いいよ? なんせうちの可愛い愛犬だし。俺に懐いているから言うこと聞いてくれる忠犬だし。


 俺の一歩後ろを鼻息荒くついてくるベスを見る。


「ベスッ」


 俺の視線に気付いたベスが元気よく吼える。うん、可愛い。やはりうちの犬は可愛いぞ。



 まぁなんでここに来たかはあとで考えるとして、とりあえず金が無いと何も出来ない。


 それは現実だろうが、異世界だろうが共通の事実。ましてやここの世界の通貨なんて持っていない。この体で稼ぐしかないのである。


「とりあえず今日泊まる宿代はありそうだな」


 先ほどベスが倒してくれたスライムっぽいやつの報酬を数えてみると、二百Gちょい。まぁ日本感覚だと二万円だ。

 

 なんか冒険者センターで初心者が一日一回だけ受けることが出来るデイリークエストとやらで、報酬が通常の十倍なんだとさ。


 冒険者センターを出て、街を眺めながら港方向へ。宿屋っぽいところの看板を見てみると、お一人様五十Gと書いてある。余裕だぜ。



「すいませーん。今日一泊お願いします。あ、それでここってペットって……」


 暗い顔で下を向いていた宿屋の受付のお姉さんに話しかけながらふと気付く。ベスって冒険者で職業白銀犬士なんだよな。ってことはペットじゃなくてお一人様になんのか?


「あ……か、可愛い犬ですね。あの、もしかしてこの子冒険者ですか?」


「……えーと……」


 思案。


 これ、犬も冒険者って言ったら二人分の料金取られるよな。


 今、俺の全財産は二百Gちょい。そこで支払うお金が五十と百では残金が大きく変わる。


 節約……いや……このお金はベスが命張って稼いでくれたお金だ。ベスに支払うお金は最優先……。ベスいないと、俺なんもできねーし。うん。


「はは、そうなんです。白銀犬士っていってなんか上位職らしく、俺の自慢のパートナーなんです」


 ええい、ここは二人分支払ってベスをいたわるべき。


「ええ、すごい……可愛いのに強いんですねー。じ、じゃあこの子用のご飯も用意してあげないとですね。調理さんにお犬さん用のも用意してくれるように言っておきます。では前金でいただきますが、お客様はお一人様なので、五十Gになります」


「……い、いいんですか! お一人様で!」


 俺が泣きながらお姉さんの手を握って聞き返すと、お姉さんが顔を紅くして答えた。


「は、はい……! うちは小さなペットは無料ですので……」


 よかった! この浮いたお金で明日ベスのいい装備を買い揃えてやろう。うん。


「あ、あの……手……」


「あ……あ! す、すいません。嬉しくてつい」


 俺が慌てて手を離す。ちょっと興奮して力込めすぎてしまったか。すいません。




「うめぇ」


 夕食つきで五十Gらしく、宿屋の食堂兼酒場で出されたパンとスープに焼いたお肉、サラダのセットはとてもおいしかった。


 異世界で一番心配していたご飯が俺の口に合ってほっとしている。一体何の肉なのか、何の野菜の葉っぱなのかは知らないがね。そこは深く考えないようにしよう。ベスも出された犬用ディナーに夢中に喰らい付いている。


 受付のお姉さんがサービスです! と出してくれた果物ジュースがこれまたうめぇ。


 ここ、常宿にしようかなぁ。





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― 新着の感想 ―
「ベスッ」ってベスの鳴き声か。 主人公が呼んでるのかと思った。 ちょっと紛らわしいな。
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