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百九十三話 勝利のアンリーナ様


「私には意味が分からないけど、たまにそういう変な単語を使うんだ~。どこぞの地方の方言なのかと思ったけど~当てはまるような地域はなかったし~」




 そ、それは……。


 マジか、俺以外にこの異世界に来ている人がいたってかい。


 でも銀の狐曰く、蒸気モンスターも異世界から来たっていうし、不思議なことではないか。


 たまたま俺が気付かないだけで、もしかしたら他にもいるのかね。俺だってなるべくこっちじゃ通用しない言葉は使わないようにしているし。



「分からんが……ちょっとその人に会ってみたくなってきたぞ。俺、ソルートン以前の記憶があやふやなんだ。もしかしたら何かヒントがもらえるかもしれん」


「あれれ~……ごめんごめん、余計なこと言っちゃったね~社長の心の傷をえぐる気はなかったんだ。大丈夫さ~社長の過去がどうだろうと私はずっと味方さ~」


 ラビコが申し訳無さそうに謝り、俺の手を握ってくる。



 騙すようで悪いが、そういうことにしておいてくれ。


 その子も事実は言っていないようだし、余計な混乱の元は言わなくていいだろう。






「はうっ! 師匠がお一人で出て行かれたからチャンスと思いましたのに……」



 背後から悲しげな声が聞こえ、ヒラッヒラの透けた服を着た背の低い女性が膝から崩れ落ちた。アンリーナか。


「まさかラビコ様と逢引だったとは……うう。ぐぅぅ、商談さえなければ私もマルタートまで行けましたのに……私も師匠と旅の思い出が欲しいですぅ」


 なんだか震えて泣き始めてしまったぞ。


 アンリーナには今回色々手助けしてもらってかなり感謝しているんだが、思うだけじゃだめだな行動で表さないと。



「今回この船に乗せてもらえてすごく感謝しているぞ、アンリーナ。何かお礼がしたいんだが、希望はあるかい?」


 俺の言葉に瞬時に反応したアンリーナがダッシュで目の前に来て、鼻息荒く自分の左手を指す。うわ、近くで見ると体のラインがバッチリ分かるし下着モロ見えじゃないか、これ。


「指輪です! 私も指輪が欲しいのです!」


 指輪? 俺が不思議な顔をしていると、アンリーナがラビコの左手薬指に光る指輪を指す。ああ、これか……。でも、これあげたら今の三銃士から四銃士に増えて面倒なことになるんじゃ。


 うーん。


「いや、悩む必要はないな。アンリーナには感謝しているし、好きな女性に指輪を贈って何が悪いのかってことだな。いいぞ、フラロランジュ島で売っていたら買って贈るよ」


「好き……! ふぉぉおおお! ほおお!」


 アンリーナが突如、満天の星が輝く夜空に向かって吠え出し、ラビコが顔に手を当て溜息をつく。


「はぁ……出たよ社長の変に素直に言っちゃうやつ~。好きって言葉にも種類があるんだから使い分けてくれないかな~……」


「早く……っ! 早くフラロランジュ! 当然二人っきりでデートですよね!?」


 えーと。フラロランジュ島に他に用事あったっけ。お土産の買い足しぐらいか? じゃあアンリーナと二人でもいいのかな。青い海に輝くロゼリィの水着も見たいが、アンリーナへの感謝を優先するか。


「分かった、アンリーナが欲しい指輪を選んでくれ」



 笑顔で勝利のポーズを決めるアンリーナ。喜んでくれるならそれにこしたことはない。








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