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百九十話 ラビコの気持ちと生い立ち様

 俺達は慌ててマルタートの駅に走り、個室のキップを買う。




 出るときシュレドが定食屋の戸締りをしっかりしてドアに『修行の旅に出ます』と張り紙をしていた。


 シュレドの見た目は背が高く筋肉がっしりマンなので、修行の旅と書かれると俺より強い奴に会いに行く的な言葉が格闘家のイメージと共に頭に再生される。


 この建物は持ち家らしく、王都に住むことが正式に決まったら売却処分を検討するらしい。


 まぁ、まとまった休みを取ればいつでも戻れるんだが、もうこの場所で食べ物屋をやる気はないんだと。


 王都のカフェがもしもダメだったら、ソルートンのジゼリィ=アゼリィに来て欲しいと思っている。お金も俺が払えるぞ。うはは。







 時刻通り列車が到着。



 列車の暖房の効いた個室に入り全員防寒着を脱ぎ捨てる。


 なんだよ……せっかく準備したのに使ったの二時間ぐらいじゃねーか……。


 そしてありがとう露出の多い世界。


 「あっはは~いや~防寒着っておっもいね~動きにくいし参ったよ~。やっぱ水着にロングコートが正義だな~」


 ええ、大正義だと思いますラビコさん。


 

 軽く全員がシュレドに自己紹介をして荷物の整理をしていたらもう二十三時過ぎ。


 眠いので俺は寝ることにする。


 ベッドは三個しかないので、俺は窓側のところに寝袋を広げる。


「あっれ~なんだいなんだい社長ってば~もう寝るのかい~? さっきまであんなに元気に私の体をチラチラ見ていたってのにさ~あっはは~」


 チラチラじゃない、堂々とだ。


 怒らないんならこれからも見るからな。



「旦那、お酒いきましょうぜ! 駅でラビコ姉さんが買ったのがドーンとこの通り!」


「……俺、十六歳。おやすみなさい……」


 飲めません。


 年齢が達してないし、まだお酒がおいしいと思える舌じゃないです。


 シュレドが俺の年齢聞いて驚いた顔をしている。二十歳ぐらいに見えたそうだが、残念未成年です……おやすみ。



 ロゼリィもベッドに寝て、ラビコとシュレドが宴会開始。なぜかアプティも参加したようだが、俺は寝る。













「ド~~ン!」




 突如俺の体に衝撃が。


 びっくりして目だけ開けると、ラビコが俺に勢いよく抱きついて来ていた。


 今何時だよ……ね、寝かせてくれ……。



「うひゃははは~……いいかいシュレド~わたしはね~生まれて初めてマジ告白したのさ! それをこの童貞社長が軽く流しやがってさ~~! ラビコさんフラれちゃったのさ~」


「ひっく……あーそれはダメっすね、ラビコ姉さんをふるとか人間の所業じゃないっす……あれーでも三人は旦那と結婚してるんじゃー? ういっく」


「あ~これは予約さ~ケルシィは知らないけど~ペルセフォスは何人奥さん持ってもいいからね~ま~普通はお金がすっごくかかるからしないんだけど~。しかしこの童貞君はお金を持っている! 私もある! 何の問題もないんだよね~あっはは~」


 え、ペルセフォスって一夫多妻認められてるの? なんて夢のある国なんだ……。寝たふりしながらもう少し聞いてみるか。



「このこの~社長ってばどんどん人を引きつけていくからラビコさん怖くなってきたぞ~さっさと体の関係作って一歩も二歩もリードしとかないと~新しく沸いてくる女になんか絶対負けたくないし~」


 寝袋にくるまれた俺に跨りラビコが前後に揺らす。


 うう、お尻がモロにくる……。


「そんなに旦那のことが好きなんすかーいやー羨ましいっす」


「うん、好きさ~。私って変に権力と実績と魔力もってるからさ~なかなか対等に話してくれる人いなくてさ~。でも社長は普通に友達になってくれて~普通に話してくれて~ダメなことしたら普通に怒ってくれて~心配してくれるんだよね~」


 俺ラビコのこと怒ったことあったっけ? 覚えが無いぞ。


「あーすんません、俺ラビコ姉さんにタメ口無理っすわーラビコ姉さん有名過ぎるからー」


「いいのいいの~。自分がどんな立場になろうが、普通に怒ってくれる人って貴重なんだよね~。私、孤児だったからさ~余計に憧れているのかもな~、お父さんってこういう感じなのかな~って」



 孤児、ラビコって……そうか、結構ハードな人生だったのか……。


 そういや十歳で勇者と旅に出たとか言っていたな。


 その歳でよく行けたなと思ったが、そうか反対する親がいなかったのか。




「ラビコ姉さんは世界の孤児達の憧れなんすから、頑張って欲しいっす。今でもソルートンの孤児院に資金提供しているって聞きますがー」


「うん、私はみんなの親にはなれないけど~せめていい環境で真っ直ぐ笑顔で育って欲しいからね~」


 なんだよ、ラビコ格好いいじゃないか……。


 それに比べたら俺なんか小物過ぎるな……やっぱり俺はラビコに側にいて欲しいぞ。まだまだいっぱいラビコから学ぶことがある。



「うへへ~あったか~社長に抱きついていると安心するんだ~うへへ~……おとうしゃ~ん……」


「あれ……姉さーん。あー寝ちゃった、じゃあ片付けて俺も寝ますわー。ほい布団」


 俺に抱きついたまま酔って寝たラビコにシュレドが布団をかけてくれた。


 さっさと宴会の後片付けをし、マントをお腹にかけてシュレドが床に転がった。


 なんだよ、すげーいい奴じゃねーかシュレド。さすがイケボ兄さんの弟だなぁ。






 ラビコが超安心しきった顔で俺に抱きつき寝息を立て始める。


 以前も酔ったラビコを部屋に運んだとき、俺の背中に抱きついて来ておとうしゃ~んって言っていたな。



 なんとかラビコを幸せにしてあげたいが、俺なんかがその役目を果たせるんだろうか。


 まだ十六の俺には自信がないかなぁ……。














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