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十九話 酔っぱらいとルナリアの勇者様


「今日の夕飯は湯豆腐ですー! みなさんいっぱい食べてくださいねーふふっ」



 俺が常宿にしている宿屋の一階の酒場兼食堂に看板娘、ロゼリィの元気な声が響く。



「あっはは~お酒がおいしい~ああ、大人って最高~」


 俺の隣でぐいぐいビールを飲むラビコ。聞くとちょうど二十歳なんだと。




「いい社長~この街は旅立ちの街と呼ばれていて~、多くの冒険者が憧れのこの街に訪れ~ここから冒険者としてのスタートをぉぉぅっぷ、きるのさ~」


 こいつ、絡み酒か。あ、俺の豆腐食ってんじゃねーよ!


「おいしい~豆腐。あ、生姜と鰹節はどばっと入れちゃって~」


 うーん、早く部屋に帰りたい。


「それはなぜかというと~かつてここからスタートしたぁ……はふはふ、かの有名なルナリアの勇者が~」


「あ、それなら私も知っていますよ。冒険者のみなさんの憧れですよねー」


 ある程度配膳の仕事を終え、ロゼリィが俺の隣に座った。


 最近俺の右にラビコ、左にロゼリィが当たり前のように座る。



「月の力を操る月下の勇者、格好いいですよねー」


「はん、あんなのただの女ったらしだねぇ!  はふはふ、お豆腐おいしい~。まぁ~そのルナリアの勇者が仲間を集め、旅立ったのがこの港町なんだよね~。みんなそれにあやかってここに集まるのぅ~うっふ」


 お酒のせいでいつも以上にラビコの滑舌が悪く、いまいち話が入ってこない。適当に聞き流しておくか。


 俺も生姜多めの鰹節どばっと……おぉ……うめぇ。


 レンタルアーマーの話は、今すぐには用意出来ないからしばし待て、とのこと。





「すこ~……」


「あ、ラビコ寝ちゃいましたね。寝顔はかわいい、ふふ」


 はあ、しゃあねぇ。


「俺、部屋まで運んで寝かせてきます」




 ラビコを抱え、階段を上がる。


 それに気付いた酒場の実は計算高いゴリラ戦士達に冷やかされたが、気にせずラビコの部屋へ。


 ラビコの部屋は何も無い。


 杖に小さめのカバンだけ。


 まぁ渡り鳥の冒険者なんて余計な物は持ち歩けないしな。ベッドに寝かせ布団をかぶせる。



「うぅん……水着……水着ぃ……」


 なんか言ってら。


「うひゃひゃ……すりゃあぁ!!」


 ベッドから離れようとした俺の背後で奇声が聞こえ、羽交い絞めにされる。


「うなっ……! こらラビコ! 寝ぼけてんのか!」



「背中……大きい背中ぁ……おとうしゃーん……」




「…………」




 俺はしばらくそのままで、ラビコが静かになるのを待った。おやすみ、ラビコ。










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