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百八十八話 吹雪とマルタートの料理人様


「おい起きろラビコ、マルタートに着くぞ」


「ふぇ~?」






 列車に乗って十時間以上、ついに目的のマルタートまでもう一駅となった。



 結局ラビコはあれから一度も起きずに、酔って寝ていたという。この辺の地域の情報色々聞こうと思っていたんだがなぁ。



 時刻は夜八時近く。


 すっかり日も落ち、あちこちに明かりが灯っているのが見える。


 雪が当たり一面積もっているせいで、街灯や家の明かりを反射して思った以上に明るい。場所的にかなり田舎らしく建物もまばら、人も少ない状況なのでかなり寂しい地域と感じてしまう。


 ベスに腹巻を装着。自分もランヤーデで買った防寒装備を準備する。




「外は真冬の気温っぽいな。マイナス何度とかそういう世界みたいだ。みんな、しっかり装備しろよ」


 ラビコが寝起きでぼーっとしながらモコモコの上着を着る。ロゼリィ、アプティも冬装備を着込み、準備万端。


 ああ、ついに露出ゼロの世界に突入。





 列車が止まり、ドアが開く。


「うわわっ……さ、寒っ! 吹雪いてるじゃんか!」


 駅に降り立つと、冷たい風が吹き荒れる吹雪。防寒着の隙間から身震いするような冷気が入り込んできて俺が悲鳴を上げる。


「ヤバイぞこれ。慣れてない俺達は簡単に体調崩しそうな気温だ……」


 女性陣も想像以上の寒さに顔をこわばらせ、身を寄せ合っている。


 リードをつけたベスはハフハフ俺の周りを走り回って超元気。こいつ寒さに強いんか。


「吹雪はやばいね~これ一気に体温持っていかれちゃうよ~早く宿にでも行かないと~」




 改札を出て駅舎に入る。


 数歩で外に出れる小さな建物。


 人もほとんどおらず、駅舎には小さな売店が一個あるだけ。薪ストーブが駅舎のど真ん中にあり、パチパチといい音を出している。


「おお、薪ストーブ暖かい……うう、ここから動きたくないぞ」


 全員で火の前に集まり吹雪から目をそらす。


 ベスがベスベス吼え、リードを強く引っ張り吹雪の中に行こうとする。やめろベス、ご主人様はひ弱なんだよ。





「ううううう、顔が冷たい」


 いつまでも薪ストーブの世界にいても宿は見つからないので、諦めて吹雪の世界に身を投じる。体は防寒着でなんとかなるが、顔だけはどうしようもならん。吐く息でまつげが凍りそうな勢い。


「ラ、ラビコ……ここ駅前だよな。ほとんど商店がないんだが」


「う~ん、ないね~。普通は宿が何件も並んで建っているもんなんだけど~これヤバイかもね~あっはは~」


 駅前ストリートは一面白い世界。


 建物もまばらに建っているだけで、人がいない。まぁ、吹雪だからしょうがないけど。


 商店も数十メートルに一軒ある程度で肝心の宿屋が見当たらん。



「さ、さ、さ寒いです……さささ……」


 ロゼリィの口が回っていない。寒さでやられたようだ。


「ちょっと楽しい……」


 アプティは以外にも平気そう。


 吹雪にワクワクと心を躍らせ、ピョンピョン跳ねている。地面の雪をすくって舐めたり、あえて転んでみたり。何してんだアプティ、子供か。


 わざと転んでみたアプティを起こして、服についた雪をほろっていると、ラビコが右のほうを指し笑顔になる。


「あれあれ~あれじゃないかな~目的の場所~。なんか小さな定食屋さんがあるよ~」


 ラビコが指す方向を見ると、小さな二階建ての建物に明かりが灯っていて、お店の看板がかかっている。


 フォークとスプーンのマーク、どう見ても食べ物屋さんだろう。


 駅から近いのか、これは助かった。イケメンボイス兄さんからもらった地図と照らし合わせるが、本当にここのようだ。






「こんばんわー……お店やってますかー……?」


 俺が先頭でお店に入る。



 ドアにつけられた鈴がチリーンと鳴り、来客を告げる。店内は狭く、カウンター席が五個にテーブル席が二個ぐらいの小さなお店のようだ。


 厨房の奥から音が聞こえ、背の高い男が不機嫌そうにヌーっと出てくる。


「んぁ? 客だぁ? バカかてめー、もう閉めるっての」


 長い髪を後ろで結び、上半身裸。お腹あたりにさらしを巻き、黒いズボン。そして背中に黒いマント。マント?


 カウンターには黒いシルクハットが置かれている。



 どういう格好の料理人だよ。











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