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百八十七話 マルタートへ向かう紳士様

「というわけでいろいろあったけど、これよりマルタートに行くぞ」





 宿に代金を支払い、荷物を持って駅へ向かう。



 だいたい魔晶列車で半日ほどのところにイケメンボイス兄さんの弟さんがいる目的のマルタートがあるらしい。ここのランヤーデより北に位置し、今時期は雪が積もっているとのことでしっかり防寒対策はしてある。


 冬用の靴にモコモコの上着、マフラーに耳あて、手袋を買い揃えたしな。


 ベスのは人間用あったか腹巻をそのままベスの腹に巻く予定。



「お~蒸気モンスターが降らせた特殊なやつじゃない、本物の雪が見れるぞ~」


 腕を突き上げ元気に歩くラビコと、俺が持てない分の荷物を持ってくれているアプティをじーっと見る。


 今はまだ二人共肌の露出が多く、少し動くだけで二人の立派な胸がフルフルと揺れる。


 もう少しでこのささやかな楽しみが見えなくなってしまうのか……俺は少し溜息を吐く。


 ロゼリィは基本露出は少なめなので、あまり見えない。


 大きさは多分一番なのだが。



「寒い地域に行ったらあなたの視線はどこに向くのかしら。ふふ」


 俺の左横を歩くロゼリィが優しく微笑む。ああ、皆にはバレているんだろうけど俺はもう気にしない。怒られるまでは見るぞ。




 朝になったら皆の様子がいつもの感じに戻っていて良かった。


 その辺の気持ちの切り替えは皆、大人ってことで助かります。








「えーと、大体半日だから……夜の八時ぐらいに着くのかな」


 ここから十二時間ぐらい、現在が朝の七時過ぎなので大体そのぐらいだろうか。またご飯をどうするか悩むな、どこか美味しいところがあるといいが。



「じゃあ行こうか~社長が奮発してくれて、個室を予約してくれたみたいだし~」


 列車の狭い椅子に十二時間は病み上がりにはキツイので、王都に行くときみたいに個室を借りた。


 王都のときよりは安く、千五百G。


 混雑する路線ではないらしく、当日に余裕で取れた。ラビコが意気揚々と魔晶列車に乗り込む。


 列車内の個室は質素。王都に行くときに借りたものとは全然違うか。さすがに寒いところに行く仕様で、温風が出てくる送風口がある。


 簡易ベッドと大き目のソファーにテーブル。窓際に木の椅子、以上。


 まぁ半日だし、設備に贅沢は言わんさ。


 問題はご飯だなぁ、途中の駅で降りて時間内に買えるところで昼買わないとなぁ。


 朝ご飯は乗り込む前に駅でフルーツとパンを買った。







 列車が出発し数時間、景色がだんだん白くなっていく。

 

 窓の向こうについに雪原が現れ、列車の送風口から温風が出始める。うん、室内はいつもの服でなんともないな。


「うわー綺麗です。絵葉書とか雑誌で見た景色を生で見れるなんて、嬉しいです」


 ロゼリィが窓に張り付き、嬉しそうに景色を眺めている。


 ラビコもお酒を飲みながら外を見ているが……いつのまにお酒買ったんだ。


 まぁお酒の国だしな、駅でも売っているんだろう。


 アプティは興味なし、で駅でポットごと買った紅茶をちびちび飲んでいる。



「さて時間的に次の駅で昼ご飯買わないとならないな。なにかあるといいが」


 酔っ払ったラビコに次の駅の特産がないか聞くが、酔っていて抱きついてくるばかり。全く情報は引き出せなかった。





 シーフィ駅に到着、俺はダッシュで駅構内の売店を目指す。


 さすがに列車の外は寒くジャージでは五分が限界の寒さ。


 売店では魚物がたくさん売っていて、干物やら塩漬けしたものとか。ふーむ、寒い地域だから保存が利くってことか。おお、雪で冷蔵された刺身も売っているぞ! これだ、これしかない。


 俺は慌ててお刺身セットを買い、駅弁として売っていた白米も買う。お店の人に醤油っぽいものはないか聞き、笑顔で持って来てくれたのでお金を払ってお刺身の入った容器にかけてもらう。


 まぁちょっとした漬け海鮮丼でもやろうかと。


 しかしお刺身が売っているとは驚いた。そうか、寒い地域で保存が利くうえ、降り積もった雪を袋に入れ保冷剤代わりにしているから販売出来るのか。



 列車に戻り、個室のテーブルで調理開始。


 単に簡易容器に冷めたご飯とお刺身分けるだけだけどね。ベスには醤油がかかっていないところを使って、少量作る。



「ほい、完成。簡単海鮮漬け丼」


 皆の前に置き、お箸も配る。飲み物は冷めた紅茶な、これしかないから我慢してくれ。


「うわぁ、美味しそうです……ソルートンのお祭りを思い出します。まさか異国でこれが味わえるとは思いませんでした」


 美味しそうにロゼリィが頬張る。魚の種類は知らん。なんかマグロっぽいのとか白身魚とか、とにかくいっぱい乗せた。貝類は買ってない。


「美味しいです、マスター……。この国に来て一番美味しいものになります……」


 アプティも無表情ながらご機嫌に食べている。


「あっはは~海鮮丼だ、これは美味しいね~お酒もすすむ~。社長がいれば旅のご飯の心配もなくて安心だわ~もう私は社長と一緒ならどこでも行くよ~あっはは~」


 お酒片手にラビコがご満悦。


 俺は旅の料理人じゃないぞ。





 昼ご飯が終わると、酔ったラビコが爆睡。


 ベッドの上に水着で寝始めた。


 俺が慌てて布団をかけるが、もうすぐ露出の多い服ともお別れか……少し手を止め、ラビコの水着に包まれた大きな胸を眺める。


 アプティとロゼリィに無言で見られたので、いつものジェントルマン俺に戻り、個室に置いてあったよく分からないポエムが書いてある本片手に窓の外を眺める作業に没頭する。












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