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百七十九話 異次元空間の主 3 魔王が造りし天頂世界様

「ほう、ネーブゼロと人間が共に立っているのは珍しいな。敵対関係ではないのか」



 魔王を自称する女性はニヤリと笑い、俺達を見てくる。




 ネーブゼロ? アプティを指しているのか? 


「アプティは俺の大切な仲間だ。敵対関係などない、俺達は信頼で繋がっている」


「ほう……ネーブゼロと人間が信頼? 面白いことを言う……ふむ、確かに狐はお前を守るように構えているな」


 女性がゆっくり地面に着地し、両手を腰に当てじっと俺を睨む。


 背が低くて見た目がかわいらしいから威圧的な態度を取られても大人を意識して背伸びした子供にしか見えないが、青い鎌の女性が横に付き従っている様子から相当の力をもっているのだろう。



 魔王エウディリーラを名乗る女性が、横に付き従う青い鎌を持つ女性にボソボソ耳打ちをしている。


「どうだ、ジェラハス。こんな感じだと格好いいか?」


「はっ、見た目に仕草、威圧的な言葉、放つオーラ、全てが魔王級です。完璧かと」


「そうか、くふふ……久しぶりの下界の者だ。たっぷりと恐怖を植えつけねばな」


 全部聞こえていたが……魔王は満足したように笑い、再び俺を威圧的に睨んでくる。




 逃げ場は無し。


 鎌を持ったジェラハスと呼ばれた女性の存在だけでもアプティが震えているのに、その上の魔王みたいなのからどうやって逃げるのか。


 そしてこの場から逃げたとして、この変な世界から元の世界にどうやったら戻れるのか。


 はっきり言って八方ふさがりだ。





「ここは我が造りし天頂世界。お前達が存在していい空間ではない。何用か、人間」


「……用は無い。ランヤーデの駅にいたら変な歪んだ物が浮かんでいたから、興味で近づいたらこの有様だ」


 そのまま伝える。


 つか、それしかないだろう。


「この期に及んでそのような嘘を……! どこの者だ、言え!」


 青い鎌を俺達に向け、ジェラハスと呼ばれる女性が怒りをあらわに睨んでくる。


 しかし背の低い魔王の女性がそれを制止する。


「待てジェラハス、嘘ではないようだぞ。こいつからは何の敵意も感じない。しかし興味深い話だ、歪んだ物が見えただと? 私は人間の駅になどチャンネルは開いていない。この天頂世界は私が認めた者以外の侵入は不可能である。イレギュラーで開くこともあるが、招かれざる者は世界に拒絶され、力の弱い人間など消滅するはずだ」


 し、消滅……? 強烈な目眩程度で済んだ俺はラッキーだったのか。


「力の強いネーブゼロに守られた……? いや、狐程度にそんな他者を守る能力は無いか。とするとお前自体が私の世界に混ざったというのか」


 何言ってるかさっぱりだ、くそ……どうにかして元の世界に帰らないと。




「その歪んだ空間に何を見た。答えよ、人間」


「歪んだ空間で見たもの……? そういえば見たことも無い紫の空の景色が見えたが……言われればここだな」


 歪んだ空間の先に紫の空が見えた。


 そしてそこの世界に繋がり、紛れ込んでしまったのだろうか。


「ほう……お前、この世界にチャンネルを繋げたな? 初めてだぞ人間がこの世界に侵入してきたのは。くふふ……そうか、その目……千里眼だな?」


 魔王の言葉を聞いた青い鎌の女性が構え、攻撃態勢を取る。


「……エウディリーラ様、この男は今すぐ消すべきかと。千里眼は世界のバランスを崩す力、あの龍と同じ行動を起こしかねません」


 千里眼、そういえばリーガルがそう言っていたか。


 ラビコが言うには王の眼……。


 あの龍? 悪いが俺には話がさっぱり理解出来ない。



「あの暴れ者とこの貧弱な人間が同じ行動を取るとは思えんがな、くふふ。しかし分からんか、強大な野心を抱けば同じ道もありえる。お前の本心、少し量らせてもらおう……ジェラハス」


 魔王が鎌の女性に目配せをする。



「承知いたしました、私はこの世界で人間が一番嫌いです。エウディリーラ様の完全で美しい世界に汚い足で踏み入れた報いを受けるがいい」



 女性の目が青く光り、輝く鎌から氷の塊が放たれた。








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