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百四十七話 ウェントスリッターへの道 14 ハイラとシューティングスター様


「これにも性格というものがあってな」




 サーズ姫様が飛車輪を指しハイラの頭を撫でる。



「このシューティングスターはその中でもなかなかに気難しい奴でな、あはは。誰の言うことも聞かずなかなか乗り手が決まらないで倉庫に保管されていたのだが、ある日この飛車輪が暴走してな。総出で押さえようとしたのだが、誰も捕らえられない速度で逃げ回って大変だったよ」


 車輪が逃げ出す……なんというファンタジー。


 ああ、ここ異世界だった。



「騎士学校に入り込み、学内を暴れ周り、一人の女学生をすくい上げ乗せて空へ飛び上がったんだ。シューティングスターは気を失った女学生を振り落とすことなく、真っ直ぐ飛んで今のレースの途中にあった巨木に突き刺さって止まったんだ。いやーあれは面白かったぞ」


 笑っているが、結構な事件じゃないか。



「その後シューティングスターは厳重に拘束され、一時期は暴走の可能性から処分も検討されたのだが、とある女学生が泣きながら大反対してな」


 ハイラが泣き止んだようで、静かになった。


「それがハイラ、ですか」


「そうだ。城の警備を単独で突破してきた女学生が必死に私に懇願してきてな。あの時の顔はいまだに覚えているよ。ハイラインは一日牢に入る罪にはなったが、私はその強い想いに心打たれてな……ハイラインとシューティングスターをセットで我がブランネルジュ隊に誘ったんだ」


 そんなことがあったのか。ハイラが恥ずかしそうに俺に顔を押し当てもぞもぞしている。



「特例でのブランネルジュ隊への採用、お城で暴れた前科のあるハイラインと飛車輪はそれはそれは色々な目で見られてな。その上、飛車輪を乗りこなせないハイラインは嫉妬を抱いていた者の格好の餌食になってしまって……いつかそれを跳ね除けるほどの実力を示してくれると信じていたのだが……」


 メラノスか。


 そりゃー自分より実力の劣るものが憧れの隊に入ったと分かったら、そういう行動取る奴もいるだろうな。



「すまないハイライン、私は君に何も助力出来なかった。だが君はついにその力を王都の人に見せ付けた。はは、まるで自分のことのように嬉しいよ」


 サーズ姫様が俺に抱きついているハイラごと抱擁してきた。


 や、役得か。


「そ、そそそんな……! 私、ずっとみなさんに迷惑ばっかりかけて……サーズ様にとてもよくしてもらっていたのに、何も返せないでいて……うううう」


 ハイラがまた泣き出してしまった。



「そして君だな。ハイラインを君に預けて正解だった。これほどの短期間で彼女の才能を開花させた君には、どれほどの感謝を述べればいいのだろうか」


「いや、俺は……」


 ハイラがぐいっと顔を近づけ、俺の顔にほっぺを押し付けてきた。



「何を謙遜しているんですか! 先生のおかげなんですよ、私が勝てたのは! ふふ、でもそういうところも……大好きです先生」



 ハイラの手が俺の後頭部を固定し、熱を帯びた顔で唇を重ねてきた。











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