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十四話 水着と二人の名前と借金様

 

 よくわからんキャベツ騒動から一夜が明けた。



「おはよ~ござぁいま~す……」


 キャベツの魔法使いさんが二階から酒場兼食堂に降りてくる。


「おはよ……!? ちょっ! その格好はマズイですって!」



「おおおおおお!!」


 その場に居合わせた男達から歓喜の声が上がる。


「え~? なに~?」


「魔法使いさん! それ……下着ですよ! 早く服を着て下さい!」


 俺の声に不思議そうな顔で首をかしげ、彼女は言い放った。


「下着~? これ水着だけど~。私、寝るときも水着なので~」


「マジか」


 それならいい……わけねーだろ! あーもう面倒だな!




 俺は箸を置き、階段を脱兎のごとく駆け上がり魔法使いさんをお姫様抱っこで持ち上げた。


「おおおおお~? これはこれは……これからとんでもなくエロ~いことが起きるのかな~?」


「いいから黙って下さい! 部屋はここですね!?」



 魔法使いさんを抱えたまま部屋に入り、昨日着ていたロングコートを羽織らせた。



「せめてこの格好にして下さい。ここは結構荒くれ者な男達が多いですから、ああいう格好はだめです!」


 お姉さんが毎日ちょっかい出されている状況だってのに、水着はあかんって。


「あはは~なんかお父さんみたい~。社長はお父さんだったんだ~」


 意味わかんねーっす。






 朝食、再開。


「このヨーグルトにかかっているオレンジジャムうめぇっす」


「ふふ、それは調理さんの手作りなんですよ? おいしいに決まっています」


 お姉さんがいい笑顔で答える。ほほう……あのイケメンボイス料理人、やるじゃないか。


 ベスもイケメンボイス料理が気に入ったようで、鼻息荒くがっついている。



「それはそうと……さっき下着姿の女性を無理矢理抱っこして部屋に連れ込んだらしいじゃないですか」


 ふむ、さっきの出来事を簡単に表現するとそうなるな。


 本人曰く水着、だが。



「ほぇ~そんな大胆な人がいたんですか~怖いですぅ」


「魔法使いさんは黙っていて下さい」


 ああ……またご飯時にトラブルが……。




「あの~……」


「だから魔法使いさんは黙って……」


 お姉さんの言葉の途中で魔法使いさんがすっくと立ち上がり、胸を指した。大きい……。


「さっきから魔法使いさん魔法使いさんって、私にはラビィコールって名前があるんで~」


「あ……す、すいません……お名前聞いていなかったですね」


 そういや俺、お姉さんの名前も知らないぞ。


「社長は私のことラビコ~って愛情こめて呼んでね~」


「あ、あ! ず、ずるいです! わ、私も名前で呼んで欲しいです! ロゼリィです!」


 お姉さんがチラチラ上目遣いで名乗った。あーでも二人共、年上だよね?


「はい、覚えました。ラビコさんに、ロゼリィさんですね。了解です」


「社長~……ラ・ビ・コ。さんとか嫌かな~」


 魔法使いさんが不満そうに俺に迫ってきた。ロングコートからチラと見える太ももがたまんないっす……。


「私も嫌です。さん、とか他人みたいで……」


 いや、敬称は必要なんじゃ……でも本人達が言っているからいいのか?


「じゃあ……ラビコにロゼリィ……ですね」


「は~い」

「はい……! 嬉しい……!」




 まぁ、いいか。名前は大事だ。



「それでな、ラビコ。俺、お前を雇えないからな。百Gしか無いって言ったろ」


「大丈夫~貸しにしておきますよ~っと。私も鬼じゃないし、一日一万Gずつ私に借金だね~あっはは~」



 全財産百Gの俺がどうやったら毎日一万Gを支払えるのか。そういうミラクルな式があったら教えてもらいたい。ぜひ、緊急で。





 


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