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十三話 キャベツの魔法使い様 3


「あ……ああ~…ぅぅん……」



「ん……?」




 さっきまで元気に焼き魚定食を食べていた魔法使いさんから、か細い声が漏れ出した。見ると肩をすぼめ、元気なくうつむいて震えている。


「ど、どうしたんですか! 具合でも……」


「あ、大丈夫~私こういう人なんで~」


 どういう人なんだよ。あれ? 杖に刺さっていたキャベツが小さくなっているぞ……みるみる小さくなって……完全に消えた……。


「え……ちょっ……なんかおかしいですよ! この人!」


 お姉さんが立ち上がって距離を取る。出来たら俺も距離を取りたい……が魔法使いさんが俺の右手の裾をがっちり掴んでいる。


「あははー……使いきっちゃいましたぁ……でも、もういいかなぁ~雇い主も決まったしぃ~」


「雇い主? なんですか、それ」


 お姉さんが首をかしげる。なんかいやな予感。


「あれ~? さっき言いましたよね~私はこの人の物って。社長に尽くすのは部下の勤めです~っと」



 さて、俺はもう一回センターで稼ぎを探してくるかな。


「社長~どこ行くんです~私もお供しますよ~っと」


 俺は社を興した覚えは無いが。そして誰かを雇う余裕も無い。


「えーと、落ち着いたのならここで解散しましょうか。俺はあなたを雇った覚えもないし、そんなお金がまず無いです。俺は頼まれたキャベツを買いに行った帰りに、あなたがどうしても欲しいと言うからキャベツを一個あげただけ。そしてキャベツを運んでくれたからお礼にご飯をおごっただけ」


 ちときつい言い方だが、これ以上この人には関わらないほうがいい気がビンビンと伝わってくる。


「だから~私にとってキャベツを貰うというのは、命を救われるのと同じ意味なので~」




 聞いてみると、どうもこの人は本当に魔法使いさんで、キャベツのエネルギーを魔力に換えるらしい。


 杖にキャベツを突き刺すと杖がキャベツを吸い取り、魔法使いさんの体が活性化し強大な魔法が撃てるようになるらしい。


 さっき出会ってから効果が切れるまでは一時間といったところか。


「ようするにあなたはキャベツ一個で一時間、魔法使いになれるってことですか?」


「あっはは~理解が早いな~。その通り~、なので今後ともよろしく~」


 いや、俺に雇うお金無いって。



「じゃあ私も社長が住んでるこの宿屋にお世話になるかな~。とりあえず前金で一万G~」


「!!!! い、いちまんG! すごい……あなた何者なんですか……」


 お姉さんが驚いている。いや、俺も驚いた……一万って……すげー金持ってるのな……。


 一万Gって日本感覚百万円だぞ。


「私は高レベル魔法使いなので~、上位クラスの魔法もお手の物~。この世界に数人いないかな~? なので一時間一万Gぐらいは余裕で稼げちゃうかな~あっはは~」


「!!」

「!!!」


 俺とお姉さんの動きが固まる。



 俺は空気を読まず勇気を振り絞り、言い放った。




「俺の全財産、百Gしかないぞ」












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