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百十五話 そうだ、王都へ行こう! 10 豪華個室魔晶列車と蒸気の飛龍様


 魔晶列車、それは魔力の込められた石、魔晶石をエネルギーに変え走る大陸間列車。



 風の抵抗が少ないつるっとした曲面の鉄で覆われたその姿は、なんとなく新幹線にイメージが近いか。


 男の俺はこういうものを見るとワクワクしてたまらないんだが、女性陣はそうでもないらしい。




「社長~ぼーっとしてないで早く乗るよ~飲み物とか重いもの持ってよ~」



 もう少し眺めていたかったが、しょうがない。


 時刻は駅の時計を見ると二十二時過ぎ。



 時計はこの異世界では街の各地の高い建物に大きいのが付いている。個人でも買えるが、結構高い。お金持ち……アンリーナの家には普通にありそうだな。


 乗ったらすぐ寝るか、さすがに疲れている。



 ラビコが取った個室は列車の最後尾にある最高級ルーム。


 窓が大きく取られ、後ろに離れていく外の景色が見られる。中も広く、五人が普通に横になって寝れる簡易ベッドが置いてある。


 こりゃーすごい、列車の廊下側のドアを閉めたら本当に個室だな。


 内装もかなり豪華。ラビコに聞くと、国の王族もよく利用する個室なんだとさ。そんなとこ、宿屋皿洗い君の俺の収入じゃ払えません。つーかすでに借金に組み込まれたけどさ。




「す、すごい! うちの宿の部屋より豪華です! なんか都会な感じで、ワクワクします!」


 ロゼリィがそわそわしながらあちこち見て回っている。列車側のドア開けるとすぐに専用トイレもある。男女別れていて、とても清潔に保たれている。


 アプティは駅で簡易保温ポットに入れてもらったお湯を大事そうに抱え、アップルティの茶葉を出し始めた。いや、もう寝る用意したほうが……。



 ハイラインさんは部屋の隅の椅子に座ってそわそわしている。


「こ、ここ……サーズ様がよくお泊りになるお部屋です。わ、私なんかが泊まっていいのか……ううう」


 そうなのか、確かにかなりの豪華さだしな。そういう身分の人が泊まるクラスだと思う。


 

 さてここならこの内なる獣を解放しても大丈夫だろう。ベスをカゴから出し、自由にしてあげる。


「ベスッ!」


 ベスが嬉しそうに走り回り、新参のハイラインさんの周りをぐるぐる回る。


「な、なんですか……! かわいいですけど……」


 ベスがハイラインさんを安全と判断し、飛びついていった。




 少し豪華な部屋を楽しみ、すぐに寝ることにした。



 俺はベッドをずらし、女性陣から少し離れて寝ることに。


「え~社長~一緒に寝ようよ~せっかくのチャンスなのに~」


 逃げ場のない列車内でのトラブルはごめんなんでな。




 皆疲れていたようで、ロゼリィ、ハイラインさんがすぐに寝息をスースー立て始めた。


 アプティは分からん。彼女は静かに無表情で行動するから、側に行って覗き込まないと分からない。


 ラビコはしばらく椅子に座って、後ろに流れていく外の景色を眺めていた。







 夜中、ふと目が覚め窓の外を見る。



 今は明かりが何も見えない場所を走っているな、草原だろうか。


「……俺は今後どうするんだろうな……。不安しか無いぞ。でもいい友人達に恵まれたし、そう悲観することもないか」


 窓から上を見上げると、綺麗な三日月。


 雲の切れ間から星達の輝きも見える。とても綺麗、ホラあれなんか大きい光で分かりやすい……。



「ん……? あの光り、二個見えるな。星じゃないのか? なにか近づいて来ているような……」


 雲が切れ、その二つの光の姿が月の光に照らされる。


 大きな牙に、大きな羽。


 全身硬そうな鱗に覆われ、鋭い鍵爪のついた手足。長い尻尾……。


 あれいわゆるドラゴンってやつじゃ……。遠くて大きさは分からんが、羽を広げたその大きさは普通に恐怖を感じるぐらい。



 口から吐く蒸気が月光に輝く。




「……蒸気モンスター! みんな起きろ! やばいぞこれ!」



 俺はみんなのベッドを揺らし、緊急事態を告げる。






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