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百十二話 そうだ、王都へ行こう! 7 俺がラビコの旦那様疑惑で鬼畜君様


「あ……! い、いました! 確保……確保ですー!」



 駅の窓口に向かって歩いていたら、なにやら白い鎧を着たポニーテールの女性がわたわたとすごい勢いで走ってきた。なんだ? 



 転ぶ……! ……いや転ばない。あ、転……ばない。


 その転ぶようで転ばない奇跡の走りに俺は目を奪われつつも、直前でコケて俺の腹にダイブ対策で身構える。


 



「うわーんラビコ様ー……一人でこんなところにいるの怖かったですぅ……! 早く王都に行きましょうよー」


 女性が泣きながらラビコに抱きついていった。


 ……よかった、ラビコに行ったか。



 かなり身なりのいい人。


 装飾の綺麗な剣を腰に差しているな。紋章が入っているが……どこかで見覚えが。


 この白を基調とした鎧にも、リーガルとお姫様で見覚えがある。


 ……王都の騎士さんか?




「ハイラじゃないか~どうしたんだい~? おーよしよし」


 ラビコが女性を優しく抱擁する。


「うう、よかったーちゃんと会えましたぁ。あの、サーズ様よりラビコ様が王都に帰るとの連絡が来たので絶対連れて来いとのご命令で……」


 やっぱり王都の人か。


 女性はラビコに撫でられて少し落ち着いたようだ。



 うーむ、そうか……この異世界には携帯端末とかで出来る連絡手段が無いもんな。


 電話すらない状況だし、今回は出会えたが、普段は行き違いとか多そうだな。


 そういうところは不便と感じる。ネット、携帯端末、この二個が無いのは痛いところだ。


 遠距離恋愛とか無理ゲーだな、この世界。




「あんの変態性癖女め~少しは信用しろっての~」


 ラビコが舌打ち。


 初めて会ったときも思ったが、ラビコとお姫様って仲良さそうだな。なんでも言い合えている関係か、ちと羨ましい。



「あの、ラビコ様……この方々は?」


「あっはは~私の連れだ。そして見ろ~この左手のリングを~」


 ラビコが左手薬指に輝くリングを女性に見せ付ける。あれから付け続けていたのかよ、しかも見せびらかすなって。


 余計なトラブルはごめんだぜ……。



「え!? ラビコ様……! お、おめでとうございます! ご結婚なされたんですか! あ、そちらの男性が……と、女性二人は……お子さんですか? 」


「わけねーだろ! そのリングは俺が感謝の意味で贈ったもので婚約の証ではないです! ちなみにこっちの二人も同じ物を持っています。こんな大きい子供がいきなり出来るか!」


 ロゼリィとアプティを見て、どうやったら俺の子供に見えるんだ。


 二人が笑顔と無表情で指輪をざっとかざす。


「ひっ……! こ、怖い人系なんですね? ラビコ様では飽き足らず、自分の子供にも手を出すとか鬼畜の所業……ダメですラビコ様! 騙されていますよ……! ここは私がこの鬼畜ごと繋がりを断ち切って……」


 女性が腰の剣に手をかけたところで、ラビコに頭を小突かれた。


「いっひぃ……痛いですラビコ様ー……」


「私の男に手を出すな~変態姫だったら殴っているところだ。男女の事情ってのは複雑なのさ~ハイラも早く大人になれよ~あっはは~」


 女性は小突かれた頭を抱えて座りこんでしまった。


 お前がリングを左手の薬指にするから話が複雑になってんだろ。



「ラビコ、あんまいじめんなよ。ホラ、大丈夫ですか?」


 俺はラビコをたしなめつつ女性に手を差し出す。


 女性は驚いた顔で体が固まった。なんだ?


「あ、ああ、男性が私に手を……ありえない……私なんかに……私なんかに……怖いけど、縛られて何されるか怖いけど、ラビコ様の旦那様とは仲良くしたほうが……!」



 それ心の言葉だろ、全部声に出てんぞ。



 縛るってなんだよ。











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