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十一話 キャベツの魔法使い様

 

「やあ出かけるなら、ついでにキャベツを買ってきてくれないかな」




 朝、冒険者センターに行こうとしたら、調理のお兄さんに呼び止められた。




 歩いてセンター行き掲示板とにらめっこするも、今日はいいお仕事は無いな。

 仕方ない。




 センターから出たら海賊帽をかぶったいかついおじさんに肩をつかまれた。


「おぅ、元気か兄ちゃん。金に困ったらいつでも港に来いよ! ハードでデンジャラスでビューティフォーな仕事が待っているぞ!」


「ひっ……あ、昨日はありがとうございました……お魚おいしかったです」


 海賊おじさんはガハハと笑い、向こうに行ってしまった。


 ええ……多分、二度と行かないっす。





 帰りに商店街に寄ってキャベツを十玉購入。


「なんか……俺最近、宿屋の食材仕入れ担当になってないか?」


 そしてキャベツ十玉、かさばるしクソ重い。本当に物を浮かせる魔法とかないのかよ……ここって異世界なんだろ?


「そういやこの世界に来て、魔法使いさんに会ってないな。つか魔法ってあるのかな」


 いや、魔法が無いと異世界とは言えないだろ。あるに決まっている。

 俺が常宿にしている宿屋の酒場には多くの冒険者が集まるが、叩き潰す系ハンマーや、打ち砕く系のハンマーが似合いそうな屈強な漢達ばかりで、いわゆる魔法使いさんを見たことがない。


「いや……それは俺の偏見で、あの屈強な漢が魔法使いさんかもしれんが、それはそれで夢が壊れる」


 魔法かぁ……使ってみたいなぁ。




「あ~そこの少年さ~そのキャベツもらってもいい~?」


 ちょっと高台の見晴らしのいいところでサボっていたら、杖を持ち、水着にお高そうなフード付きコートを着た女性に話かけられた。キャベツ?


「……?」


「は、早くぅ~……じゃないととんでもないことにぃ~」


 女性が圧高めの雰囲気でグイグイと迫ってくる。なんだ? 新手のナンパか?


「はぁ、一個ぐらいならいいですけど」


「早く~こっちに投げて~」


 なんなんだ……俺はキャベツを一個放り投げた。




「あはははははは!! きたぞきたぞ! これさえあれば私は天をも統べる力を得るのだ……!」


 女性は俺が放り投げたキャベツを杖の先端に刺し、受け止めた。


 杖に刺さったキャベツを高々と空へ掲げ、人が変わったように笑い出した。


 ……なんか怖いし、関わらないほうがいいな。


「じゃ、俺はこれで……」


「待て。君は実に運がいい、なにせこの私に興味を持たせたのだからな。どうだ私を雇ってみないか? 今なら格安で受けようじゃあないか」


 キャベツかぁ、宿の夕飯に使うのかな。俺はそのままが好きかなぁ、ソースとかマヨネーズかけて食うの。


 そういや醤油はあるんだから、他の調味料もこの世界にありそうだな。探してみよう。


「おい無視すんな。世界に名を馳せる魔法使いであるこの私が下から出ているんだぞ」


 しかしキャベツ重いなぁ、早く帰って調理さんに渡そう。


「ちょっ……おい待てって! ちっ……スゥ、せーのっお願い私を捨てないでー!」


 女性が大声で演技っぽく叫ぶ。ちょ……おい、それわざとやったろ。


 周りの人が俺達を見てザワつきだす。やばい、なんか別れ話がもつれた男と女に見られてるっぽい。そして俺が悪いような感じ。



「ま、待った! と、とりあえずお昼どうですか……お、おごります……」


 女性は目がギランと光り、俺の左手のキャベツ袋を持った。


「あっはは~少し持ってあげる~。大丈夫キャベツを持つのは慣れているから~。ご飯っご飯っ~おごりご飯~」


 女性は鼻歌を歌いながら歩き出した。



 く、多分絶対選択肢ミスった。こいつ関わらないほうがいい系の人だと思う……がもう遅いっぽい。





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