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百三話 ロゼリィの予約リングと追加二本様


 この宿屋も気付けば社員さんやアルバイトさんが増えた。




 まぁ施設増やしたから手が回らなくなってきたのもあるが、単純にかなり儲けが出ているから雇えるという好循環。特に厨房には人件費を惜しまず投入してもらっている。


 新人さんも入ってから時間もたち、仕事にも慣れてきてくれた。おかげでロゼリィも出ずっぱりでなくても大丈夫になっている。


 バイト五人組が優秀で驚くほどこの宿に馴染んでくれた。




 ロゼリィはシフトで休めると、必ず商店街の化粧品のチェックに行っている。


 こないだの怪しい水着も、そういうときに仕入れたそうな。


 さすがに怪しいものもいっぱい売っているしなぁ、知識無いと騙されても分からないよな。


 まぁうちにはラビコという優秀な魔法使いがいるんで、相談すればなんとかはなるが。




「とりあえず、そういう怪しいものには手を出さないようにな」


「はい、ご迷惑をおかけしました……。世の中甘くないってことですね」


 努力で手に入るものを楽して手に入れようとすると隙が出来るってことだな。俺も気をつけよう、異世界に俺の常識が通用しないこともあるしな。




 今日はロゼリィが一日休みなので買い物に付き合っている。


 俺はオレンジジャージなのだが、ロゼリィがすごいお出かけ仕様の化粧と服。少し派手なひらひらがついたスカートに胸元が大きめにあいたシャツ。珍しいなこういう胸元開ける服。



「ふふ、効果アリです」


 ロゼリィが俺の視線に気付き優しく微笑む。悪い、ぼーっと見てしまっていた。


 さすがに元がいいから化粧してかわいい服着るとロゼリィは歩いているだけで目立つな。かなりの男達がチラチラとロゼリィを見ている。



「行くか、化粧品見るんだろ?」


「いえ、それはいつも行っていますので、今日は行きません」


 そうか、さすがにいつも見ているみたいだしな。


「今日はぼーっとします。適当に歩いて、ご飯食べて、それだけです。ふふ」


「了解、ぼーっとしよっか」





 商店街から脇道にそれて、適当に歩く。


 結構知らないお店があるなぁ。マジックアイテム系のお店も多くあるんだな。


「昼はなにがいい?」


「そうですねーこの先においしいシチューを出しているお店があるんです。そこはどうでしょう」

 



 十分ほど歩くとそのお店があり入る。お昼前なのだが、かなり混雑。人気店なのか。席に座って何頼もうかキョロキョロしていたら、お店の人に声をかけられた。


「おーオレンジ兄ちゃんじゃないか、俺だよ俺」


 誰だ? ん、この人確か農園の丘で防御魔法かけてくれたごついのに可愛らしい杖の人だ。


「あ、丘のときは補助助かりました。あなたのお店だったんですか」


「そうそう、あんときは怖かったなー。あんたいなかったら逃げ出してたよ。そうだまだお礼していなかったな、いいぜ。二人分おごるぜ」



 ごつい兄さんは笑い、人気メニューだというビーフシチューを奢ってくれた。


 これが肉がほどけるように柔らかく、美味しい。人気なのも分かる味だ。


「おいしいですね、牛肉がとけるようです」


 ロゼリィも気に入ってくれたようだ。




「ごちそう様でした、すごく美味しかったです」


「はは、まだまだあんた等のとこのメニューには敵わないけどな。いつか追いついてみせるからな、覚悟しとけ」


 そう言ってごついマジカルボーイが笑う。あんた絶対冒険者よりこっちのほうが向いているぞ。




 お店を出て向かいに宝石やら装飾品のお店があったので入ってみた。


 値段は結構高め。高級店か、ここ。



「いらっしゃい。おや、あんたオレンジの人だね。街を守る為に走り回るアンタ、格好よかったよ」


 女性の綺麗な店員さん。


 服装が全然違うから分からなかったが、この人街を守るときに俺が計った戦闘レベル十の魔法剣の使い手さんだ。


「いえ、街を守りたい気持ちはみんな同じですよ」


 女性は俺に近寄り小声で話す。


「彼女さんにリングとかどうだい? 普段はぼったくるんだけど、アンタには借りがあるからね」


 リ、リング贈るって色んな意味含まれてしまいそだけど……まぁ、感謝の気持ちでロゼリィに買ってあげるか。


「でもそんなにお金ないっすよ、俺。ここ、結構高級っぽいですが……」


「あはは、大丈夫さ。アンタからはぼったくらないよ、好きなの選びな、がっつり値引いてやるよ」


 リングか、うーん。ロゼリィには派手なものよりシンプルなものが似合いそうだな。


「じゃあこのバラの模様が入ったシルバーのやつ、ロゼリィサイズ測ってくれ」


 ロゼリィが試しに何個かはめてみて、ちょうどいいのを選ぶ。




「ふふ、リングを買って貰っちゃいました。初めてです、こういうこと」


 あのお姉さん、すげぇ値引いてくれたな。普段どんな値段で売っているんだ……。


 まぁ、いいタイミングだったかな。


 ロゼリィにはお世話になっているし、こうやって物を贈って感謝を表すことも大事だ。



「なんというか、いつもありがとう。君に出会えたからこそ、今の俺がある。右も左も分からない俺とベスに光を示してくれた人がロゼリィ、君だ。今はこのリングで感謝の気持ちを送るよ。よかったらこれからも俺とベスの側にいて欲しい」


「そ、そんな……あなたと出会えたから私は毎日笑えています、あなたといるから、あなたが側にいてくれるから私はこうして……」


 ロゼリィがリングを左手の薬指にはめる。え、さっきサイズ測ったのそこだったの……。



「ふふ……私、予約されちゃいました。勝手にそう思うことにします、いいですよね?」


 ん、あれ? 予約? 


 まぁ……いいか。喜んでくれたのならそれでいいのかな。





 宿に帰るとロゼリィがリングをみんなに見せ、色んな視線が俺に向いたが、俺は無言で男湯に逃げ込んだ。


 アプティ、ラビコ連合が普通に男湯に侵入し、捕縛された俺は二人にもリングを買うと約束させられた虫の声が聞こえ出した月の綺麗な裸土下座な夜。












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