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15時20分 校内階段



 時刻はそろそろ夕時かそうでもないかといったところ。空には白雲が端正に並び、高い青空の濃度を際立たせている。そう悪くない天気だった。

 やはり午後の授業は終わってしまったようで、放課後になったばかりらしい楽しげで自由な雰囲気が学校全体に満ち満ちていた。今更ながら戻ってきた瀬灯は、急ぎ足を動かす。はたして彼女は教室にいるだろうか。いなかったらどうしようか。

「あーっ! 瀬灯ちゃん!」

 淡い色のリノリウムを蹴ってせっせと階段を登っていた瀬灯だが、途中ではたと足を止めた。止めざるを得なかったとも言う。なぜなら、探していた彼女が逆に自分に向かって飛び付いてきたから。

「どこ行ってたの? 瀬灯ちゃんいつもサボらないのにいきなりどっか行っちゃうからすごく心配したんだよ~!」

「…………砂泉……」

「うんっ。なぁに?」

「首絞まってる。苦しい……」

「あっそうだった。ごめんねー!」

 揺れる大きな黄色のリボン。彼女はまだまだ有り余る快活さを振り撒くように笑顔でくるりと立ち回り、瀬灯から一歩引いた。その振る舞いや立ち姿からは、彼女の正体など迷わずとも一人しか導き出せない。砂泉だった。

「砂泉、探してた」

「んえ? 探してた? 瀬灯ちゃんがわたしを?」

「うん……」

「おぉーっまさか仲良くなってくれる気になっちゃいましたか!? マジかっ。やったぞわたし!」

「……え、えーと……」

「あれ違う? それは大変失礼なことをいたしまして……!」

「ち、違わない……と思うけど……落ち着い、」

「うわマジだった! やったぞぉわたし……っ!」

「ちょっと落ち着いてほしいな、砂泉……」

 砂泉のあまりの喜び様に気圧されながら、おずおずといった様子で瀬灯がつぶやく。と、砂泉は言われた通り瞬時に静かになり、首をかしげて瀬灯を見た。

「わたしになんかご用でした?」

 切り替えの早いことだった。半ば感心、半ば呆れた瀬灯は、なるべく真剣に聞こえるようにと努めて慎重に言葉を紡ぐ。まずは確認が必要なのである。

「……ねぇ、砂泉って、私と仲……良いの?」

「ありゃ、わたしらって仲悪いの? わたし、うざかった?」

「そういうことじゃなくて……単純に、砂泉は私をどう思ってるかってこと」

「えー? うーん、ほら、わたしは瀬灯ちゃんラブラブ! だよ?」

「……からかってる?」

「んーん。本当本当」

「そう……じゃあ、聞いてほしいことがあるの」

 ためらいがちな口調で、瀬灯はそう紡いだ。



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