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転生斡旋所へようこそ  作者: 凪狐うどん
18/21

デートと尾行 その5

 ルシファーがフードコートにやっとの思いでたどり着いたのは、詩とベルフェゴールがガブリエルとケルヴィエルと別れた直後だった。


 まさか計画の首謀者であり共犯者でもあるリリシィに、尾行の邪魔をされるとは思わなかったがそれでも辿り着いた。なんなら遠くで見守りつつ昼食を、なんて思ったがどうやらそれは次の機会となりそうだと諦める。


「にしても写真は撮れなかったか……ふむ、仕方あるまい」


 嘆息しつつ気持ちを入れ換える。


「どうやらベル達は私のプランとは違う行動をしているようだし、ここからは気を引き締めていこう」


 パシンと両手で頬を叩き、集中力を取り戻す。朝と同じ小さな子供がルシファーを見て再び指を指していたが、またもや母親に「見ちゃいけません」と目を塞がれていた。


 そんな事を知る由もないルシファーは二人が行動し出すのを見てからその後をつける。カメラを片手に持って。





 ☆☆☆






 ガブリエルとケルヴィエルの二人から別れた詩達は、ルシファーが後をつけている事を聞きある作戦をたてた。


 簡単に言えばジェットコースターに乗りまくる、と言う至ってシンプルな作戦だ。


 だがこれは遊園地で、なおかつ絶叫系が苦手なルシファーには最も効き目がある。ルシファーが乗っていればそれだけで弱らせる事が出来るし、乗っていなくとも上から探しだす事が出来る。

 そして何より二人が遊園地を楽しめる、冴えたルシファー対抗作戦だった。


「ベル、今日はこんな事になってすみません」


 詩はベルフェゴールの手を繋ぎながら謝罪の言葉を口にする。ベルフェゴールはそんな詩に微笑みながら大丈夫だと言葉を返す。


 本日二回目のジェットコースター。二人は揃って顔を上げてそれを見る。


 ルシファー対抗作戦は、これからだ、と。





 ☆☆☆





 後をつけていたルシファーは、ただ苦い顔をしていた。


 ジェットコースター再来である。おそらく二人は単純に遊びたいだけなんだと心の中で言い聞かせつつも、お化け屋敷にてベルフェゴールがこちらを見て笑ったのを思い出し、もしかしたら私を探しているのではないかとゾッとする。

 実際はベルフェゴールが詩の言い間違いと、仮にそれを実際に行ったらと言うのを想像して笑っただけなのだが、残念ながらルシファーはそれを知る由もないのだ。


「よ、よし、行こう。これは私の恐怖心との戦いだ」


 震える体を言葉によって縛り付け、ジェットコースターを待つ列に一歩。また一歩と足を進める。


 早鐘のように鳴り響く心臓を、他の事を考えることで落ち着かせる。


 スタックはまたこの客が来たのか。気絶するなよ、と思いながらルシファーはジェットコースターの最後尾に誘導する。そこは不運にもジェットコースターの中で一番のスピードが出る位置だった。


 心臓は早鐘どころかもう爆発しそうである。なぜ私はジェットコースターでどこが一番安全か、スリルがあるかを調べてしまったんだと、その事に後悔が一点に集中する。


 出発。ああ、またこの感覚だ。

 ゆっくりと進みだすジェットコースターに、ゴクリと生唾を飲む。

 眼鏡を外しているからか、鮮明に見えないからこそ不安感が募っていく。そして、その時は訪れた。


「いやぁぁぁぁぁっ!?」


 急加速。ごぉぉぉっと言う風切り音にルシファーはどうする事も出来ず、ただ流されるだけ。一回目のような踏ん張りはもう効いていない。


 ジェットコースターの恐怖と焦らしの波状攻撃に、ルシファーは気絶しないようにただただ絶叫をあげるしか道はなかったのだった。





 ☆☆☆





 ジェットコースターから降りてルシファーは地面に足をつけると、そのまま四つん這いの姿になる。そしてルシファーの顔の前に人影が二つあった。


「……ルシファー」


 名前を呼ばれ、その舌っ足らずで幼く、聞き覚えのある声が上から降ってきて顔をあげる。


 そこには逆光になりながらでもはっきりと分かる程の冷たい笑顔で見下ろす詩と、本能でヤバいと思える怒りの表情で見下ろすベルフェゴールが居た。


 詩とベルフェゴールは意外と速く見つかったなと思う。


 特にベルフェゴールに至っては、折角の詩とのデートが仕組まれたものだと知って、ルシファーをジェットコースターに一回乗せた程度じゃ気が収まるわけがなかった。


「ねぇ、ルシファー?」


「どうした?」


 声のトーンをわざと低くしたベルフェゴールの声が、ルシファーに刺さる。笑みをひきつらせて震えた声で平静を装いつつも、残念ながらそれは無意味な努力だった。


「ルシファーはなんで、ここにいるの?」


 言えない。ここで言ったら色々と終わるから言えない。

 ルシファーはリリシィの有り様を思い出して言ってはならないと決意する。嘘でも遊びに来たと言えば良かったのだが、ジェットコースターの恐怖とはまた別種の恐怖がルシファーの頭の回転を妨げる。傲慢の名が泣いてる気もしなくはない。


「そう。言わないなら、罰するまで」


 次にルシファーが目を覚ましたのはリリシィと一緒に縄に縛られていた状態だった。






読んでくださってありがとうございます!

更にブクマが2件増えて喜んでる作者です


今話でデート編終わりです←


また少し空いてから更新しますので、またよろしくお願いしますね

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