弧酔の夢
果たしてコレは何だろう?
ただ・・・ジンだという事だけはわかる。
元来、ジンは混ぜて使う物だ。
いやいや、洋酒に一家言ある訳でもなく。ジンと言えばカクテルだろ?
そうそう文句いいなさんな。こちトラ多分、大雑把にお前さんと同じ程度の知識しかないんだ。はいはい、先生様は黙って・・・だいたいわかんだろ?
酔っ払った俺にはそれぐらいしか知識は無いんだ。脳みそ繋げてくれれば俺もあんたくらいの生活が出来るはず。そんないいもんじゃないって?じゃあ、代わるか?
まぁいいよ。どん底の人間の耳に届くのは何時だってメーデーだ。
わかんだろ?ヤバイ相手には先にヘルプを叫んだほうが勝ち。
多分、あんただってそうしてる。
弱音を吐くのは見っとも無い。
転じて、吐いたもん勝ちってね。
ああ、悪かった。そんな話じゃないんだ。
そんな状況で見た夢だ。俺にはコレくらいしか話のネタが無いんだ。
お話がお望みならもう少し我慢してチョンマゲ。
まぁいうなればどん底って生活だ。
親なんてポイッとほっちゃって・・・それが出来ないから余裕が有るのかも知れない。
そっから先は武士の情けで聞かないでくれや。
ええと何処まで話したか?
ああ、そうだったなジンだったな?
夢だったか現実だったか?
まぁ、色々あってとかく混ぜ物しなきゃならないって話だ。
世界はグルングルン廻ってる。
この世の果てって訳だ。
まぁ、とかく混ぜ物した訳だ。
バジルだったかガーリックだったか?
ああ、酒のアテじゃねぇのも百も承知。とかく混ぜた。
それが不思議と美味かったんだ。
わかんだろ?酔っ払いが適当に混ぜた物が偶々美味いのは稀に良くあること。
味覚がすっ飛んだ?
ああ、そうかもな。
ただ、それは忘れられない。
酔っ払いの定番の俺様レジェンドって訳なんだが・・・
「ああ、それっておいしいですよね。――――と――――とブレンドですよね?」
――――もう殺してくれ――――いやいや、そういう話じゃないか。
ま、飲み屋のねぇちゃんがその物ズバリを言い当てたんだよ。
当てんなよ!幻想でいいんだよ。その幻想をチビチビ舐めつつ悲惨な現実に頑張ってる叔父さんなんだからよ。
それで飲んでみたら、その物ズバリ!泣きたくなったね。
「飲み屋のおねぇちゃん自慢ですか・・・」
「そうじゃねぇんだよ」
そう言って崩れ落ちる自称おっさんを眺めつつ酒を舐める。
異論は許さないし、本人も犯行を粛々と自供・・・・
ま、あれだ。メンドクサイ酒に掴まった。
「何がどうだって言うんです?」
「夢だったんだよ」
えっ?と声が毀れる。確か夢だかどうだかわからないって・・・
「おねぇちゃんに出会うまでが夢・・・」
「ご愁傷様です」
つまりだ。つまりである。訳の判らないブレンド酒も夢なら、そのレシピも夢。
それを理解したおねぇちゃんも夢なら、いちびったおっさんの感情も夢。
ワザワザ恥ずかしい感情を暴露しなくてもいいんじゃないか。恥の書き捨てって言ってもティッシュじゃないんだ。ばら撒いた分、気持ちよくなるわけでもない。
「んでも、しょうがないでしょ?なんだってワザワザそんな話を」
「解ってくれとは言わない!」
「ま、でも、望みどおりだろ?否定した瞬間全部消えてくれたんだから、逆によかったんじゃ」
「解れ!」
命令形ですか?断固拒否します。実は等身大で理解してるけど、そいつはゴミ箱にポイッと捨てた。
「のむぞ!」
「やだよ!」
「いや、飲み代はこっちで持つから・・・」
「断る!」
「 あ、ホッケでも喰おう。おねぇさーんホッケ一つ・・・」
「じゃ、私はコレで」
ここで目が覚めた。
最悪の目覚めである。