商標警察
人類は言葉を失った。
驚きの比喩表現や失語症ではない。
文字通り正確無比に言葉を失ったのだ。
始まりはオオサカからだった。
とある事業者が商標登録を盾にヤマガタの事業者を訴えた。
ヤマガタの事業者は先行使用の権利を持っていたが、
敢えて行使せず報復として商標登録された名称の一部を
新たに商標登録することで対抗した。
それを受けてオオサカの事業者は更に新たな商標登録を行った。
人類が発することが可能な「語音」を全て商標登録し、
商標警察なるロボットによる監視システムを作動させた。
これには多くの反発があったものの、
既に全ての語音が商標登録されているため、
抗議の声を挙げた途端に商標警察がやってきて須らく逮捕拘留していく。
商標登録は絶対だ。声、文字、言語の全ては監視される。
貨幣に書かれた金額すら使用することができないため、
その価値を失った。
唯一使用が許されるのはオオサカの事業者のみ。
暴動が起きるのは当然の理だった。
押し寄せる人類とオオサカの事業者を守る商標警察の抗争は激化。
人類は数を頼りに押し切り、オオサカの事業者は遂に落命したが、
自己複製能力をも備える商標警察は、主を失ってなお人類を圧倒した。
やがて人類は商標警察に降伏。
降伏文書の調印は無く、無言で無地の旗を振るのみであった。
あとがきに代わる利用規約からの抜粋
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