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出身は九州の熊本だ。
地元の高校を出て、東京に出たい一心で今の大学に入った。
正直言って、福祉に興味があったわけじゃない。
経済的に浪人は出来ないから、
受かった学校に行くしかなくて、
滑り止めの滑り止めに、入学したに過ぎない。
とはいえ、入学後に大好きな婆ちゃんが寝たきりになったりがあって、
今では介護の資格を取るのもいいかなあと思い始めている。
根っからの勤勉家ってわけではないが、
勉強は嫌いでもない。
情報処理の専門学校に通う同い年の里美とは、
合コンで出会った。
その日のうちにホテルに行って、
やることはやったから、それまでの女かと思ったら、
なんとなくうまがあうというか、もう一年になる。
頭の出来はイマイチだけど、顔は可愛い。
甘えん坊で我がままだけど、根は優しい。
一緒にいると癒される、まあ、そんな感じだ。
授業にバイト、ここ数か月はボランティアに出る回数も増えて、
驚異的な忙しさだった。
家に帰って爆睡するばかりの日々に、
里美はぶつぶつ文句を言いながらも、
よく洗濯や掃除をしに来てくれていた。
昨日は久しぶりにバイトが休みだったから、
映画を観て、居酒屋で食事をしながら軽く飲んで、
ふたりで俺のアパートに帰ってきた。
それからは良く覚えていないが、たぶん何回戦かやって、
疲れて寝てしまったんだと思う。
里美とは身体の相性もバッチリだから、
こんな事はよくあることだ。
香田女史がやってきたのは、そんな朝だから、
いつものように余韻を楽しみたかった里美が
怒るのも無理はない。
と思って電話に出たが、どうやら違うらしい。
今度はうちに中野がやって来たという。
「何?このキモ男」
って、おいおい、本人を前にそれははまずいだろう。
まったく正直だなあ。
俺の困った顔を見て、香田女史が小首を傾げた。
「中野君が来たみたいです」
「えっ?」
いつも能面のように表情の乏しい香田女史の
顔色が変わった。
ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございます。
主人公(視線)が変わりながら、進行していきますが、
読みにくくはないでしょうか?
この先、あと3人ぐらいの登場があります。
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