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邪悪なる白き勇者  作者: ゼルマン れる
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第七話 二つの名前

第七話 二つの名前


 俺がプローヴァの上に手をかざすと、プローヴァが仄かに輝きだした。その光は手を伝い、徐々に全身へと伝わっていく。なんとも不思議な感覚だけど、たぶん魔力で干渉を受けているんだろうな。リターニャやセバスさんに干渉されたときはわからなかったが、今はこの感覚がそうなんだとわかった。

 呑気に考え事をしていると、突然全身から強い光放たれた。それと同時に身体の中からなにかが出てくる感覚に俺は思わず呻き声を漏らした。


「ソーマ、大丈夫?それは貴方の中から魔力が溢れ出してるだけだから問題ないわ…それにしてもなんて魔力なの…」


 ソーマから放たれる光に眼を細目ながらリターニャは呟いた。

 その後ろでは、カーメルさんやセバスさんも口々になにかを話していた。


「そんな…これほどまでの…」

「これほどとは…まさかソーマ様は…いや、しかし…」


 セバスさんは何かぶつぶつと言ってるみたいだけど、俺にはそれをよく聞くほどの余裕はなかった。

 魔力が自分から出てくる感覚がものすごく気持ち悪く苦しかった。今にも膝から崩れ落ちそうになるのを必死にこらえている状態だ。

 そんなとき、リターニャが声をかけてきた。


「掌に光が集まりきるまで頑張って!」


 掌に集まる?よく見ると掌の上に光の塊ができていた。光の流れを見るとどうやら俺の身体から流れてきているらしい。光が流れていくたびに身体から放たれる光がおさまっていく。

 あと少しで集まりきりそうだけど、それまで耐えられるかな俺…正直すでに吐きそうなんですが…

 10秒くらいたっただろうか。身体から放たれていた光がおさまり、掌の上にはリターニャに見せてもらったセルティフカートと同じ大きさの白い長方形ができていた。ようやく終わりか、そう安堵したのも束の間、次の瞬間には身体からさっきとは違う紫の…そう、リターニャと同じ色の光が全身から放たれた。


「いったいなに!?」


 リターニャが何が起こったのかと叫んだ。どうやら、これは不足な事態らしい。先程の魔力が内側から溢れだす感覚に加え、自分の中で『何かが争っている』感じがある。そのせいか、俺の体力がどんどん削られていくのがわかった。更に体力が削られるほど、紫の光は多く放たれていった。

 もう限界だ。そう思ったとき、紫の光は白い長方形へと集まり、混じりあう。そして白と紫が混ざりあった長方形が二つに別れ強い光を放った。俺は目の前で強い光をくらった。そのせいで目が眩んでよく見えないが、どうやら光は徐々におさまっているようだ。

 いくらかの時間が経ち、少しずつ視力が回復してきた。まだ少しぼやける目でプローヴァの上にかざした掌をみると、そこには2枚のセルティフカートが乗っていた。


「なんとか、成功したのか?」

「本来なら1枚しかできないものが2枚もあることを除けばかねがね、ね…って、大丈夫?」


 なんとか終わったことに安心して気が抜けたのか、

方膝を地面につく格好に崩れてしまった。


「ほら、掴まって」


 駆け寄ってきたリターニャの肩を貸りて立ち上がろうとしたが、うまく足に力が入らずリターニャの悲鳴と共に押し倒すように倒れこんでしまった。

 倒れこんだ先はどうやらリターニャの胸だったらしく女性特有の甘い香りと仄かに柔らかい感触が顔を包んだ。顔を埋めたまま、胸あんまり柔らかくないなぁなどと考えていると、突然リターニャがプルプルと震え始めた。どうしたのかと胸に埋めた状態の顔を上へと向けると、そこには顔を真っ赤に染めながら涙目で睨み付けてくるリターニャの顔があった。

 ちなみにこの時の顔が不覚にも可愛いと思ってしまったのはここだけの秘密である。


「…あんまり柔らかくなくて悪かったわね…」


 どうやら、心の声が口から漏れていたらしい。


「ソーマのバカ!変態!」


 リターニャが叫ぶと同時に身体に激しい衝撃がはしり、壁へと吹き飛ばされた。このままの勢いだと壁にぶつかってミンチじゃね?とプローヴァを使用した疲れからかあまりまわらない頭で考えていた。

 もう壁へとぶつかるかというときに、壁と俺の間に何かが割り込み、さっきまでのスピードが嘘のように優しく抱きとめられた。

 首だけ動かして後ろを見てみると、扉の近くにいたはずのセバスさんがそこにいた。…ここまで扉から4~5mあるけど一瞬でどうやったんだ?まぁ、魔法のある世界だから瞬間移動とかがあるのかもしれないけど。


「ご無事でしょうか?ソーマ様」

「まぁ、なんとか大丈夫です。ありがとうございます」

「しかしソーマ様。御嬢様にあまり胸のことばかり言わないであげてください。御嬢様は年頃なのですから。…御嬢様もソーマ様はわざとしたわけでは…」

「でも、ソーマは変態で胸のことばかり!」


 カーメルに起こされながらいまだ涙目のリターニャは頬を膨らませて抗議してきた。俺そんなに胸ばかりの変態じゃないぞ!


「それはソーマ様も反省なさっています」


 そういうとセバスさんは俺にアイコンタクトを飛ばしてきた。これは反省してなくても反省したっていえって合図だな。セバスさん真顔だからわかりづらいけどたぶんそういうことだと思う。


「は、反省してるよ。ごめんなさい、リターニャ」


俺はセバスさんに支えられながらも軽く頭を下げた。


「ソーマ様もこう言っておられることですし…」「…わかったわよ」


 あまり納得いっていないのか、よりいっそう頬を膨らませた。


「はぁ…まぁいいわ。ソーマはどうせ変態だものね」


 おいこら!俺は変態じゃないぞ!他人より少しばかり大きなお胸様が好きなだけだぞ!


「それよりも、2枚のセルティフカートには何がかかれているのかしらね。1枚は大体予想はつくけど2枚目は全くの未知数だわ」


 そういいながら俺が吹き飛んだときに落とした2枚のセルティフカートを拾い一枚ずつみた。

 1枚目をみたリターニャの反応は薄く、首をかしげながら「わからないわねぇ」とボソッといっただけだった。しかし、2枚目をみた反応は全く違っていた。驚愕の表情を浮かべてカードを見つめたまま固まっていた。


「リターニャ様?」


 どうしたのかと後ろに控えていたカーメルさんがリターニャに呼び掛けるとすっと2枚目のカードをカーメルさんに渡した。それを恭しく両手で受け取り、カードをみたカーメルさんの表情はリターニャと同じく驚愕に彩られた。

 ずっと表情を崩さなかったクールビューティーのカーメルさんの驚く顔がみれて少し得した気分になっていると、カーメルさんがこっちに歩いてきた。


「セバスさん。これを」


 カーメルさんがセバスさんにカードを差し出すと、片腕で俺を支えながらもう片方の手でそれを受け取った。


「!?…なるほど…やはりそうでしたか…しかし本当にそうだとは…」


 セバスさんは他の二人と同じように驚きながらも、どこか納得したような表情を浮かべた。


「あの~、なんて書いてあるんですか?」


 皆が驚いていて、いったい何が書いてあるのか気になってカードを覗いてみたがやはり読めなかったので尋ねてみた。するともう一枚のカードを持っていたリターニャがこちらに向かいながら答えてくれた。


「こっちのカードには『ウニベロソ・パラレーロ・ソーマ』これは今まで聞いたことのない苗字だから何を意味してるかはわからないわ。で、問題はセバスの持っている2枚目の方。そこには『マーレ・ビアンコ・エロエ・ソーマ』て書いてあるの」

「『マーレ』てリターニャの名前にもあったよな」

「そうね。『マーレ』には邪悪や魔って意味があって、代々私達マーレ族にしかつかない苗字なの。そして、マーレのあとに続く言葉は今までなら、魔王女は『邪悪なる王女』で『マーレ・プリンチペッサ』、魔王は『邪悪なる王』で『マーレ・レ』なのよ。で、私の婿で魔王たるソーマは苗字が『マーレ・レ』になるはずだったのに実際は2つの苗字を持ち、2つもつだけでも異常なことなのに、片方の苗字は初めて聞いた苗字で意味もわからず、もう片方にはマーレのあとに普通ならあり得ない言葉が続いている…貴方はどれだけ問題を持ち込めば気がすむのよ…」


 そういうと、リターニャはため息をつきながらひどく疲れた顔をしていた。ちなみに私の休暇が~とかバカンスが~とか帰りたいとか色々いっていたが聞かなかったことにした。


「それで、あり得ない言葉ってどういう意味なんだ?」


 リターニャに向かって質問したが、リターニャは自分の世界に入ってしまったのかぶつぶついっていて全く聞いていなかった。その代わりセバスさんが答えてくれた。


「…それは、私達魔族と人間の長い戦争の歴史において常に人間の先頭にたって戦う唯一魔王をも討ち取る力を持ちゆる人間…人間は彼らのことを『勇者』と呼び、その中でも純粋な白き魔力を放つもっとも強い勇者…『ビアンコ・エロエ』…人間は彼らのことを『白き勇者』と呼びます」

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