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邪悪なる白き勇者  作者: ゼルマン れる
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第六話 プローヴァとセルティフカート

第六話 プローヴァとセルティフカート


 俺は今、リターニャの部屋から『プローヴァ』ってものがある部屋へ移動している。なんでも天から授けられた名前をセルティフカートに刻み込み産み出すモノなのだとか。イマイチよくわからないが詳しい説明はプローヴァのある部屋に着いてからしてくれるらしい。

 そうそう、セバスさんと会話しながら移動してるんだけど、今俺が身に付けてる服や首飾りの魔道具の能力を教えてもらった。てか、教えてもらうまで気づかなかったんだけど、首飾りの能力のお陰で普通にセバスさん達と話せているらしい。なんでも、この銀色の鎖に黒の真珠のような玉がついた首飾りはセバスさん達の言葉を黒い玉に封じてあるリターニャの魔力を介し、俺に直接わかる言葉に変換して伝えているらしい。また、俺が話したときはさっきとは反対の変換で周りに発信しているらしい。要は俺が初めてセバスさんとリターニャに会ったときに魔力で直接話しかけてきたときの応用なのだとセバスさんが説明してくれた。ちなみに、説明してくれるまで普通に話せていることに疑問を持たなかったことを話したら、あまり表情の変わらないセバスさんが苦笑いしてたような気がするけど気のせいだよね?リターニャに至っては前でため息をついてたけど……

 あと、俺の身に付けてる黒のシャツとズボンは魔力の認識阻害の能力があるのだとか。この世界の生き物は『白き魔力』と『黒き魔力』で構成されているらしく、魔族や魔物は黒き魔力、人間や動植物(魔物化したものは除く)は白き魔力で構成される。だから、魔力による感知によってどの魔力によって構成されているかがばれてしまうのだとか。そのため、俺が人間だということがばれないように認識阻害の服をくれたらしい。

 そんな話をしていると、ある扉の前にネーヤさんと同じメイド服を着た女性が立っているのが見えた。


「カーメル、待たせたわね」

「いえ、お気になさらずに」


 あまり抑揚のない声で銀色の短髪の女性が答えた。


「ソーマ、彼女はメイド長のカーメルよ」

「メイド長のカメリエーラ・カーメルです。カーメルとお呼びください。ソーマ様」


 そう言うとカーメルさんは深々とお辞儀をした。


「あ、こちらこそよろしくお願いします、カーメルさん」

「…ソーマ様、私のようなものにそのような言葉使いをなさいますのはお辞めください」


 カーメルさんは無表情だがつり目でかっこいい系美女だった。身体付きはスレンダーで俺より背が高かった。あっ、スレンダーっていっても、リターニャよりは遥かにお胸様があるよ?俺の見立てによるとCからDはあるとおもう。


「…ッッッ!」


 突然、足に激痛が走ったので足元に視線を落とすと、リターニャがヒールの踵で俺の足をグリグリと踏んでいた。


「リ、リターニャさん!?マジで痛いから!ヒールって踵で思いっきり踏んだら骨が折れたりするんだよ!?」

「ソーマが私に対して失礼なことを考えてないるからよ?反省しなさい!」


 ナ、ナゼバレタンダ!?俺がお胸様のことを考えたら反応する探知機でも持っているのか?てか、ロングスカートで見えなかったが、ヒールを履いてその身長ってリターニャさん160㎝も身体ないんじゃ…


「…ソーマ?」


 ヒールとリターニャの頭を交互に見ていると、何かを読み取ったのか更に踵をグリグリと押さえつけてきた。なんとか足をどけようと抵抗するがリターニャはびくともしない。


「リターニャ様。『人間』であるソーマ様にそこまでなさいますのはどうかと…」

「仮にもマーレ・ナシタで私に召喚されたモノよ?これくらいでどうこうならないわよ」


 確かに痛いのは痛いけど、どうこうなるほど痛くはないよ?でもね?にこやかに笑いながらヒールで足をグリグリするのはどうかと思うよ?

 そんなこんなでリターニャと格闘していると、後ろからセバスさんが声をかけてきた。


「御嬢様。ソーマ様とじゃれ合うのもよろしいですが、時間が余りありませんので…」

「確かにそうね。ソーマ、私の後についてきて」


 そう言うとリターニャは最後に思いっきり俺の足を踏みつけてから扉を開け中に入った。踏まれたときは、平然とした顔をしていたが、正直かなり痛かった。ちなみに部屋に戻ってから靴を脱いでみると内出血で足が紫になっていたことを明記しておく。

 リターニャのあとに続いて扉をくぐると、部屋の中は今まで歩いてきた廊下とは違い装飾がなかった。石の壁がむき出しになっている、扉から奥にへと細長い部屋だった。そんな細長い部屋の奥には小さな台がある。小さな台といっても俺の腰ぐらいまでの大きさがあるので大体80㎝位の高さだ。

 台にはなにやら模様のようなものが彫られており、上には大きめの漬け物石みたいなものがのっていた。リターニャは台の前まで歩くとこちらを振り返った。


「これがプローヴァよ。私達に名前やセルティフカートを与えてくれるものよ」


 どうやらこの漬け物石がプローヴァらしい。


「その名前やセルティフカートを与えるって言うのがイマイチ理解できないんだけ」

「そうね。まずはこれを見てもらった方が分かりやすいかしら…『リビラッチィオーネ』」


 リターニャがなにやら呪文を唱えると、リターニャの掌から1枚のカードが現れた。


「これがセルティフカートよ。これには名前や年齢に性別、あと魔族には種族名、人間には職業が書かれているわ。つまり身分を証明するためのものって感じね。見てみる?」


 リターニャからカードを受け取って見てみたが、当然こちらの世界の言葉で書かれているため全く読めなかった。


「なんて書いてあるんだ?」


 カードをリターニャに返しながら尋ねた。

するとリターニャは「リチヴータ」と唱え、掌にカードを収納させてから答えた。


「私の名前と年齢。あとは種族と性別。つまり、マーレ・プリンチペッサ・リターニャ、マーレ族、女性って書いてあるわ」

「あれ?年齢は?」


 そう聞くとリターニャにギロっと睨まれた。


「女性に年齢を聞くなんて最低ね!」


 見た目的にまだ十代だろうに年齢のことを気にするなんて、背がちっちゃくてツルペタでもやっぱり女性なんだな。


「ごめんごめん。悪かったよ」


 そういって謝ると少しの間睨まれたが、はぁとため息をついた。


「…まぁ、いいわ。ソーマのような変態にそういうのを期待しても無駄よね」


 失礼な!お胸様があれば年齢なんて聞かないぜ!


「セルティフカートの説明は大体わかったかしら?で、そのセルティフカートを産み出すのがこのプローヴァってわけよ。これは、セルティフカートを産み出すだけでなく名前を授けてくれるの」

「その名前を授けるってどう言うことだ?」


 名前を授けるってことは、この世に生まれたら両親に名前をつけてもらうみたいに、この漬け物石に名前をつけてもらうってことか?


「名前を授けるっていっても、プローヴァは苗字を授けてくれるのよ。この世界はね、生まれたときは名前しかつけないの。例えばリターニャだけだったりセバスだけだったりね」

「つまり、名前は親がつけて苗字はそのプローヴァがつけてくれるってことか?」

「そういうことね。ただ、誰にでも苗字をつけてくれるわけではないわ。ある程度の才能があるもの、ある程度の地位に登り詰めたもの。あとは、ある職業を極めたものとかもね。…そうね、例えばメイドのネーヤには苗字はないけど、メイド長にまで登り詰めたカーメルには『カメリエーラ』っていう苗字があるわね。あと変わったとこでいうと、海賊なんかも有名になると『ピラータ』て苗字がついたりするわね。ちなみに苗字には意味があるらしくて、『カメリエーラ』はメイド、『ピラータ』は海賊らしいわ」


 メイドの長だから『カメリエーラ』、有名な海賊になったから『ピラータ』。なんか苗字というよりは称号みたいな感じなんだな。それにしてもなんともアバウトな基準で決めてるみたいだな。もっとこう何かあるだろうに。


「これを作ったやつは、ずいぶん適当なやつなんだな」


「確かにそうね。でも、神の考えることなんて私達には計りきれないもの」

「…神?」


 突然、神なんて言葉が出てきて思わず首をかしげる。


「このプローヴァは遥か太古からあるもので、私達魔族や、人間が生まれる前からあったとされているわ。だから、古の神の時代に作られたもの。つまり神の作ったものとされているのよ」


 さすが、魔法があるファンタジーの世界!確かに神様がいたとしても不思議じゃないよね。


「説明は大体これで終わりだけど、理解はできたかしら?」

「まぁ、大体はな」

「よろしい。じゃあソーマ、こっちへ来て」


 リターニャに呼ばれ、プローヴァの前まで歩みを進める。近くで見てもやっぱり大きめの漬け物石にしかみえない。


「ソーマ。プローヴァの上に掌を上にしてかざしてみて」

「かざすだけでいいのか?」

「ええ。プローヴァが勝手にやってくれるから、魔法の使えない貴方でも出来るわよ」


 リターニャのニヤニヤとバカにしたような言い方にムスッとしながらも、俺はプローヴァの上に手をかざした。 

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