88『はんにゃって何?』
短いです。
「はんにゃって何?」
はんにゃ、はんにゃ、般若だよね?
「今のお嬢のようなおっかない顔の女性の事を“ハンニャ”と言うみたいですよ」
「そっかぁ、そんなにおっかないかぁ」
ふーん、そっかぁ……ディオンは私の顔をおっかないと、ふーん。 ふん!
にっこり微笑見ながら距離を詰めると、冷や汗を浮かべて後ずさるディオンの首に両腕を回して拘束すると動きや反動を最小限にしてディオンの爪先を踏みつける。
「うわっ! 何すんすか! お嬢!」
すかさず標的となった足を抜き去り、拘束から逃れたディオンにお行儀良く舌打ちした。
舌打ちにお行儀の良し悪しがあるかはしらないけど、年々器用に避けるようになるためなかなか当たらない。
「何って思いっきり踏もうと思っただけだけど」
なんか文句ありますかしら。
「いやいや、明らかに可笑しいから! 俺の足を踏まないで」
反対の足を踏もうとすれば避けられ、攻防は激化し、内情を知らない人が見れば仲良くダンスでも踊っているように見えるかもしれない。
「はぁ、本当に逃げ足は早くなったわよね」
「お嬢の教育の賜物ですね間違いなく」
「あら、誉めても何もでないわよ?」
「ろくな物が出てこないので出ても要らないっす。 つうか誉めてない」
心底嫌そうに顔をしかめたディオンの後頭部を首に回していた腕を伸ばして、逃げられないようにぎっちり固定すると、額に頭突きを食らわせた。
若干目の前で火花が散ったような感覚に陥ったが、ダメージは与えられたようで、地面にしゃがみこんだディオンは額を押さえて呻いている。
「う~! お嬢の石頭!」
「お~ほほほっ! 頭も鍛えなくてはね?」
さて、今の衝撃で頭が覚めたことだし、ソルティス兄様のお墨付きも貰えた。
疑心暗鬼と言う火種は燻っているから、あとは新鮮な酸素を送り込めばすぐにでも発火し燃え上がるでしょう。
きれいに首を洗って待っとけ馬鹿皇子!
「イッツ・ショウタイム」
おまけ。
フレアルージュ陣営
ルーベンス
「うわっ! なんか凄い悪寒が走った! 鳥肌が全身立ってる! 風邪か?」
ローズウェル王城
カイザー
「背中を逆なでされたような気がしたが気のせいか、はぁ……少し休むか……」
ゾライヤ遠征軍
アラン
「見られた……見られた……うぐぅ」
注意、現在絶賛魘され中。 起こすべからず。
イーサン
「なんだ? 全身の毛穴が開くような感覚が。 武者震いか、俺がゾライヤ帝国の新しい皇帝だ! ワハハハハ!」




