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美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!《コミカライズ完結!》  作者: 紅葉ももな
『悪役令嬢ってもしかしてこれのこといってます!?』
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74『さぁ、俺の覇道のはじまりだ』イーサン視点

第二王子イーサン目線でお送りいたします。残酷表現も含まれますので苦手な方は飛ばしてください。

 時は少し遡り、リシャーナがアラン王子とディオンを見送っている頃、ゾライヤ帝国の遠征軍の陣地に一人の伝令が駆け込んできた。


******


「何者か! 名を名乗れ!」


「王城からの使いだ! 第二夫人イゼリア様よりイーサン殿下への書簡をお持ちしました! お取次ぎを!」


 辛うじて馬にしがみつくようにしてやって来た使者は見張りをしていた兵士に第二王子殿下への取次ぎを願い出た。


 着ている衣服は上等な物だったが、陣地まで道なき道を駆け抜けてきた為か所々が裂けて、身体のあちらこちらから血を流している。


「母上からの使者だと!」


「はっ、イーサン殿下への書簡をお預かりして参りました!」


 受け取った羊皮紙をとめる封蝋は間違いなく俺の実母第二夫人のイゼリアの物だった。


 素早く封蝋を破り捨てると中に入っていた羊皮紙を読んでいく。


「殿下! 殿下!」


 せりだした腹部を揺らしながらやって来たのは、第二王子である俺を帝位に望む派閥の筆頭貴族、そして母であるイゼリアの生家であるゲラティー侯爵家当主マノベテ・ゲラティーだった。


 マノベテは皇帝へと献上する予定であったダスティア公爵家の豚姫を逃がしたとして、建前上は五日の謹慎を言い渡されたが、実質優雅な休暇とかわりがないものだった。


「遅いぞマノベテ、たった今母上から報せがあった。 皇帝と皇太子が死んだぞ、これで俺がこのゾライヤ帝国皇帝だ!」


 やっと、やっとだ。 やはり神は俺を見放さない。


 ほんの半年ほど早く産まれただけの第一王子、俺はあいつのように弱くない。


 王城内の書庫に引きこもり、勉学のみを納めるあの男。


 あの細腕では有事の際に剣をとり他国と渡り合うことは出来ない。


 ゾライヤ帝国は長い歴史のなかで周辺諸国を纏め上げ、大きくなった国だ。


 その在り方をあの男は否定した。


 国が肥大すれば必ず目が届かない場所が増えてくる。 これ以上無駄な戦争を避け、内政に力を入れるべきだと皇帝陛下に進言した。


 内政など、優秀な官にやらせれば良いのだ。


 忌々しい第一王子アルファドが皇太子でありつづければ、次の皇帝はアルファドだろう。


 これまで他国からむしりとった利益で甘い蜜を吸うことに慣れていた連中は、皇帝陛下が体調を崩してからはアルファドに反発し、いまゾライヤ帝国の貴族はアルファドを後継者に望む者と、第二王子である俺を帝位にと望む者で割れている。


 今回のフレアルージュ王国侵略も俺を王国から閉め出すつもりだったのだろうよ。


 しかも自分に懐いた第四王子アランまで監視に付けやがった。


 あーだこーだと俺のすること全てに難癖をつけやがる煩いアランに我慢する日々。

 

 しかしそれも今日で終わりだ。


 そう、アルファドが死んだ以上、俺がゾライヤ帝国の最高権力者なのだから。


 マノベテが揉み手をしながらすり寄ってきた。


「それはそれはおめでとうございます。イーサン殿下、いえ皇帝陛下」


 マノベテの祝辞に機嫌良く頷くと俺は直ぐに同腹の弟である第三王子イヴァンの天幕へ向かった。


 はっきりいって同腹だが、あの豚のように肥え太った醜い愚者は邪魔だ。


 幸いここは戦場、目障りな輩を始末するには都合が良いのだ。


 無言のまま入室すれば、案の定イヴァンは三人のお気に入りの妾に囲まれ、肥えた身体を横たえながら、高級品である菓子を大量に貪り食べていた。


「兄上、どうかなさいましたか?」


「 ……」


「兄上?」


 いつもと様子が違う俺に、イヴァンは妾を天幕から追い出すと、その大きな身体を起こして立ち上がり、警戒することもなくのそのそと俺の前までやって来た。


 菓子の欠片がついたままの口を右手で塞ぎ、声を封じると俺は持ってきた短剣をイヴァンの心蔵へと突き立てた。


 かすかにくごもった声を上げたイヴァンから短剣を引き抜くと、大量の鮮血が吹き出した。


 愚者の目が何故? と訴えてくる。


 最後の最後まで目障りな野郎だ。


 俺は答えとして眉根に奴から抜いた短剣を突き刺した。


 生を断たれた肉はドシンと音を立てて地面に落ちた。


「あとは目障りなあの男だけだ」


 そうだな、ただ殺したのでは面白くないだろう。


 第一王子暗殺と第三王子暗殺の冤罪をかけて民の前で処刑するのも一興だろう。


 あの澄ました顔が怒りや屈辱で歪むのを考えただけで笑いが止まらない。


「イーサン殿下! アラン殿下をお連れしました」


 天幕の外からかけられた声はマノベテ・ゲラティーの声だ。


 あいつはいちいち言葉にせずとも俺の意思を汲み取り動く。


 今頃は私兵達でこの天幕を取り囲んでいるだろう。


「入れ」


 機嫌良く入室の許可を出せば、失礼しますとの声の後に外界と隔てる幕をずらしてアランが入ってきた。


 そして血塗れの俺と事切れた肉塊の姿を見るなり状況を察したのだろう。


 腰元にある長剣を俺に対して引き抜いた。


「兄上、これは一体どういう事か」


 ふん、構えはそれなりに様にはなっているが俺に言わせればお粗末だ。


「第四王子アラン。 第一王子アルファド皇太子及び第三王子イヴァン殺害の現行犯で拘束する! 捕らえよ!」


「なっ!?」


 俺の号令で待機していた私兵が一斉にアランを取り囲み拘束する。


「なぁ、アラン。 お前の味方はもうこの世界のどこにもいないんだよ、牢へ連れていけ!」


 後ろ手に縄で縛られ口には布で猿轡を噛まされてそれでも俺を睨み上げるアランを嘲笑う。


「さぁ、俺の覇道のはじまりだ」

 


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