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美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!《コミカライズ完結!》  作者: 紅葉ももな
『悪役令嬢ってもしかしてこれのこといってます!?』
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24『キラッキラの笑顔で八つ当たりしないでください』

「おはようございますリシャーナ様、クリスティーナ様。 登城は確か二日ほどまだ予備日があったと思っていたのですが? 朝早くに叩き起こされた理由をご存知でしょうか?」


 キラッキラした王家の馬車から降りてきたカイザール様は不機嫌オーラ全開でした。


 笑顔でその雰囲気を放出できるって相変わらず器用ですね。


「おはようございます、残念ながら何も知りませんわ」


「おはようございます。 カイザール様」


 にっこりと優雅にドレスの裾を軽く摘まんで挨拶するとクリスティーナ様も後に続くように頭を下げました。


「クリスティーナ様、貴女がなぜここに?」


 まぁ、ごもっともな疑問ですよね。


「国王陛下の御許可を頂き私も同行させていただけることになりましたの。 よろしくお願いいたしますね」


「……そうでしたか、よろしくお願いいたします」


 クリスティーナ様に何事も無かったように、笑顔で対応されましたけど、一瞬間が空きましたよ。


 まぁ気持ちはわからないでもないけどね、私だってクリスティーナ様がこんなにも行動派だと最近気がつきましたし。


「ところで予備日ってなんの事でしょうか?」


 昨日城に来たけれど、そういえば出発がいつになるかとか聞いてなかったかも。


 クリスティーナ様とカイザール様を目的の部屋に案内するべく先頭をきって歩き出した。


 まぁ、迷ったら侍女が使用人でも捕まえよう。


「リシャーナ様がお城へ向かわれてから寮に国王陛下から召喚状が届きましてね、三日後に城へ上がるようにとの内容だったのですが、朝早く寮監に叩き起こされまして、国王陛下が御呼びだからと用意して頂いた馬車に乗せられました」


 三日の準備期間がパァになるのはきついわぁ。


「まぁ、それではお荷物はどうなさったのですか?」


「後で寮監が王城へ届けてくれるそうです。 他者を部屋に入れるのはあまり歓迎できませんが、こうなっては仕方がありません」


 淡々として見えるけど、機嫌の悪さが滲み出てます。


 まあ、小さい頃から常に使用人や侍女が身の回りの世話をしてくれるのが当たり前の貴族社会だけど、学院では一人の時間が取れる。

 

 他者の眼を気にせずに済むというのは今思えばなんと贅沢なんでしょう!


 ドラクロア行きは避けられないにしても、個室くらいはもぎ取ってやるんだから。


 寝相も寝癖も気にせずに済む個室は必須でしょう。


 長い廊下を進むとあまり広くない小部屋へなんとか無事にたどり着いた。


 正門から真っ直ぐに進んだ突き当たりを曲がるだけの小部屋には帯剣した騎士が二名ほど木製の扉を守るように警備に当たっていた。


「遅い! 一体いつまで私をこんな所に置いておくつもりだ」


 扉を開けると三つ並んだ机にセットされた椅子に腰かけて、すらりと長いおみ足を組むようにしてふんぞり返ったルーベンス殿下がいました。


「はぁ、懲りませんね殿下。 もうしばらく地下におられた方が良かったのではありませんか?」


「五月蝿い。 誰が好き好んであんな汚いところに居なければならないんだ。 後ろの二人はなんだ?」


 確かに地下牢だけど高貴な方々の為の豪華なあの設備は犯罪者には贅沢なんだけどなぁ。


 今度おイタをするようなら遠慮なく平民用に放り込んでもらおう。


「それも含めてご説明しますわ、クリスティーナ様とカイザール様も空いている席へ着いてくださいます?」


 二人を促すと、ルーベンス殿下の隣にクリスティーナ様が、その隣にカイザール様が腰かける。


「実はドラクロアに行く前に皆様に助力をお願いしたくこちらのお部屋へご案内させていただきました」


 重厚感溢れる漆黒の机についた三人の視線が少し離れてひとつだけ設置された机に向かう。


 教鞭に立った教師の先生方はこんな風に視線を集めて授業をしてるんですねぇ。


 わざわざ執務に使われている机を運び込んでもらい適度な間隔を空けて並べてもらったかいがあるわぁ。


「お願いだぁ、そんなもの私に頼らずに自分で対処したらどうだ」


「うふふっ、殿下にお願いなどしませんわ。 強制ですもの」


 なんでこんな駄犬にお願いします? これから調教だって言ったじゃんねぇ。


「なっ!」


「殿下には自分の置かれた現状を理解して頂くためにこの部屋に連れてくる御許可を一時的に頂いただけですわ。 終わったらきちんと元の牢に戻っていただきます」


 ニヤリと笑うと怒りに赤くなっていた顔がみるみる血の気が引いて青くなっていく。


 なに、そんなに嫌? 何十年と入れられる訳じゃないし、だらだらしてて良いなんて極楽でしょうに。


「失礼致します。 閣下がいらっしゃいました」


 パクパクと口を開閉する殿下をよそに二度ほどノックがあった後、ガチャリとドアノブが回り父様が部屋へと入ってきました。


 父様の後ろには見慣れた顔がぞーろぞろ。


「おはようございます学院長様」


 私が頭を下げると丸々よりもデップリと言った男がズシズシとやって来る。


 額を流れる汗をあまりにも頼りない可憐なハンカチで拭うたびに前髪の生え際が後退していく。


 くっ、まずいわ。 笑ってしまいそう! ズレてるズレてる。


「これはダスティア公爵家のリシャーナ様。 突然このような場に陛下から御呼びがかかりやって来ましたが、若者たちを育てる重要な役を担う我々教師一同を集めて一体何をなさるおつもりですかな?」


 チラチラと隣に立つ父様を気にしながら揉み手で近づいてくる。


 年齢は大して変わらないはずなのに父様と比べるとあまりにも小者感が半端ない。


「あらあらお忙しいところ申し訳ありません、この度学院の教育体制を改革されるそうなのです。 まず手始めにこれからこの部屋と同じことを学院に取り込むとの事でしたから実際に見ていただくために皆様に御足労をお掛け致しました」


「ほう、それでいつも若者を指導する立場にある我々は一体何を見せて頂けるのですかな?」


 良く良く見ればニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる学院長と同じように此方に不躾な視線をよこす教師がチラチラ見える。


「そこからは私が説明しよう」


 そう言うとカツカツと靴底をならして父様が私の隣に回った。


「今期から生徒各々の学習の習熟度を把握するために年に四度学力試験を実施することになった」


 父様の言葉に教師陣からドヨドヨとどよめきが伝わってきた。


「それはそれは、優秀な生徒が集う学院ですあまり必要性を感じませんがいかなる試験なのですかな?」


 ニヤニヤ笑う顔が気持ち悪い!


「必要かどうか、優秀かどうかなどやってみれば判る。 始めてくれ」


 父様の許可が出たので私は目の前の三人に手書きの問題用紙(解答欄付)を手渡していく。


 その間に父様の部下が教師陣に同じ問題の書かれた問題用紙を手渡していく。


 これは私が昨晩のうちに書き上げた一枚を渡していたのでどうやら徹夜で書き写したのだろう。


 父様は相変わらず人使い荒いようだ、こんな父ですいません。部下さん目の下にうっすら黒い隈が出来てるしね。


「この羊皮紙は皆さんの習熟度を測るための質問が書かれております。 まずこの右上の空欄に名前を書き込んで下さい」


「ふん、なんで私がこんなくだらない事案に付き合わなければならないんだ」


「はいそこ、ブツブツ五月蝿い!」


 文句を言う暇があるのなら先に手を動かしたまえ。


「書き終わりましたか? 次に左上から左下に向かって一問ずつ問題が記入されてます。 その解答を問題の右にある空欄に書き込んでいただきます。 ちなみに裏面にもありますから注意してください」


 私の言葉に三人とも問題用紙を捲って裏返す。


「試しに一問だけ。 第一問、五+四は? ルーベンス殿下?」


「九だろう。 お前はいったいどれだけ――」


「ではさっさと空欄に書き込んで下さい! クリスティーナ様とカイザール様はもう済まされてますわ」


 今は貴方のぐだぐだに付き合ってられませんの。 少しはお二人を見習ってくださいな。


「このように問題の答えを記入していただきます。 試験中の私語や他の方と試験中に問題について話し合ったり解答を見せ合うなどの行為は不正と見なして退場していただきます。 それでは始め!」


「ちょっと待て、お前は受けないのか!?」


「えぇ、私が作った問題ですもの。 次回からは教師の方々に作成して頂きますわ。 そうすれば私も受験出来ますから」


 自分で作った問題を解いても楽しくないじゃない。 あれは難解な問題が解けたときの清々しさがいいんだもの。


「では試験はこの砂時計が全て落ちきるまでに記入を終えてください。では始め!」


 その間に教師がたに補足として生徒が不正をしないように見守ること、不正を犯した生徒は例え時間内でも問題を回収すること。


 父様からは事前に生徒に問題を知らせたりした場合には教師が処罰を受けること、また賄賂を貰い答案に細工を施したりすればどうなるか、処罰の内容を聞いた瞬間職員一同の顔から血の気が無くなった者もいた。


 当然だろう、この試験は生徒本人の力量が問われる。 今までのように貴族からの個人的な寄付金で成績を不正に引き上げることは不可能になるからね。


 しかも初回の解答用紙は採点前に城へ納品されて父様の部下が採点することになっている。


 本人が書いたかどうかは筆跡を見れば多少は判るし、結果は国から各地の保護者に順位付で送付される事になっている。


 カリカリと書き込む音が一番始めに終わったのはカイザール様だった。


「終わりましたか?」


「はい、確認してください」


 手渡された問題は空欄なく綺麗に埋められている。


 カイザール様の問題用紙を持って教卓代わりの執務机に一人の教師を座らせて他の教師や当日採点する部下の方々を招く。


「こちらが今回の試験の解答ですわ、解答を照らし合わせて此方に赤いインクがありますので正解していれば解答欄の上に丸を、間違っていればこのようにバツ(×)を付けていきます」


 教師に配られた問題集に丸とわざと不正解な答えを記入してバツ(×)印を記入して行く。


 これまで×印はなかったからこの際広めてしまおう。


 見よう見まねでゆっくりと問題と解答を照らし合わせ採点をしていく教師陣。頑張れ!


「終わったぞ! さっさと取りに来い」


 書き上げた問題用紙をヒラヒラと振りながら催促するルーベンス殿下の解答を学院長に手渡して採点して貰う。


 もちろん背後にはぴったりと父様が張り付いているので不正は無理。


「出来ましたわ」


 うむ、最後のクリスティーナ様も無事に終ったみたいです。


「これは貴方におねがいします」


 父様の部下に手渡すと採点を始めた。


 さぁ誰が一番点数がいいかなぁ。



 


 


 クリスティーナの酷評が。まぁ、これがうちの悪役令嬢です。なんか変態チックですがまぁ、美形はろくなの出ませんのですいません諦めて! 読める方だけ付いてこーい!


 少し本筋から脱線しましたが本筋に戻していきます!

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