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美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!《コミカライズ完結!》  作者: 紅葉ももな
『悪役令嬢ってもしかしてこれのこといってます!?』
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23『慕っている? えっ、誰を?』

 おはようございます! チュンチュンと小鳥の可愛い鳴き声に促されて目を覚ますなり私、ビタンとベッドから盛大に転げ落ちました。


「くっ、クリスティーナ様! なぜ私のベッドで寝てますの!?」


「うーん、あと少しだけぇ」


 昨晩、同室が良いとのクリスティーナ様のおねだりに呆気なく陥落した私でしたが、どうやらドラクロアへの同行の許可を陛下からいただく際に、私との同室の権利ももぎ取っておられたらしく王城内に貴賓室のツインルームが確保してありました。


 淡いクリーム色を基調にした室内は落ち着きあるデザインで統一され、中庭に面したテラスへと続くガラス扉に足を向けるように設置された二つのベッド。


「リシャーナ様、どちらのベッドをお使いになりますか?」 


 お友達とは言え公爵令嬢が場所を選ぶのが先です。とのクリスティーナ様の言い分を受け入れて、出入り口に近いベッドを選ばせて頂きました。


 理由? トイレに近いからですが、なにか?


 素晴らしい夕食を堪能した後、クリスティーナ様は緑色のもふもふした蛙のヌイグルミを抱えてご就寝。


 どたばたとここ最近なにかと忙しい日々が続いたため、お疲れだったのでしょう。


 あれ(断罪騒動)もこれ(ドラクロア流刑)も全部容姿だけが取り柄の駄犬王子のせいだ。


 大型のアルコールランプを手にとって窓際に配置されたソファーへと移動すると、ソファーの前に置いてあるアンティークな艶やかな光沢を放つ楕円形のテーブルへコトリと置いた。


 羊皮紙で出来た教科書がぎっしりと詰まったカバンを引きずってテーブルの脇へと持ってくるなり数冊の教科書を引き抜く。


 学院で学ぶ事ができる教科は数学、大陸語、歴史、世界情勢、社交術、帝王学。


 取り合えずテストがないので前世で受けた記憶を頼りに問題と答えを二枚の羊皮紙に別けて書き込んでいく。


 今回は羊皮紙で原案を作っているけれど、実際のテストは父様が紙を作ってから試験的にテストで使用してもらえば費用も押さえられるはずだ。


 羊皮紙製造方法は使われる皮で差があるにしても剥ぎ取ってから使えるまでの状態にするのに一月は掛かると聞いたことがある。


 一頭の山羊から取れる羊皮紙は一頭からA5サイズで言うとだいたい十六枚、この立派な装丁の施された全教科分の五百枚もある教科書群を作るのに一冊あたり三十頭以上の羊皮紙が必要になる。


 手間と材料費だけでも高額な羊皮紙をテストに使うなんて勿体無い!


 簡単な一の位の足し算、引き算から問題を作りはじめて千の位までの計算問題十問ほどを書き込んでいく。


 掛け算は学院で初めにきっちり習っているはずなので一の位から百の位までの掛け算も十問。


 割り算も掛け算と同時期に習っているため十問入れる。


 大陸語を使用して文章問題を作成する際には簡単な林檎を使った足し算から始まって、五問目以降は税収の計算問題。


 最後に実際の政務に使えそうな父様が欲しい人材に必要になるだろう計算問題も追加して置いた。


 最終問題は少し難易度が上がってしまったが、確認すればどれも初年度で習った内容を吟味して応用すれば解けるものだった。


 よし百点満点のテスト完成!


 ひとまず試しで四枚ほど問題を書き上げた所で眠気に敵わずに自分の軟らかなベッドへと倒れ込んだのは覚えてる。


 なのになんで起きたらクリスティーナ様の腕のなか? 一体いつの間に移動してきたのよ。


 しかも私どんだけ寝相が悪かったんだ? キチンとリボン型に結んだ筈の胸元の紐がほどけてしまっています。


 うわー、恥ずかしい! こんな姿いくらクリスティーナ様がお友達でも見せられません!


「んー、リシャーナ様?」


 ぎゃー、起きないで! モゾモゾとベッドの上で動き始めたクリスティーナ様から隠れるようにトイレへと駆け込んだ。


「危なかったぁ。 こんなみっともない姿見せられない!」


 すぐさま乱れてしまった夜着を整えて寝癖の付いた長い髪を梳く。

 

 特に髪を巻いた訳でもないのに今日も癖が強い髪は見事なドリルと化している。


 併設された鏡台でおかしな所がないか確認する。 よし、大丈夫だ。


「おはようございます。 クリスティーナ様」


 まだ目覚めて間もないのか、ベッドの上で座り込んだクリスティーナ様に声をかける。


「おはようございます。 リシャーナ様、なぜ私はこちらのベッドにいるんでしょうか?」


 キョトンと小首を傾げてベッド脇にたった私を見上げると姿は今日も天使です。


「さぁ? 気が付いた時には良くお休みだったので」


 わかりましぇーん。 曖昧にして置こう、うん。


 コンコンコンコンと乾いたノック音が響き入室を許可したところ三人の侍女が入室をしてきた。


 黒色のワンピースにフリルの沢山ついた真っ白なエプロンをした侍女さんたち。 メイド服可愛いですね。


「おはようございます。 リシャーナ様、クリスティーナ様。 お食事の用意が出来ておりますがお部屋にお運びいたしますか?」


 お仕着せの中にも役職があるのか一番の年嵩の女性が代表して声をかけてきた。


 クリスティーナ様に視線を向けると頷かれたのでここは部屋でゆっくりさせてもらおう。


「えぇ、お願い」


「それではご準備が整いますまでの間、お召し替えはいかがいたしますか?」


 いつまでも夜着を着ているわけにもいかない。


「持ってきた荷物の中にワンピースが入っているから問題ないわ。 今日は陛下とお会いする用事もありませんもの」


「申し訳ありません、本日はクラリアス伯爵子息様が登城なさいますので、明日のドラクロア出立前に陛下と閣下を交えて夕食をと命を頂いております」


 クラリアス、クラリアス……あぁ、カイザール様ね。 国王陛下と晩餐ではワンピースとはいかないかぁ。


「わかりました。 夕食前に着替えますから何名かこちらへまわして」


「かしこまりました」


 流石にクリスティーナ様と一緒に着替えるわけにもいかず、続きの間に移動して着替える。


 今日はお気に入りの深緑色シンプルなドレスを引っ張り出した。


 ちょうど臍の少し上で切り返されたワンピースはスッキリしたデザインであまり膨張して見えないから重宝している。


 デザインによっても膨張して見えにくい物を選んでくれるからダスティア公爵家の針子は優秀です。


 寝室の隣にあるリビングの卓上には既に朝食が用意されており、着替えを済ませたクリスティーナ様が座っていました。


 水色のワンピースは緻密なレースで縁取られた白い襟がアクセントになっており、清楚で可憐な妖精のよう。


 私の姿に立ち上がりかけたクリスティーナ様を制して、直ぐに正面の椅子へと移動し腰を下ろす。


「お待たせいたしました。 頂きましょう!」


 季節の野菜で作ったサラダとカリカリに焼かれたベーコンととろとろのオムレツ。


 じっくり煮込んだであろうコンソメスープは濁りがない逸品、手が込んでるわぁ。


 ちぎった焼きたてのパンを頬張ると香ばしい薫りが口の中一杯に広がります。


 くぅ、美味い! さすが王宮!


「今日は何をして過ごされるご予定ですか?」


「カイザール様が本日王城へいらっしゃるそうなので今後の話し合いですわね、後はお勉強です」


 夜更かしして作ったテストをぜひとも受けていただかなければ。


 コンソメスープを掬って口へ運ぶ。


「リシャーナ様はカイザール様を慕っておいでなのですか?」


「ぐふっ、げほっ! クリスティーナ様違いますから、只の顔見知りです!」  


 あんな顔面ハイスペックに本音としては関わりたくないんですから。


「そうなんですか? 随分と仲が宜しいようにお見受けしたものですから」


 さも不思議そうにしながら食後の珈琲をブラックのまま飲まれてます。


 私はがっつりミルクと砂糖をいれましたけど、ブラックは苦くて飲めないんです。


「幼い頃に父が我が家に連れていらっしゃってその頃から何度かお付き合いがあるだけですわ」


 ぐさりとフォークをサラダに入っていたミニトマトに突き刺した。


「うふふっ、良かった。 実はお恥ずかしい限りなのですが御二人がとても仲が宜しいお姿に嫉妬してしまったようなんです、軽蔑なさいますか?」


 モジモジしながら紫色の瞳を潤ませて言い募られるって萌え! なにこれ、心臓がバクバクいってますよ!

 

「いいえ、光栄ですわ。 さぁ食事を食べてしまいましょう! ねっ?」


「はい!」


 私の答えになんとか納得していただけたようで、ニコニコとしながら小さな果物を頬張った。


 うぉー! 驚いた、落ち着けぇ落ち着くんだ自分。


 目の前に残った朝食を一心不乱で食べてしまい、食べ過ぎで死にかけながらクリスティーナ様と共にカイザール様を出迎えました。




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