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美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!《コミカライズ完結!》  作者: 紅葉ももな
『悪役令嬢ってもしかしてこれのこといってます!?』
20/195

20『婚約者よりも仲良くなりたい』クリスティーナ視点

本日二話目の投稿ですので前話をご確認下さい。また今話はクリスティーナ編です。クリスティーナのイメージが壊れかねませんので嫌な方は回避をお薦めします。それではどうぞ。

 私の名前はクリスティーナ、スラープ伯爵家の長女です。


 国王陛下の御召しにより第三王子ルーベンス殿下の婚約者となりましたが、扱いとしては夜会などに出席する際のパートナーのような存在です。


 ルーベンス殿下は夜会でも入場と始めのダンスを終えると直ぐにどこかへ居なくなってしまわれる為それが当たり前だと思っておりますし、あまり話術も得意ではないので特に不満もありませんでした。


 殿下と同じく貴族の義務である王立学院に進学を果たしてからも、私たちの関係に変化はありません。


 王妃になったときに殿下や陛下、これまで育ててくれた家族の恥とならないように勉学を励んでまいりました。


 ただ自分を磨く日々はある日突然教室にやって来た婚約者のルーベンス殿下と、有力貴族の御子息に校庭へと引っ立てられたことで激変しました。


「お前は特定多数の生徒を煽動し、マリアンヌ嬢を傷つけた。 悪意を持って人を貶めるその性根! 見損なったぞ!」


 はい? いったいなんのことですか?それよりもマリアンヌ様って誰ですか?


「いいえ! 私がそんな卑劣なことに手を染めると誰よりも付き合いの長い貴方が本当に思っているのですか!?」


 訳のわからない事を並べる殿下に気が付けば反論をしていました。


 何をしたかわかりませんが、ルーベンス殿下の口から述べられる身に覚えの無い私の罪らしい事柄で万が一裁かれれば、家族やこれまで仕えてくれた使用人達とその家族にまで累が及ぶのです。


 それだけはなんとしても避けなければなりません。 地面に倒された際に擦りむいたのかヒリヒリと膝に痛みが走るけど、無実を誰も信じてはくれないこの状況が心に激しい痛みを与えていてあまり気になりません。

 

「証拠や証人も揃っているのに、まだ罪を認めないと言うのか」


 自分を見下ろす凍り付くような冷たい視線に無意識に戦慄が走りました。


 怖い、いったいこの人は誰? 私の知る自分の不出来に嘆きながらも懸命に王子たらんとして努力をしていたルーベンス殿下ではない。


 怖い、怖い、怖い! 誰か助けて!


「ルーベンス殿下、お待ちください」


 恐怖に身体を丸めたとき、凛と校庭に響いた声に顔をあげると、一人の女性が立っていました。


「お前は……?」


 丸みを帯びたその身体は、まだまだ成長過程にあるのか幼さが残るものの、少女特有の甘さを含んでいます。


 彼女のために人ごみが割れこちらへの道ができると、茶色の髪を風に靡かせて優雅にそば近くへ進んできました。


「お久し振りで御座います。 ダスティア公爵が娘リシャーナ・ダスティアでございます」


 スカートの裾を僅かばかりつまみ上げて礼をする姿も無駄がなく洗練されています。


 ダスティア公爵、それは現在の宰相を務める大貴族中の大貴族の家名。


 面識はありませんでしたし、同学年に入学したとの噂のみで、大貴族なのに存在を忘れられてしまうほどに影が薄かったご令嬢。


「あぁ、元婚約者候補のじゃじゃ馬姫か。 一体なんのつもりだ」


「いえいえ、学院での貴重な癒しを満喫しておりましたら何やら殿下主導の見世物が始まってしまわれましたので状況をお聞きしたくお声を掛けさせていただきました」


 不機嫌な王子の言葉にも微笑を崩さずにエメラルドの瞳で見据え、堂々と話す姿は正に令嬢の鑑。


「見ての通りだが? 部外者は黙って見ていろ」


 吐き捨てるように言ったルーベンス殿下を気にもとめずに私の側へ膝を突くと私の手を取り、立たせるばかりか土で汚れてしまったスカートを払ってくれました。


「クリスティーナ様、大丈夫ですか? お立ちになれます?」


「えっ……はっ、はい。 大丈夫です……」


 仏頂面を無視して私の側に膝を突き、差し出された手の感触に安堵感が心に湧き出してきました。


 男性の骨張った大きな手とは全く違う、節くれのない少しだけふくよかな柔らかい手。


 女性の手がこんなにも心優しく落ち着けるものなのだと、握られたままのリシャーナ様の手を見詰めてしまいました。


 この手で撫でられたらさぞ……


「さぁ、クリスティーナ様はこちらへ」


 ルーベンス殿下から隠されるようにして後ろで成り行きを見守っていた女生徒へと手渡されました。


「クリスティーナ様こちらへ」


「あっ、あの!」


 ルーベンス殿下に毅然と立ち塞がるリシャーナ様は大丈夫だろうか。


「災難でしたね。 もう大丈夫ですわ、リシャーナ様は我々女子の守護女神ですから」



 治療院で傷の手当てを受けベッドに横たえられると、自分で思っていたよりも疲弊していたのか直ぐに眠ってしまったようです。


 目が覚めると治療院まで連れてきてくれたご令嬢方は居らず、代わりにリシャーナ様がいらしていました。

 

 椅子の背凭れにひっくり返りそうなほど寄り掛かっている姿に、先程までの凛々しさはなくあえて言うなら信じられないほどだらけていました。


 あの誰よりも令嬢らしい立ち居振舞いも憧れますが、だらけているお姿も少し太った猫が真ん丸になって寛いでいる様で可愛くてキュンとします。


 まさかこんな自然体なお姿を拝見させていただけるなんて。


「あ、あのリシャーナ様……」


 起きたのに気がついて居ないのか、声をかけると微妙なお顔をしながら身体を起こされ何事もなかったように、令嬢らしい綺麗な座りかたに体勢を戻されていました。


「ん、ああ、クリスティーナ様おはようございます。 気分はいかがですか?」


 夕方でもリシャーナ様の挨拶はおはようございますなんですね。

 なんだかとても不思議です。


「えぇ、大丈夫です……」


 リシャーナ様は軽く頷き、少しおどけた軽い感じで話始めました。


「そう、国王陛下からクリスティーナ様に今回のあのバカ王子の暴走について謝罪と、最大限クリスティーナ様の希望を叶えますと言質と書類を書いてもらったからなんでも言ってくださいね?」


「えっと、なんでも、ですか?」


 婚約破棄を言い渡された者に対してあまりにも破格な扱いです。


「流石に王様させろとか、御実家の爵位を上げろとか、領地を増やせとかは無理かな? もし希望があれば色ボケ王子との婚約を破棄して、なるべくクリスティーナ様好みの男性を紹介してくださるそうですわね」


 にっこり笑顔で茶目っ気たっぷりに言い放つリシャーナ様のくるくると良く変わる表情と、あまりにも辛辣なルーベンス殿下への評価に心に刺さった先程の凍えるような視線と罵声がとけていくようです。


「ふっ、ふふっ、い、色ボケ王子って」


 笑っては不敬になるかも知れませんが、リシャーナ様には令嬢がたが憧れる王子様も色ボケとしか認識されていない事実にうっくつとした感情が溶け出します。


「あー、訂正させて下さいます? 色ボケバカ王子でしたわ」


 悪い方に訂正された評価にとうとう吹き出して笑いだしてしまいました。


「リシャーナ様、改めてお救いいただきありがとうございました。 御心遣い感謝致します、ルーベンス殿下との婚約は元々陛下と我が家での取り決めによってなされたこと。 私の一存で判断できません」


 正直ルーベンス殿下も殿方も暫くはかかわり合いになりたくはありません。


 だって殿方と手を繋ぐよりもリシャーナ様の手の方がふわふわでふにふにで気持ちいいのですもの。


「それに、殿下も初恋に熱くなっておられるだけですわ。 あんな方ですけど、あれなりにお優しいところもおありになるのですよ?」


 私がかの王子の婚約者でいる限りきっとリシャーナ様は共にいてくれるような気がするのです。


「はあぁ、ではご自分から婚約破棄をすることは」


「ありません。 私のような娘を王子殿下の婚約者として望んでいただいた陛下に報いるまで自分からお役目を放棄したりはいたしません」


 貴女の側に居るためなら、色ボケバカ王子の婚約者と言うもの案外悪くないかもしれません。


 リシャーナ様が治療院で泊まっていかれると言うので御一緒させていただくことにしました。


 ひとりになるのは不安だと言えば、お優しいリシャーナ様はきっとご許可下さるでしょうから。


「光栄ですわ、ただしベッドがひとつしかありませんから同衾ですわよ?」


 えっ、どっ、同衾ですか!? 冗談混じりの言葉に、男女の情事を思い出しました。


 同衾ならリシャーナ様の二の腕とかお腹とかささやかなこれから実る可愛いお胸もさわり放題ですよね。


 リシャーナ様に抱きついて思いっきり愛でたい。 自覚した自分の欲求に顔が火を吹きそうなほど赤面してしまっている気がします。


「……わたし、あの、リシャーナ様となら……」


「うっ、冗談ですわ。 女同士ですもの何も問題ないですわ」


 冗談、なんですね。 どうしてでしょうか、ルーベンス殿下の暴言よりもグサグサ心に刺さるのは。


「……今の私じゃ相手にされないのね……」


 ポソリと口からでた呟きはどうやらリシャーナ様には聞こえずに済んだようです。


「さっ、さぁ。 おかわりでもいかがですか?」


「えぇ頂きますわ」


 これから時間はいくらでもありますものね。


 手のひらであんなに気持ちがいいんですもの、うふふっ。


 あらいやだ。 涎が……。


 学院でカイザール・クラリアス伯爵子息様と言う殿方と面識を得ました。 なにやらリシャーナ様と仲が良いご様子、狡いですわ。 私だってもっとリシャーナ様と仲良くなりたいのに!


 この男性がルーベンス殿下を見てくれれば私はリシャーナ様ともっと一緒にいられる?


「なんでしたら、カイザール様にも手伝って頂いてはいかがですか? リシャーナ様だけでは大変ですし」


 殿方は殿方に押し付けてしまえばいいのですわ!


「はっ!?」


「おー! クリスティーナ様ナイスアイデア! それ採用、早速陛下の勅命貰ってきます!」


「ちょっ、リシャーナ様お待ちください! 私はそんな」


 私の提案に直ぐ様走り出して行かれたリシャーナ様。


「カイザール様、クリスティーナ様を御守りしててくださいねえぇぇぇ……」


 リシャーナ様、私の心配をしてくださるのですね! ありがとうございます!


「うぁぁ、俺の平和な学院生活が!」


「うふふっ、これから宜しくお願い致しますねカイザール様」


 私とリシャーナ様のきゃははな時間の為に頑張って頂かなくては!




 

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[一言] 次男とくっつけばお義姉様になる
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