17『盗まれていた物達』
「これはまた大量ですね」
「これほどまでに持ち去られてしまっていたのか」
運び込まれた箱の中には大小様々な大きさのジュエリーボックスが詰め込まれていた。
色鮮やかな天鵞絨の貼られた小箱がみっちりと隙間なく敷き詰められている。
「だれか、宝物庫の目録を」
「はっ、こちらです!」
箱を運んだ騎士は胸元のポケットから丸められた羊皮紙をとりだして父様へ、そして陛下へと手渡された。
「衣装箱の中身を陛下の前に全て並べよ」
父様の指示に騎士たちは手際よく中の宝飾品を次々に石畳の上へと並べていった。
「ミルドレッド妃の首飾り、同じくミルドレッド妃のブレスレット」
「これは!? シャイアン王妃殿下の首飾りまで!」
「えっ! 母上の私物までもですか!?」
騎士の制止を振りほどくと、シャイアン王妃殿下の首飾りをルーベンス殿下自ら確認している。
どうやら今代の王妃殿下の私物も被害に遭っていたみたいです。
「はぁ、本当に警備は一体何をしていたんだ」
こめかみを揉みながら呟く陛下。
「王家としてはとっくに事態の把握、鎮圧を済ませているだろうと母上が馬車の中で話しておいででしたから、まさかの無対応に二人で驚かされました」
壁に寄りかかりながら並べられていく品々を見詰めながらフォルファー殿の口から気になる言葉がさらりと出てきましたよ。
「二人?」
「まっ、まさかセイラ姉上も王都へ来ているのか?」
「来てますよ。 今ごろシャイアン王妃殿下とお茶を楽しまれているかと思いまぁす」
「そっ、そうか。 ロベルト! フォルファーの尋問を任せる! 後で報告せよ! よいな~!」
それだけ告げると、脱兎の如く部屋を離脱して走っていってしまわれた陛下。
セイラ様ってそんなに怖い方なんでしょうか。
「父様、セイラ様って」
「陛下の天敵だよ」
「天敵ですか」
それですっ飛んで行かれたのですね、おねぇ様の抜き打ちチェックですか。
「そうそう、ルーベンス殿下を隣の牢屋へお連れしろ」
「はい、殿下どうぞこちらへ」
「はっ!? なぜ牢屋へ入らなければならないんだ!?」
「まぁまぁ、遠慮なさらずに」
「誰が遠慮なんてするんだ、おいっ! 放せ、放せって!」
にこやかな騎士さん三人がかりでぐいぐいと牢屋へ押し込んでいく。
「なぜって、殿下もフォルファー殿も容疑は一緒ですからね。 フォルファー殿はまだ疑いですが、殿下は黒です。 フォルファー殿が牢屋に入るのに殿下が入らないのでは道理がたたないでしょう?」
ガシャンガシャンと格子を叩く殿下は脱力したようにその場で地面にへたりこんだ。
「まさか俺が牢屋の世話になろうとは……」
「あっ、閣下。 お腹が空きましたので夕食をお願いしますね、ついでに牢屋が冷えるので暖をとるのにリシャーナ嬢を一晩貸してください」
すっかり項垂れた殿下と対称的にちゃっかり夕食を所望したフォルファー殿は牢屋中から私に向かって手招いた。
「しっかり、ハッキリお断りいたします!」
イケメンなんて冗談じゃない!
「どうやらフォルファー殿は夕食はいらないそうだ。 お二人とも少しご自分を見つめ直すよい機会です。 ゆっくりと親睦を深められませ、リシャーナ行くよ?」
父様は黒く見える笑みを浮かべて私の背中を押すと、数人の騎士を両名の護衛兼監視として残し、地上への階段を上り始めた。
「いいかい、リシャーナ。 フォルファー殿は手が早いので有名な方だ、近寄ってはいけないよ? すぐに孕まされてしまうからね」
「大丈夫です! お兄様に習った護身術も使えますから」
もう一回実践済みですし。
「フォルファー殿はやはり早めに駆除するべきかなぁ」