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第四話『喰われた〜』

 誰だろう、好きな人の腕の中で朝チュンは幸せだと言ったのは。


 宿の借り受けた部屋に拉致され、血に飢えた猛獣に一晩中貪られたせいで身体のあちらこちらがギシギシする。


 しかもガッチリと裸の腕に背中から拘束されているため寝返りすら出来ない。


 ベッドから抜け出そうと力が入らない身体でもぞもぞと動いていたせいか、目を覚ましたらしいカイにまた抱き込まれる。


「リシャ……おはよう……」


 身長差があるせいか、後ろへ反らせた私の額にカイの唇が触れる。


 甘い雰囲気になり始めたので、このまままた何ラウンド目かわからない情事じょうじにもつれ込まれたらマジで死ぬ。


「うがぁ〜! ほらカイ起きるよ! また移動するんでしょ!?」


 気力を振り絞ってカイの腕を跳ね除ける。


「はぁ……もう少しリシャの柔らかな身体を堪能したかった」


「はい!?」


「昨夜はあんなに愛らしく俺を求めてくれたのに……」


「はいそこ、捏造しない」 


 カイの額に手刀を入れて、服が見当たらないので取り合えず寝るときに使っていたシーツを身体に巻き付けた。


 上半身裸のままでかろうじて下半身はシーツに隠れて見えないが、眠そうに欠伸をして両手を天井に伸ばすカイの姿から目をそらす。


 全身だるいし、油断すると歩く格好がおかしくなる。


「そんな事より私の服は?」


 寝間着のまま毛布に包まれて運ばれてきたので、正直自分の旅の荷がどのようになっているのか想像もつかない。


「ん……あぁ、馬車に一通り用意してあるから直ぐに持ってこさせる」


 そう言ってベッドから立ち上がったカイの腰元を隠していた掛布がパサリと床に落ちた。


 そう落ちたのだ。


「前を隠せばかぁ!」 


 両手で顔を覆い隠し、その場にしゃがみ込む。


「すまん、でも……」


 ゆっくりと近付き私の近くまで来てしゃがみ込んだ気配がする。


「そんなに可愛い反応を見せられるとまた押し倒したくなる……」


 艶っぽく言われてかぁっ、と全身が沸騰したように熱くなる。


「うっさいバカ! さっさと私の服をもってこーい!」


 恥ずかしさに顔を隠して、伸ばした左手をブンブン振り回せば、クスクスと小さな笑い声がした。


「直ぐに戻る」


 そう楽しげに告げられ、背後でバタンと扉が閉まる音がしてペタリと床に座り込む。


「ぐぬぬぅ、なんかすっごい負けたような気がする!」


 惚れた……絆された弱みなのかもしれないが、余裕綽々としたカイの対応が悔しい。


 絶対にいつか見返してやるんだから!





 

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