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第一話『初夜……初夜はどうした!?』

続編始めました。新婚旅行編になります。お楽しみいただければ幸いです!


 


ローズウェル王国で盛大に執り行われた婚約式、実際には婚約どころか私リシャーナ・ダスティアと王太子カイザー・ローズウェル殿下の結婚式だったわけですが、新たに案内された寝室を見て私は大事なことを思い出しました。


 そう、ダスティア公爵家ではなく家名がローズウェルになった……すなわち今日から人妻、初夜な訳で……床入りの準備をせっせとしてくれた侍女さん方。


 夫婦の営みをね、その〜これからする事を城中、いや国中が知っている状況ってどうかと思うわけです。


 しかも清潔感ある白いネグリジェは胸元を留めてあるリボンを外せばハラハラリ。


 うがぁ〜恥ずかしい、穴を掘って埋まってしまいたい!


 羞恥に悶ても現実は無情だ。


 私の目の前に鎮座している巨大な天蓋付きベッドには真っ白でパリッと糊が効いた皺一つないシーツが掛けられている。


 寄り添うように並べられた二つの柔らかそうな枕と、シーツの上になぜか散らされた赤い薔薇の花びらが破瓜の出血を連想させてくれるもんだからいたたまれない。


 カイザー……カイはまだ来ていない。


 これってさ、どこでカイの訪れを待つのが正解なんだろうか……


 ベッドに腰をかける?


 ……無理、結婚式で疲弊した心と身体は、ベッドに座ろうものなら間違いなく寝の体勢に入るよこれ。

 

 かと言って立ってベッドを睨みつけて立ち尽くすのもなんか違うし、三つ指ついて待つのも違うしぃぃぃい!


 両腕を組むようにして右手で口元を覆い隠し、ぬぅぉおとひとりで悶々としていた私は、いつの間にか部屋へと入ってきていたらしいカイに気が付かなかった。


「リシャ……おまたせ」


「うひゃっ!?」

 

 背中から脇腹に逞しい腕が絡みつき引き寄せられ、耳元に落とされた色っぽい甘さを含んだカイの声がゾクゾクとした感覚を伴って腰にダメージを与えてくる。


 色気もへったくれもない奇声を発した。


 耳元に掛かるカイの吐息が熱い。


「かっ、カカカ、カイ……早かったね?」


 なんとかカイの心臓に悪い抱擁から脱出する。


「あれ、なんで旅装なの?」 


 これから嬉し恥ずかし初夜のはずなのに、目の前に立って花婿は濃緑のシャツに焦げ茶色の幅広のズボンと茶色の軍靴、こちらも焦げ茶色の丈の長い分厚いマントを羽織っている。


 うん、美形は何を着ても似合うなぁこんちくしょう!


「ん? あぁ……」


 私の問に答えず長い足で距離を詰めると素早く私の唇を奪い舌を絡めた。


 貪られるような激しい口付けに呼吸困難に陥り、ガクリと膝から力が抜けてヘロヘロと腰砕け状態。


 このエロ王子、一体どこでこんなエロキス覚えてきやがった!


 モヤモヤする。 なんかわかんないけどすっごくモヤモヤする!


 これだから顔面ハイスペックは油断ならん。

 

 倒れ込んだ私の身体を逞しい腕でヒョイッと難なく抱き上げた。


 呼吸が乱れたままカイを潤んだ目で睨み上げる。


「リシャ……それ他の男の前でやったらお仕置きだ」


 艶っぽく言われてゾクリとした何かが背中を駆け上がる。


「そっ、そんなことより私の質問に答えてよ、これから……その……」


「ん? あぁ初」

 

「うわぁぁあ! 言うな〜!?」


 改めてカイの口から聞かされるなんて恥ずかし過ぎる。


 羞恥プレイとか無理。


 カイの口を咄嗟に両手で塞ぐと、ペロリと手のひらを舐められた。


「うひゃっ」


 舐められた感触にゾクリした感覚が身体を駆け巡る。


「さて、味見はこのくらいにしてそろそろ準備をしないとな」


 ゆっくりと私を床に下ろすと、寝台から毛布を剥ぎ取り私の身体にぐるぐると巻き付けた。


 抵抗する暇なく簀巻リシャの完成です。


「準備って……なんで簀巻にされてるの」


「早くしないと邪魔が入るからね。 私達はこれから新婚旅行だ」


「いや、だって執務は!?」


 新婚旅行はうっ、嬉しいけどここ数ヶ月の書類地獄と鬼のような怒涛の執務を思い出し戦慄を覚える。


「俺の決済が必要な書類は全て終わってる。 クリスティーナの尻に敷かれてルーベンスも政務をしてくれているしな。 それに新婚旅行は陛下と宰相が推進してくれたんだ」


「お父様が?」

 

 ローズウェル王国の高位貴族、ダスティア公爵家の家長でこの国の宰相として政務をとっている父ロベルト・ダスティア公爵。

  

 政務……他人には厳しい鬼宰相らしいけど、四人の娘と息子には甘い我が父が新婚旅行を推進なんて珍しい。


 そうしている間にもカイは私の体勢を立て直すように改めて抱き上げると寝室を出た。


 人払いがされているのか廊下には人の気配がない。


「あぁ、実はソルティス殿とソレイユ殿に婚約の話が出ている」 


 ソルティス・ダスティアは私の一番上の兄でダスティア公爵家の嫡子、ソレイユ・ダスティアは次兄にあたる。


「いつまでも結婚する素振りがない二人に、ダスティア公爵家の存続を危ぶんだロベルト宰相の苦肉の策だな」


 ソルティス兄様がなぜ結婚しないのかも気になるが、ソレイユ兄様のは間違いなく妹離れしないせいだろう。


 重度のシスコンを危ぶんだ父様はとうとう強硬手段に出ることにしたらしい。


「そう言う理由もあり、俺達はこれから新婚旅行だ。 まぁローズウェル王国建国の際に世話になったレイナス王国へ王太子としての顔見せも兼ねているな」

 

 レイナス王国はローズウェル王国からレイス王国とマーシャル皇国を越えた先にある国だ。


 まだグランテ王国と名乗っていた時代、当時のグランテ王国国王セレドニオ・グランテは民に圧政を強いていた。


 そんな国王に苦言をしつづけていた娘のミルドレッド王女を邪魔だと感じていた腐敗貴族は、ミルドレッド王女の暗殺を試み、一介の騎士でしかなかったドラク・ローズウェルによって命を救われている。


 ミルドレッド王女はレイス王国へ亡命し、隣国のマーシャル皇国のナターシャ皇妃に保護を要請した。


 ナターシャ皇妃の仲介でレイナス王国の国王シオル・レイナスとレイス王国のアールベルト・ウィル・レイス国王に同盟を持ち掛け四カ国不可侵条約を条件に協力をとりつけたミルドレッド王女は三国の助力を得てセレドニオ・グランテと腐敗した貴族を一掃。


 恋仲で、救国の立役者であったドラク・ローズウェルを国王として新たにローズウェル王国を建国した。


 ミルドレッド・グランテはドラク・ローズウェルと婚姻したのが史実として残っている。


 建国後も四カ国の同盟は良好だ。


 しかしいくら理由があってもこれから初夜って時に新婚旅行いく!?


 やっと結婚式の宴から開放されたのに、レイナス王国へ王太子としての顔見せ……厄介ごとの気配がする。


「それにレイナス王国は大陸で初めておとぎ話でしか存在しなかった竜が実在するのを確認した国、双太陽が昇るこの時期はちょうど竜祭りがあるし」


 竜祭りは私が生きているうちにぜひ一度行ってみたかった祭りの一つ。


「行く! 行く行く絶対に行く!」


 ダスティア公爵家の何代か前の奥方がレイナス王家の姫君のはずだ。


「良かった、じゃあ旅路も長いし小舅の邪魔も入らないことだし、初夜は道中でたっぷり愛してやろうな」


「……おっ、お手柔らかにお願いします」


 上機嫌のカイにゆっさゆっさと搬送されながら、引きつった顔に冷や汗を流す。


 たっぷり……どんだけやる気だ。





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