132『大混乱』
「何をしている! 逆賊を捕らえよ!」
「はい!」
捕縛した賊を制圧出来るだけの騎士を残して騎士たちがレブランたちを追いかけていく。
「カイ!」
ぐらりと崩れ落ちたカイザー様に痛む足を無視して駆け寄り抱き寄せた。
「カイ! カイ!」
抱き寄せた身体を確認すれば背中寄りの脇腹を刺されているらしく、暖かな血液が流れ出る。
呼吸が荒く顔色が悪い、一体どうしたら良いの!?
ハッ、止血!
自分の寝間着の袖を肩口から引きちぎり、簡単に折りたたんで傷口を強い力で押さえつけた。
お願い、止まって!
泣きながら患部を押さえつけ、騎士を呼ぼうと顔を上げた。
「リシャ!」
「アラン様! カイが、カイザー様が!」
私の様子に一直線にこちらへ駆けてくると、私とカイザー様の横にしゃがみこんだ。
「リシャ、何があった!?」
「カッ、カイが私を庇ってレブランに刺されたの短剣には毒も塗ってあるって! 血も止まらないの」
「クソ」
アラン様はカイザー様の衣服をめくりあげると、大きく舌打ちした。
「傷口をワザと抉ってやがる……」
苦虫を噛み潰した様に吐き捨てると、付き従っていた騎士たちに次々と指示を出していく。
「リ、シャ……」
カイザー様の声がして、視線を下げれば薄っすらと目を開けたカイザー様が弱々しく右手を伸ばしてくる。
「おいっ、無茶するな!」
アラン様の静止も聞かずに伸ばされた手のひらを支えて自分の頬に導く。
「そ、んな顔をするな、無事でよかっ……」
ふわりと笑ったカイザー様の手から力が抜けて、パタリと地面へおちた。
「カイ、カイ!」
「バカ、揺らすな! 誰かリシャーナを離してくれ」
アラン様の命令に従って騎士が数名私をむりやりカイザー様から引き離した。
「いや~!」
ドスっと言う衝撃を首の後に感じ、失いかけた意識が捉えたのは、沢山の騎士の手で運ばれていくカイザー様の姿だった。