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美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!《コミカライズ完結!》  作者: 紅葉ももな
『悪役令嬢ってもしかしてこれのこといってます!?』
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128『首を洗って待ってろ変態共!』

「……ねぇ、リシャ本当にこっちなの?」


 シャノン様となんとか監禁部屋から脱出して、物陰に隠れながら建物内を歩いてきた。


「多分?」


 曲がり角で顔を少しだけ通路に出して、監視がいないかを確認しながら進むのは骨が折れる。


「多分ってまた不安になるような事を……」


「シーッ! 文句はあとから聞きますから今はここから脱出して助けを呼ぶのが最善なんですから」


 暗い通路を蝋燭の照らし出す通路の奥から近づく足音にシャノン様に合図を送って近くの部屋の中に隠れた。


 部屋を脱出した直後はそれ程痛みを感じなかった右足の捻挫が、屋敷内を徘徊するうちにだんだんと強くなっている。


 気配を消して、物陰に隠れる際にしゃがみ込んだり、中腰で進行方向を確認しながら進むのは、痛めた右足の負担だったらしい。


「シャノン様、もし私が敵に見つかる様な事になったらひとりで逃げて下さい」


「リシャ、何をバカな事を言っているの? 私がリシャを置いて逃げるなんてできるわけ無いでしょう!」


「わー、シャノン様静かに!」


 私の言葉に激昂して、声高になったシャノン様の怒った口元を咄嗟に両手で塞ぐ。


「実は右足を痛めてまして、歩く分にはなんとかなりそうなんですけど、多分走れないと思うんです」


 口元を塞がれたまま、シャノン様が私の右足に視線を走らせた。


「なのでもし敵に見つかるような事態になった場合、私が囮になりますからそのすきにシャノン様は助けを呼びに行ってください」


 私に口元を塞がれたままシャノン様はゆっくりと右手を上げ、私の顔の前に持ってくると親指と中指をくっつけ、勢い良く中指を指弾した。


「痛ったぁ~」


 私の額に当たった指弾の威力に涙目になりながらシャノン様から手を離して患部を擦る。


 痛い、地味に痛い……まさかデコピンされる日が来るとは思わなかった。


「はぁ、馬鹿だ馬鹿だと思っていたけど、ここまでお人好しだったとは」


 ふぅっとわかりやすく右手を自分の額に置いて呆れ顔で首を振られると、小馬鹿にされているように感じる。


 無意識に不機嫌さが表情に出ていたのか、シャノン様に突き出た唇を摘まれた。 

 

「良い? そのお人好しの頭に叩き込んで、私は貴女を巻き込んでしまったいわば加害者よ、私が死んだり捕まって何かあっても自業自得なの」

 

「ムグッ!(でも!)」


 反論したくても摘まれている唇に塞がれて言葉にならない。


「だから私には貴女を家族の元に帰す責任があるわ。 必ず二人で脱出するのよ、良い?」


 顔面青痣で迫るシャノン様が迫力あり過ぎて素直に頷くと、やっと唇を放してもらえた。


 うぐぐっ、痛ひゃい。


「本当にもう、足がこんなに悪化するまで黙ってるなんて、歩ける?」


 私の右側を支えるようにシャノン様が右腕の下に身体を入れて支えると、ゆっくりと立ち上がった。


 右足に重心をかけずに立てるのでこれならなんとか歩けそうだ。


「うん、大丈夫」


「無理そうなら我慢しないで直ぐに言うのよ、良いわね?」

  

「……」


「い・い・わ・ね?」


「はい!」


 ダメ押しにきちんと返事をすればどうやら納得して頂けたようで、笑顔で頷いている。


 二人で頷き合い部屋を出ようとしたところで、途端に屋敷内が騒がしくなった。


「マズイわね、私達が逃げ出したのを気が付かれたかしら……」


 苦虫でも噛み潰した様なシャノン様の様子に血の気が下がる。


 見回りの人数が増えてしまえば、通路を抜けて脱出は難しいだろう。


 何か良い脱出方法は無いかと改めて薄暗い室内を見回せば、部屋の奥がボンヤリと明るい。


「シャノン様、取り敢えずこの扉の鍵を掛けてあの書棚を持ってきてこの扉を塞ぎましょう」


「そうね、この状況じゃ助けが来るまでこの部屋に居たほうがいいかも知れないわね」


 二人で協力して重い書棚を移動すると、私は明かりが入ってくる部屋の奥へ移動した。


 光はどうやら壁一部から筋状に漏れているようだった。


「シャノン様、ここ見てください」


 うろうろと室内を歩き回っていたシャノン様を呼び寄せて光を示せば、何か考えたあと先程動かした書棚の引き出しを引っ掻き回し始めた。


「たしか、この辺に……あった! はいリシャ!」


 シャノン様か両手に持っていた物の一つを私に渡してきた。


「ペーパーナイフ?」


「そう、ほらやるわよ! 一度やってみたかったのよね」


 そう言ってシャノン様は嬉々として手に持ったペーパーナイフを光の漏れる壁に突き立てた。


「壁や床に穴を開けて牢獄から脱出したり大怪盗を手玉に取って『裏切りは女のアクセサリーよ』って言ってみたかったの!」


 シャノン様に続いて私もペーパーナイフを壁へとつき立てる。


 腕にじーんとした痺れが走ったが、目の前の壁にレブランやイーサンの顔を思い浮かべてペーパーナイフを突き立てれば、穴掘りにも気合が入ると言うもんでしょう。


「折角ならその言葉、変態野郎どもに叩き付けてやりましょう!」


「えぇ!」


 首を洗って待ってろ変態共!

 

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