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美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!《コミカライズ完結!》  作者: 紅葉ももな
『悪役令嬢ってもしかしてこれのこといってます!?』
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124『くぉんの、変態男ぉ~!』

 ズキンズキンと頭が痛い。


「うっ……むぐっ!」


 鼻の奥に残る刺激臭を拒絶するかのように咳込んだ。


 ご丁寧に口に布を噛まされているので咳は布にはばまれた。


 ここはどこだろう、起き上がろうとして動かした手は、後ろ手に縛られていて使えなかった。  


 なんとか拘束している物から抜け出せないかと、手首を捻ってみたり力を入れてみたりしたものの、これを縛った人物は几帳面な性格をしているのか全く緩まない。

 

 どうやら両手首だけでなく両足首までご丁寧に縛ってくれているようで見動きが取れない。


 小さく身じろぎを繰り返して壁しか見えない現状を打破すべく寝返りを打つような要領でなんとか体制を入れ替える。


 どうやら地面ではなく、ベッドに転がされていたようで、拘束するために縛られている箇所以外に今のところ目立った外傷はなさそうだ。


 薄暗い石造りの室内は湿っぽくて家具と呼べるものは寝かされている粗末なベッドがひとつだけ。


 部屋の天井近くに開けられた明り取りようの小さな窓には太い格子がはめられ、そこから見える空はあかね色に染まっている。


 朝焼けかと思ったがどうやら違うらしく次第に室内が暗くなっていく。


 シャノン様が訪ねてきたのが夜中だった……そして外は夕焼け小焼け……随分と寝たもんだ。


 少しでも置かれている状況がわからないかと耳をすませば、遠くから喧騒が聞こえてきた。 


 足音からして人数は三人、かな? 


「リシャに会わせて!」


「まだ無事だと言っておいたでしょう? 私の言葉か信用ならないと?」


「貴方のどこが信用に値すると言うの!? 早く扉を開けなさい!」


 ガチャっと扉の鍵が開く音に目をつむり、寝たフリをしながら様子を見ることにした。


「ほら大丈夫でしょう?」


 ギィィと耳障りな音を立てながら開いた扉から室内に入ってくる。


「へぇ? この娘があの肥えていたダスティア公爵令嬢ねぇ」 


 聞き覚えがある声に薄っすらと目を開けて見れば、この国に居るはずがない人物がそこにいた。


「イーサン殿はダスティア公爵令嬢と面識が?」


 こちらも聞き覚えがある声だと思えば、ルーベンスとマリアンヌ様の愛を競い合っていたイザーク・クワトロだった。


「あぁ、ゾライヤの先帝が欲しがってな。 こんな豚姫を欲しがるなんて悪趣味なと思っていたが……ふむ……」


 自分の顎に添えていた手を伸ばしてきたため、目を閉じると私の顎をクイッと上げた。


「ほう? これは変われば変わるものだな。 あのときは興味なかったから逃しても気にならなかったが、この容姿なら妾の一人に加えたものを」


 スルリと唇を親指で撫でられて、ゾワゾワと悪寒が走る、上げかけた悲鳴を気合で噛み殺した。


「彼女はアラン様を誘き出すための大切な人質のはず、無用な手出しはお辞めください」


 シャノン様の硬い声に私の顎を放した、ホッと内心で胸を撫で下ろす。


「俺に指図するな……」


 低い声に威圧を込めて威嚇するイーサンから目をそらさずにシャノン様が睨みつける。


「お忘れですか、貴方はもうゾライヤの皇子ではありません、彼女に手を出すことは許しません!」


 睨み合う両者にイザークは止めるべきかどうすべきかと視線を彷徨わせているようだ。


「そこまでですよお二人共、さて……」


 パンパンと両手を打ち付けて鳴らしながら二人の間に割り込んだのは、いつの間にか扉の前にやってきたレブラン・グラスティアだった。


 シャノン様とイーサン殿の間を通り過ぎると、まっすぐに私のそばまでやってきた気配がする。


 突然頭部に走った痛みに耐え兼ねて目を開けると、憎たらしいほどの笑顔を浮かべるレブランを、睨みつけた。


「とっくに目覚めていると言うのに、寝たフリとはいい度胸ですね」


 優しい口調とは裏腹に私の癖がある髪の毛に指を絡ませて容赦なく引き上げる。


「ふぐ!」


 何本か髪の毛が抜けるのがわかり、痛みに顔を顰めて上げた声は口を塞ぐ布に吸い込まれて消えてしまった。


「レブラン! 辞めなさい!」


 その様子に顔を蒼くして助けに入ろうとしたシャノン様をレブランは容赦なく突き飛ばした。


 バランスを崩したシャノン様は剥き出しの石壁に背中を打ち付けて唸ったあと、フラ付きながらもまた私とレブランの間に割り込んだ。


「シャノン、一体誰に口を聞いている?」


「リシャには手を出さない約束だったはずよ!」


 必死になって私の髪の毛に絡まったままのレブランの長い指を外そうとしてくれるが、強く握り込まれた指はその間も私の髪を引っ張り続ける。

 

 レブランが私の髪を放すと、すぐそばにいたシャノン様の頬へと平手をうちつけた。


 小さな悲鳴を発して細い体が、ベッドに倒れ込む姿がまるでスローモーションのように見えた。


 まずい、このままだとベッドの木製ヘッドレストにぶつかる!


 殴られたシャノン様を庇うようにして思うように動かない体をシャノン様の倒れ込む先に無理やり滑り込ませた。


「ふぐっ!?」 

  

 どうやら殴られた衝撃で意識を失っているようだけれど、直撃は避けられたらしい、シャノン様の頬は赤く腫れ口の端が切れたのか血が出ている。


 私は目の前の最低男を睨みあげた。


「ふふふっその目ですよ、何者にも屈せず眩しいほどに純粋な瞳……思いっきり汚してやりたくなる」


 くぉんの、変態男ぉ~!


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